移住したいと考えたとき、田舎や地方での生活をイメージする方は多いはず。都会の喧噪とはほど遠い、山や海などの自然に触れながらの穏やかな暮らしは、多くの方に共通する理想だろう。
しかし、田舎暮らし(地方移住)では、入念な準備をしておかなければ後悔してしまうこともある。
この記事では、田舎移住を成功させるための計画の立て方、失敗する場合によくある理由、支援制度の充実したおすすめの市区町村(自治体)まで見ていこう。
田舎暮らし(地方移住)の成功には入念な計画立てが必須!
移住と聞いて田舎を想像する方は多いだろう。
しかし、田舎とは“田園風景の広がる過疎地”か“主要都市に比べて人の少ない地域”か、イメージがあいまいな方もまた多いのではないだろうか?
田舎への移住は、ふんわりとした憧れだけを抱えて挑戦し失敗してしまうことがある。成功させるためには、正しい知識の獲得と地に足の着いた入念な計画立てが必須だ。
この記事では田舎移住でよくある失敗の理由と、その理由を踏まえた成功する計画の立て方を解説する。
記事終盤の田舎移住におすすめの自治体と合わせて、夢の実現に役立ててほしい。
田舎暮らし(地方移住)で失敗や後悔してしまう理由は?
最初に知っておくべきは、田舎移住で失敗や後悔をしてしまう理由。あらかじめ失敗の原因を知ることで、対策も容易となる。
田舎移住失敗のよくある理由は、大きく以下の6つだ。
- 田舎暮らしへの憧れだけで移住をしてしまった
- 移住後の仕事を見つけていなかった
- 出費や費用面の見通しが甘かった
- 田舎の不便さや自然の厳しさを理解していなかった
- その土地の風土や慣習に馴染めなかった
- 家族の理解を十分に得ていなかった
それぞれ順番に見ていこう。
田舎暮らしへの憧れだけで移住をしてしまった
もっともありがちな失敗の理由は、田舎移住の目的がはっきりしていなかったこと。
「満員電車や過度の人混みなど、都会の喧噪から離れて田舎でのんびり暮らしたい」これは現代に生きる、多くの方に共通する願いだろう。
しかし、田舎に行けば生活が好転するという願望だけで移住をしては、成功は難しい。田舎で楽しく暮らすためには、都会とは異なるさまざまな努力や工夫が要る。
移住後の仕事を見つけていなかった
現実的な問題として立ち塞がるのが、移住後の仕事についてだ。「住めばなんとかなるだろう」と現地での仕事を探さず田舎へ移住し、後悔してしまう方は多い。
人の少ない田舎に行くほど求人も少なくなる。希望する職種の募集がなかったり、賃金が都会時代よりも低かったりと、田舎では満足できる求人が見つかりにくいのが実情だ。
近ごろはテレワークやリモートワークも一般的になりつつあるが、それでも都会を離れて田舎に移住することで、キャリア形成が阻害されるリスクは残る。
出費や費用面の見通しが甘かった
仕事とあわせて検討しておきたいのが、田舎移住後の出費&費用面。
田舎暮らしはお金がかからないイメージが強く、それは一面で事実でもあるが、一方で都会時代にはかからなかった費用も求められる。
例えば、害虫を駆除するための殺虫剤や車移動のためのガソリン。物件によっては、天井の雨漏りの修繕や水回りの整備も必要だろう。
また、引越しの初期費用(敷金・礼金・仲介手数料・火災保険代など)が想定以上に膨らみ、その後の生活費の支払いを圧迫してしまうケースにも気を付けたい。
田舎の不便さや自然の厳しさを理解していなかった
電車が日に数本しかないような過疎地ともいうべき田舎に住む場合、不便さや自然の厳しさに負けず、自分が暮らしていけるのかしっかりと考えておくべきだ。
買い出しができるのは車で30分以上もかかるスーパーのみで、台風や降雪の時期には家から出ることもままならない。国内にはそんな秘境もまだまだ存在する。
実際のところ、田舎の不便さや自然の厳しさは自分で体験しないと理解が難しい。お試し移住や体験ツアーで現地を訪れることが解決策となるだろう。
その土地の風土や慣習に馴染めなかった
田舎への移住では、その土地独特の風土や慣習に馴染めず都会へ戻ってくる方も多い。
田舎では地域の慣習が根強く残っている。地域住民の冠婚葬祭への全員出席が必須であったり、お祭りごとは準備から全員参加だったり、都会では考えられない文化もある。az
ただし、密接な人間関係はわずらわしくも感じるが、田舎移住の大切な醍醐味でもある。
想定外の出来事にも「こんな慣習があるのか!」と笑って受け止めることが、田舎暮らしを楽しむ秘訣だ。
家族の理解を十分に得ていなかった
見落としがちなポイントとして、家族の理解についてもあらためて確認しておきたい。
ファミリーで移住をする場合、家族からの理解をしっかり得ていなければ挑戦後に揉めてしまうことがある。特に多感な時期の子どもは、大人よりも田舎への適応も難しい。
最近では都会と田舎両方に拠点を持ち、長期休暇などに行き来する「二拠点生活」を実践する家庭も増えている。このような第3の選択肢もおすすめだ。
田舎暮らし(地方移住)を成功させるための計画の立て方!
では、ここまでの失敗でありがちな理由をもとに、田舎移住を成功させるための計画を立てていこう。大切なのは、以下の流れを意識することだ。
- 田舎移住の理由を明確化
- 移住形式の検討
- 大まかな移住先エリア決め
- 移住後の仕事の確保
- お試し移住や体験ツアーの参加
- 自治体担当者との物件探し
「なぜ田舎で暮らしたいのか?」あらためて明確にしよう
最初に行うべきは「なぜ田舎で暮らすのか?」と目的を明確化することだ。
- 山が近くにある自然豊かな環境に住み、週末にはハイキングを楽しみたい
- 自然豊かな田舎の環境で、子どもたちを自由に遊ばせてあげたい
- 老後に海の見える家で穏やかな毎日を送りたい
上記のように、具体的に田舎で何がしたいのか言葉にしよう。
目的がはっきりとすれば、将来的に夢の暮らしを実現できていると満足しやすい。また、この後の移住先選びもスムーズになるだろう。
完全な移住?二拠点生活?移住形式を検討する
移住の目的を再確認した後は、移住形式を決めよう。
上述の通り、近年では全員で田舎へ引っ越すいわゆる「移住」以外にも、二拠点生活やデュアルライフと呼ばれる複数の生活拠点を持つスタイルも広まっている。
仕事は都会で続けて収入を確保し、週末や長期休暇は田舎を堪能する、なんて形も◎。完全な過疎地に住む前には、まずは近くの町に移住して生活に慣れる二段階移住もおすすめだ。
希望の移住先エリアを大まかに決めよう
目的や移住形式が決まれば、希望の移住先エリアも絞りやすくなる。特に二拠点生活を考える場合は、現在の拠点からアクセスが良い地域を選びたい。
日本地図を片手に「海が見えるこの辺りの地域を…」といったように○を付けてみよう。大まかにでもエリアを絞っていくことで、田舎移住がグッと現実的なものとなる。
テレワーク?新規就農?移住後の仕事を確保しよう
大まかなエリア決めの次は、仕事の検討だ。テレワークを継続するのか、田畑を活かして新規就農するのか、移住後の仕事を確保しよう。
もっともおすすめなのは、これまでとほぼ変わらない収入を得られるテレワークだ。収入面が安定すれば、田舎暮らしに慣れることへ注力できる。
現在の仕事の継続が難しい場合は、気になるエリアの自治体担当者やハローワークに相談してみよう。魅力的な求人や利用できる移住支援制度を教えてくれるだろう。
お試し移住やツアーなどイベントに参加する
田舎移住で後悔しないためには、仕事の検討と並行して現地を訪れてみることも大切だ。
清々しい空気に感動したり、大きな虫に驚いたり、田舎にはその土地を訪れてはじめてわかる新鮮な驚きがある。自分の田舎のイメージが土地の現実とかけ離れていないかも、再確認しておきたい。
現地訪問では、お試し移住施設の活用や移住体験ツアーの参加がおすすめだ。このような制度を利用すると、先行移住者の方と直接お話をさせてもらえることもある。
自治体担当者と連絡を取って空き家探しを進めよう!
現地訪問の後、ますます移住したい気持ちが固まったなら、ここからは自治体担当者とともに物件探しを進めよう。
集落の規模にもよるが、田舎移住では都会のように突然引越しをすると、誰が来たのかと驚かれてしまうことがある。事前に自治体へ相談すると、町内会長など頼りになる方との顔つなぎもお願いできる。
また、自治体によってはお得な支援金や補助金制度も教えてもらえることも。田舎は数十万円単位の高額な支援制度も珍しくないため、ぜひとも活用したい。
田舎暮らし(地方移住)で人気のおすすめ市区町村10選!
ここからは、田舎移住で人気のおすすめ市区町村を見ていこう。いずれも移住者を積極的に受け入れている住みやすい地域だ。
町の魅力はもちろん、代表的な移住支援制度も紹介するのでぜひ参考にしてみてほしい。
北海道深川市(ふかがわし)
出典:北海道で暮らすふかがわで暮らす
まず紹介するのは、国内有数の人気移住先である北海道。深川市(ふかがわし)はここ10年間で375名もの移住者を迎えた市。
北海道のほぼ中央に位置しており、自然環境を楽しめつつも市街地へのアクセスが良いことから、ほど良い田舎・地方都市として愛されている。
市内は農業が盛んで、全国でも屈指の米所としても有名。視界一面に稲穂の揺れる、ドラマのワンシーンのような情景も毎日堪能できる。
もちろん、冬には北海道ならではの雪景色も鑑賞できるだろう。
【主要な移住支援制度】
- 深川市UIJターン新規就業支援事業
- オンライン移住相談&仕事紹介
- 深川市移住促進引っ越し費用助成事業
- 移住体験事業(日帰り・短期滞在・長期滞在)
参考:北海道への移住・定住を応援する情報サイト 北海道で暮らそう!|深川市
京都府京丹後市(きょうたんごし)
出典:京丹後市移住支援サイト
京都府のもっとも日本海側、岡山県と接しているのが京丹後市(きょうたんごし)。15ヶ所もの海水浴場があり、40ヶ所もの温泉もある、水とともに生きている田舎だ。
沖合から30kmの位置で「間人(たいざ)蟹」が採れるなど、新鮮な魚介類が豊富。あじ・さわら・ぶりといった名高い魚の漁獲量も多く、地元のスーパーで手に入る食材も絶品だ。
京丹後市は2012年に世界最高齢(116歳)としてギネスに登録された、故・木村次郎右衛門氏の出身地でもある。
美味しい食材に囲まれた暮らしを堪能すれば、自分も長生きにつながるかもしれない。
【主要な移住支援制度】
- 空家移住者向け補助金
- 結婚新生活支援補助金
- 多子世帯・三世代同居・近居支援補助金
- 若者U・Iターン住宅取得等応援補助金
佐賀県武雄市(たけおし)
出典:たけおグッドライフ
佐賀県の西側、温泉とグルメの町として知られるのが武雄市(たけおし)。2022年9月23日に西九州新幹線(武雄温泉~長崎)が開業したばかりの、今注目されている田舎だ。
武雄温泉は1300年もの歴史を誇る、日本伝統の湯。栄養豊富で保湿性が高いことから美人の湯としても有名で、かつては神功皇后も入浴していたという。
ご当地グルメは具だくさんのちゃんぽんや佐賀牛すき焼きが◎。移住後には気持ちの良い温泉に贅沢グルメにと、武雄市の魅力を堪能する毎日を送れるだろう。
【主要な移住支援制度】
- 定住特区補助金
- 移住支援金
- 同居・近居移住支援給付金
- 移住体験滞在費補助金
大分県豊後高田市(ぶんごたかだし)
出典:豊後高田市IJU支援サイト
2022年まで3年連続で「住みたい田舎ランキング1位」に輝いているのが、大分県豊後高田市(ぶんごたかだし)。高校生までの子どもの医療費が無料になるなど、驚異的なほどに子育て支援が充実している。
国東半島の付け根の辺りに位置する豊後高田市は、瀬戸内式気候に属する、温暖で過ごしやすい地域。市街地から10分も車で走れば田畑や山が無数にある、いわゆる「田舎」だ。
支援制度による金銭的なゆとりと開放感のある自然環境が、子育て世代を歓迎してくれる。ゆっくりと子どもと向き合う暮らしにも手が届くだろう。
【主要な移住支援制度】
- 高校生までの医療費無料
- 中学生までの給食費無料
- 妊婦の医療費も無料
- 市内の公立保育園&幼稚園無料
- 誕生祝い金最大200万円
長野県茅野市(ちのし)
長野県茅野市(ちのし)は、「若者に選ばれるまち」を目指して移住を推進中の田舎だ。茅野市移住推進庁内連絡会の設立など、県外に茅野の魅力を発信して移住相談をオンラインで受け付ける取り組みを実施している。
茅野市は周囲を南アルプスや八ヶ岳連峰に囲まれた高原都市。年間を通じて爽やかな風が吹き、緑豊かな環境ならではの透き通った空気を胸いっぱいに堪能できる。
休日には登山や温泉巡りに挑戦すれば、日々のストレスも吹き飛んでしまうだろう。
【主要な移住支援制度】
- 茅野市移住推進庁内連絡会
- 移住支援金(茅野市就業・創業移住支援事業補助金)
- 茅野市移住体験住宅
- 茅野市農作物別品目アドバイザー制度(就農支援)
岡山県瀬戸内市(せとうちし)
出典:とくらす瀬戸内
岡山県の南東、備前の瀬戸内海側に位置するのが瀬戸内市(せとうちし)。日本の夕陽百選にも数えられる牛窓町フェリー乗り場など、息を呑むほど美しい景観を鑑賞できる田舎だ。
果物(みかん・ぶどう)や野菜(白菜・キャベツ)の生産が活発で、市内では多くの田畑やビニールハウスが見られる。
収穫された野菜はそのまま地元の市場にも届けられるため、毎日フレッシュな味わいを満喫できるだろう。
備前長船刀剣博物館など、歴史好きにはたまらないスポットもある。城跡や史跡を眺めつつ散歩するだけでも飽きないはずだ。
【主要な移住支援制度】
- 瀬戸内市お試し住宅
- 瀬戸内市創業支援ネットワーク
- 岡山県担い手育成総合支援協議会(就農支援)
- 団地分譲補助金
参考:瀬戸内市|市町村の情報|岡山県移住ポータルサイト おかやま晴れの国ぐらし|移住・定住支援(岡山県)
愛媛県西条市(さいじょうし)
出典:LOVE SAIJO
愛媛県西条市(さいじょうし)は、人口10万人以上の大きな市の部門で、2021年版住みたい田舎ベストランキング1位に輝いた都市。
海と山がすぐそばにありつつも、栄えた工業地帯も持つほど良い田舎として知られている。
西条市は水の都とも呼ばれるほどに湧き水が豊富で、その清らかな水質は名水百選にも「うちぬき」の名で選出されたほどだ。
地元の生活用水としても活躍しており、移住後には水道水の美味しさに感動するだろう。
【主要な移住支援制度】
- 西条市空き家バンク
- 西条市移住者住宅改修支援事業
- お試し移住用住宅『リブイン西条ハウス』
- 西条市無料アテンドサービス(移住希望者に市内各所を案内してくれるサービス)
参考:愛媛県西条市の~西条市が「住みたい田舎」ベストランキングで全国1位を獲得しました~ | ふるさと納税 [ふるさとチョイス]
茨城県常陸太田市(ひたちおおたし)
出典:じょうずるライフ
「大自然の中でのびのびと子どもたちを遊ばせてあげたい」そんな願いの叶う田舎が、茨城県常陸太田市(ひたちおおたし)だ。
茨城県の北東部にあるこの町は、海にも山にも出かけられる好立地。虫取りやバーベキュー、釣りといった自然の娯楽が充実していて、遊ぶ場所には困らない。
また、子育て世代に対するパワフルな支援制度も魅力だ。
高校生までの医療費が助成されたり、24時間健康に関する無料相談を受け付けてくれたりと、安心して子育てを進められる環境が揃っている。
【主要な移住支援制度】
- 新婚家庭への家賃助成
- 新婚家庭への家賃助成
- 住宅取得促進助成金
- 乳児おむつ購入費の助成
参考:子育て上手常陸太田
島根県松江市(まつえし)
出典:松江市|くらしまねっと
島根県松江市(まつえし)は、経済産業省の調査で「暮らしやすさ全国1位(全1,741市町村)」を獲得した過ごしやすい田舎。
この調査はバス停やショッピングセンターまでの距離・医療施設の充実度・市内の求人倍率・地域活動の活発度など、暮らしやすさを総合的に数値化したもの。
松江市は全国でも屈指の、何もかもがほど良い過ごしやすい田舎として認められた形だ。
遮るもののない星空や四季折々の紅葉に雪景色など、一度は目にしたい情緒のある光景も多数。心の躍る毎日を過ごせるだろう。
【主要な移住支援制度】
- 就業支援(特にUIターン)
- 松江市空き家バンク
- 出会いの場づくり事業(婚活支援)
- オンライン移住相談
新潟県三条市(さんじょうし)
出典:【移住定住支援サイト】三条で暮らす。
最後に紹介するのは、鉄の伝統工芸で有名なものづくりの町・新潟県三条市(さんじょうし)。新幹線の燕三条駅があるためアクセスが良く、都会とのデュアルライフにも向いた田舎だ。
三条市は秋になると八木ヶ鼻や袴腰山周辺が一斉に紅葉し、冬には五十嵐川へ例年400羽ほどの白鳥が訪れる。渓流釣りやハイキングなどのレジャーも充実しており、季節感のある1年を過ごせるだろう。
また、三条市は近隣の自治体と比べて、移住者向けの支援が充実している。特に家賃補助や引越し代補助を活用することで、移住の金銭的なハードルを大きく下げられる。
【主要な移住支援制度】
- 三条移住コンシェルジュ
- 移住・定住支援補助金(空き家改修、賃貸手数料補助、家賃補助、引越し代補助)
- コミュニティ支援交付金(地域団体への支援金)
- 地域おこし協力隊
- 空き家・空き地バンク
十分な準備をしたうえで憧れの田舎暮らし(地方移住)をはじめよう!
この記事では田舎移住について、失敗してしまう場合のよくある理由や、成功する計画の立て方、人気のおすすめ移住先を紹介した。
田舎移住は多くの方にとって憧れだが、だからこそ良い面ばかりを見て挑戦し、失敗してしまうケースもある。
現実を見据えた計画を入念に立て、しっかりと準備したうえで夢の田舎暮らしを手に入れてほしい。