北関東3県のうち、最も東側に位置するのが茨城県だ。紀元前6世紀に建立されたとされている鹿島神宮や、日本三大庭園のひとつである水戸偕楽園などの観光地を有しており、関東地方の中でも比較的自然を感じやすい地域である。
南部からは都心へのアクセスも良いため、都心部に勤めている人でも移住しやすいという特徴がある。
この記事では、茨城県へ移住するメリット・デメリットをまとめ、移住におすすめの自治体を5つ紹介する。
移住する前に知っておきたい茨城県の基本情報
まずは、茨城県の基本情報についてチェックしておこう。
地理
茨城県は、栃木県・群馬県とともに、北関東と呼ばれるエリアに属している。北関東3県のなかでは東側にあり、太平洋に面している。
北は福島県、西は栃木県・埼玉県、南は千葉県とそれぞれ接している。県南部のつくば・土浦を中心とするエリアは関東と、県北部は南東北と、それぞれ関係性が深い。
県のなかでも地域による特色が分かれているのが特徴的だ。
人口
茨城県の人口は、約283万人である。
県内最大都市は、県庁所在地である水戸市(県央・26.9万人)、第2位はつくば市(県南・25.3万人)となっているが、都市圏としてはつくば都市圏(県南・85.3万人)となっている。
参考:茨城を知る|いばらき移住定住ポータルサイト Re:BARAKI
気候
茨城県の気候は、大まかには太平洋側気候に分類され、夏は暑く湿度も高くなりやすいが、冬は晴れやすいという特徴がある。
県の中で区分すると、主に太平洋沿岸部(県東側)と内陸部(それ以外)に大別される。
太平洋沿岸部は海に近いため、湿度がより高くなりやすく、気温変化が小さい。内陸部は乾燥しがちで、気温の変化も大きくなりやすい傾向にある。
産業
茨城県の農業では、都心部に近いというメリットを生かした園芸作物の生産に強みがある。
ニンジン・レタスなどの野菜類、イチゴ・メロンなどのフルーツ、コシヒカリをはじめとした稲作などが盛んだ。
水産業では、アンコウ・カツオ・ヒラメ・ワカサギなどが獲れる。
また、鹿島臨海工業地帯における化学工業、筑波研究学園都市(つくば市)の研究・教育関連産業にも強みがある。
茨城移住のメリット
茨城県に移住するメリットには、次のようなものが挙げられる。
仕事環境が良好
茨城県は、県内での就業先が豊富であるのはもちろんのこと、東京圏への通勤もしやすいという地理条件から、テレワークの環境としても優れている。
月に数度しか会社に出勤せず、残りは自宅で仕事ができるような勤務形態であれば、普段は茨城県の自宅で業務をこなし、出勤時のみ東京へ通うという方法も取り得るだろう。
冬は暖かく過ごしやすい
全県を通して太平洋側気候の影響を強く受けている茨城県。特に太平洋沿いであれば、冬は少雨・少雪、温かい気候で生活が可能だ。
マリンアクティビティが充実
太平洋沿岸には、多くの海水浴場が整備されている。
海水浴はもちろんのこと、サーフィンなどのマリンアクティビティを楽しみたい人には、うってつけのエリアだと言える。
茨城移住のデメリット
逆に、以下のようなデメリットも考えられる。
自然感は少な目
ほかの地方都市移住に比べると、東京圏に近いということもあり、都会感は強くなってしまうだろう。
自然環境豊かな地域への移住を希望するなら、自然公園・里山などの整備が進んでいる市町村を選ぶように心がけたい。
高温多湿になるエリアが多い
冬は少雨・少雪、温暖であるのに対し、夏は高温多湿になる傾向にある。
特に内陸部の夏では、連日最高気温が35度前後になることも珍しくない。
車はあったほうが良い
つくばエクスプレスやJRなど、都心部へのアクセスが容易な鉄道・バス路線は豊富だが、日用品の買い出しなどには自家用車が必要な場所も少なくない。
駅近くの物件に住む場合や、生活圏の中にスーパーマーケットなどがあってほとんど移動しないようなケースは例外だが、そうでない限り車があったほうが生活しやすいだろう。
茨城県が実施している移住支援情報(サポート・補助金)
茨城県では、次のような移住支援事業が行われている。移住前にチェックして、理想の移住先を決める一助にしてほしい。
わくわく茨城生活実現事業
わくわく茨城生活実現事業は、茨城県への移住に対する支援金制度だ。
東京23区に在住、もしくは東京圏在住で23区に通勤している人のうち、茨城県への移住を行い、かつ茨城県内での就業・起業を行おうとする人が対象となる。
金額は、単身者が60万円、世帯の場合は100万円(18歳未満の世帯員が一緒に移住する場合は、一人あたり30万円を加算)である。
補助金予算の都合上、すべての市町村で受け取れるとは限らない。また、それ以外の受給要件もあるため、事前に各市町村への問い合わせが必須だ。
賃貸住宅家賃補助
賃貸住宅家賃補助は、民間賃貸住宅の家賃を一部市町村が負担してくれる制度である。
例えば境町では、新婚世帯・子育て世帯を対象に、月額15,000円を上限に、最大2年間家賃補助が受けられる。
こちらも予算の都合上、募集が打ち切られる場合があるため、申し込み可能かは早めに各市町村へ確認しておきたい。
住宅購入支援補助金
民間賃貸の家賃補助支援だけではなく、空き家活用のための補助金も存在する。例えば日立市では、空き家を購入したのち、リフォームするための補助金がある。
補助対象経費の3分の1、最大30万円の補助が受けられる。
通勤通学支援
都心部に近い茨城県ならではの支援策として、通勤・通学支援事業がある。これは通勤・通学の定期券代を一部行政が負担してくれるというものである。
テレワークを基本とした移住に際してネックになりやすい通勤のための交通費だが、この出費を抑えられるのは魅力的だ。
創業支援
茨城県に移住して事業を起こしたいと考えている人には、創業支援金の活用も見逃せないポイントである。
例えば稲敷市では、創業などにかかる経費の50%(上限50万円)が補助金として受け取れるほか、UIJターン補助金として20万円などが受け取れる。
申請にかかる手続きは他の補助金・支援金よりも煩雑になるが、起業を考えているのであれば、ぜひとも受け取りたい支援策である。
茨城県の移住先|おすすめ自治体(市町村)5選
それでは、実際におすすめしたい、茨城県の移住先を5つ紹介する。
龍ケ崎市(りゅうがさきし)
出典:移住・定住「龍ケ崎で暮らす」|龍ケ崎市
龍ケ崎市は、茨城県南部にある、利根川と霞ケ浦に挟まれた市である。JR龍ケ崎市駅から上野駅までは、常磐線(東京上野ライン)で約45分の距離である。
また、市役所近くまで関東鉄道竜ヶ崎線が延びており、市内での往来も比較的容易となっている。
龍ケ崎市では、前出の移住支援金、住宅購入補助金(空家バンク活用促進補助金)などの申請が可能だ。
龍ケ崎市の魅力を体験するツアーなども開催されているので、移住を希望する人は積極的に参加してみてほしい。
常総市(じょうそうし)
常総市は県南西部に位置しており、つくば都市圏の一部である。
鉄道、バス、自家用車などの手段で他の市町村への往来が容易である点も、移住先としての魅力のひとつだ。
常総市では、移住支援金、住宅購入補助金(空家バンク活用促進補助金)が用意されているほか、子育て支援が手厚く、また就農支援等の施策も存在する。
都市部近郊での営農に興味がある人に特におすすめだ。
潮来市(いたこし)
出典:潮来暮らし
潮来市は県南東部、霞ケ浦の下流に位置する市である。
上記2つの市に比べると都心部へのアクセスは悪いが、高速バスが東京駅と水郷潮来バスターミナル間を走っており、片道1時間30分程度と、十分通勤・通学が可能な範囲内である。
定期券も存在し、市から最大10,000万円の補助金を受けられる対象(潮来市通勤・通学高速バス定期券等購入費助成事業)ともなっている。
潮来市では、移住支援金のほか、子育て支援系の施策が充実している。妊娠時、1歳時、小学校入学時など、物入りになりやすいタイミングでの支援が嬉しい。
ひたちなか市
出典:Love&Peace Hitachinaka Life
ひたちなか市は県中央部の太平洋に面した市である。
水戸都市圏の一部として水戸市のベッドタウンという顔を持つほか、日立製作所の企業城下町の一面も併せ持つ。
ひたちなか市では、移住支援金、子育て支援金、創業支援補助金など、さまざまな支援が得られるのが大きな魅力である。
日立市(ひたちし)
出典:ひたちぐらし
日立市は、県北部の太平洋に面した市である。銅を中心とした日立鉱山を軸に発展してきた鉱工業都市であり、現在でも県内3位の人口規模の市だ。
日立市では、移住支援金のほか、育児に関する各種支援が受けられる。また、テレワーク移住推進支援金など、都心部に勤務先がある人の移住受け入れにも積極的だ。
JRの特急ひたち号を利用すれば、都心部まで1時間半程度で通勤できるため、月数回のみ出社するようなライフスタイルであれば、魅力的なテレワーク環境とも言えるだろう。
茨城は東京圏に通勤可能!移住に心配のある人でも安心
茨城県移住の魅力は、茨城県そのものの魅力はさることながら、東京都心部までの通勤が容易という点にもある。
現在の勤め先が都心部の人であっても、仕事はそのままに、生活基盤のみを茨城に移すことができるのだ。
「移住はしたいけど、仕事も続けたい」と考えている人におすすめの移住先・茨城県で、新生活を送ってみてはどうだろうか。