ライフスタイルの変化によって増えたテレワーク(在宅勤務)。今まで移住に興味はあっても、仕事のために踏み出せなかった方も多いのではないだろうか。テレワークなら仕事を続けながらの地方移住が可能になる。今回は、テレワーク移住のメリットとデメリット、そしてお得な移住支援制度やおすすめの移住先を紹介する。
テレワークなら地方移住のハードルが下がる
新しい生活様式とともに広がったテレワークによって、暮らしを見つめ直している方も多いはず。
在宅時間が増えたことで、自分自身や家族との生活をより良く、より自分らしくしたいと考える人が増えている。そのひとつの手段が地方移住だ。
今までは仕事のために住む場所を決めるというパターンが多かったが、テレワークなら仕事を変えずに生活拠点を変えることができる。
地元へのUターンや憧れの地へのIターン、生まれ育った地元の近くに住むJターン以外にも、首都圏内へのプチ移住もテレワークならグッとハードルが下がる。
はじめに地方移住のメリットとデメリットを確認しておこう。
地方移住のメリット
「憧れの田舎暮らしをしてみたい」また「自然のなかで子育てをしたい」と考えている方は、一度は地方移住を考えたことがあるかもしれない。
地方移住をすることで得られるメリットをまとめてみた。
自然を身近に感じられる
地方移住の大きなメリットは自然を身近に感じながら生活できること。毎日都会の喧騒のなかで過ごすのではなく、ゆったりとした時間が流れる自然のなかで暮らしてみたいという方におすすめ。
自然豊かな場所で暮らすと、マリンスポーツやスキー、キャンプや川遊びなどが日帰りで気軽に楽しめるようになる。自然やアクティビティが好きな家族にはぴったりだ。
一口に地方と言っても、周りに何もない「ザ・田舎」から、利便性の高い「トカイナカ」まで、場所によって環境はさまざま。自分の目的や好みに合った移住先を選ぼう。
生活コストを抑えられる
地方移住は生活コストを抑えられることもメリットのひとつ。
一戸建ての新築や中古物件を購入する場合、都市部に比べ価格は格段にリーズナブル。土地の価格が安いため、同じ予算でもより広い敷地を確保できるだろう。
アパートなどの賃貸ももちろん低コストで借りられる。
また、シェアハウスやサブスクリプション型居住サービス、アドレスホッピングなど、住まいを持たずに移住ができる選択肢も増えている。
多くの地域では食べ物や日用品などの物価も都市部より安いため、生活費全体のコストを抑えられる。地元で採れた新鮮な野菜や農産物が手に入るのも魅力的なポイント。
家族との時間が増える
地方移住をすることで、家族との時間が増えることも◎。テレワークなら通勤に時間が取られないため、家で過ごす時間が多くなるだろう。
都市部では飲食店や商業施設が充実しているが、それらの少ない地方では、自然と家庭で過ごす時間が長くなる。
仕事と家族との時間を両立できるのも地方移住のメリットだ。
移住支援制度が受けられる
国や各自治体では、地方移住促進のために移住者へ向けた支援制度を設けている。
東京23区に住む人が地方創生移住支援事業を実施している自治体に移住すると、最大100万円の支援金を受け取ることができる。
また各自治体では、新築購入やリフォームする際に支援金が受けられたり、開業するための補助金を受けられたりする独自の移住支援を行っている場合もある。
地方移住のデメリット
地方移住はメリットばかりではない。あらかじめデメリットになりそうなことを把握しておくことで、住み始めてからも不満なく過ごすことができるだろう。
職場とのコミュニケーション不足
テレワーク全般にも言えるデメリットだが、在宅勤務は職場とのコミュニケーション不足が起こりやすい。
もちろんメールやチャット、オンライン通話などでコミュニケーションは取れるが、実際に目の前に上司や同僚がいる環境と比べるとどうしても意思疎通がしにくいもの。
今まで、目があったときに雑談したり、話さなくても同僚がどんな仕事に取り組んでいるのか把握できたりしていたものができなくなってしまう。
移住先では、孤独や不安を感じる前に出勤したり上司に相談したりして、何か対策を取ることが必要だ。
都市ほどの利便性が期待できない
地方都市ではスーパーやショッピングモールがたくさんある場所も少なくない。とは言え、都会ほどの利便性は期待できない。
地方では自動車がないと買い物に行けないといったことも珍しくない。飲食店の数や店舗での品揃えも都会ほどは期待できないだろう。
住んでから「こんなはずじゃなかった」ということにならないためにも、事前にしっかりと調査しておこう。
いざ出勤するとなった場合は不便
テレワーク主体でも出勤が必要になる場合もあるだろう。いざ出勤することになれば、都市部からの通勤と比べると不便になるのは当然のこと。
仕事を変えずに移住する場合は、勤務先までどんな交通機関でどれくらいの時間がかかるのかを踏まえた移住先選びが必要である。
公私の切り替えが必要
仕事と生活を両立させるための地方移住だが、オンオフの切り替えが難しいことも考えられる。
自宅で仕事をする場合はどうしても気が散ってしまうもの。自分なりにスケジュール管理をし、コワーキングスペースなどを活用するなど、うまく切り替える工夫をすることが必要になってくる。
テレワークで実現できる移住スタイル
今までは「移住」というとそこに「定住」することが一般的でした。しかし、テレワークの広がりや現在の生活様式にともなって移住スタイルも多様化している。
「定住するつもりはない」「都市部での生活拠点も維持したい」という方でも、移住という選択ができるようになっている。
代表的な4つのスタイルを紹介するので、自分自身にぴったりな移住スタイルを見つけてみてほしい。
体験移住&ワーケーション
住まいを持たずに気軽に移住を体験する方法が、体験移住やワーケーションだ。
体験移住とは、各自治体が実施しているもので、期間限定でその地域で暮らし、生活を体験できるというもの。
移住を前提として、住む前に地域や環境のことを知りたいという方や、自分の理想の暮らしを実現できるかどうかを試してみたいという方におすすめ。
各自治体では移住体験ツアーとして、住まいの提供や農業体験、町めぐりなどを実施しているので、効率的に移住候補地の見学ができる。
ワーケーションとは、休暇をかねて地方を訪れ、余暇の合間に仕事をするスタイルのこと。旅行気分で好きな場所を訪れながら仕事ができるのはテレワークならでは。
ワーケーションなら長期休暇がとりやすく、家族やパートナーとの時間を確保できるのがメリット。
色々な地域でワーケーションをしながら、将来の移住先を決めていくのもおすすめ。
長期滞在&別荘滞在
避暑のために夏の間に山間部に住むという場合や、夏休みだけ海辺に住むといったスタイルが長期滞在や別荘滞在だ。
休暇としての認識が強いが、一定期間住んでいるうちにその土地に愛着が湧き、将来的に移り住むことも考えられる。
また一定期間、定額で各地域の物件に住めるサブスクリプション型住居サービスや、自分で購入した住居や賃貸に期間限定で滞在するスタイルもひとつの方法。
定住には踏み切れないが長期滞在をしてみたいという方におすすめのスタイル。
2拠点生活
都市の生活を残しながら地方で暮らすスタイルが2拠点生活。都市と地方の暮らしを両方取り入れられる人気のスタイルだ。
リモートワークが広がる現在、実際に2拠点生活を行っているのは20代から40代の子育て世代。
今の仕事を続けながら週末は地方で、もしくは地方暮らしをしながら必要なときは都内の自宅に住むという生活を実現できる。
完全移住する前の準備段階として、少しずつ生活環境を変えていくのもおすすめ。徐々に地方暮らしをメインにできれば完全移住することも可能。
完全移住
完全移住は都会の住まいから地方へ完全に移住すること。仕事も住まいも家族もすべて地方へ移すことになる。
失敗しないためにも、まずは体験移住をしてみたり、必要であれば2拠点生活をしたりしてじっくり考えてから完全移住することがおすすめ。
テレワーク移住に失敗しないためのチェックポイント5つ
今の仕事を変えずに、テレワークを活用しながら移住をしたいという方が、移住に失敗しないためのチェックポイントを5つ紹介する。
生活環境が合うかどうか
いくら念入りにその地域のことを調べても、実際に住んでみないとわからないということもたくさんある。
1年間の気候や風土、生活環境などは住んでみてから気づくこともあるだろう。
実際に移住してから後悔する前に、まずは体験移住や2拠点生活をしてみることでミスマッチを防ぐことができる。
ネット環境やコワーキングスペースをチェック
テレワークに必須なネット環境が十分かどうかは必ず事前に確認しておこう。
エリアによっては、街なかは環境が良くても実際に住む場所はつながりにくいということも考えられる。
またコワーキングスペースの有無をチェックしておくと、働く場所の選択肢が増える。
移住したばかりで環境が整わない場合や2拠点生活でネット環境を整えていない場合にも、便利に活用できるだろう。コワーキングスペースの普及に力を入れている自治体も多くある。
災害リスクを確認しておく
自然の豊かさが魅力の地方移住ですが、自然災害のことも考えておかなければいけない。
希望している地域にはどんな災害リスクがあるのか、実際に災害があった場合どこに避難したら良いのかなどは必ずシミュレーションしておこう。
生活コストのシミュレーションしておく
地方暮らしは都会暮らしよりコストがかからない点がメリットだが、引越し費用や自動車購入費など、移住するために必要な費用があるのも事実。
思いがけない出費に頭を悩ませないためにも、移住を実現するために必要なコストや、移住してからかかる生活コストをそれぞれシミュレーションしておくことがおすすめだ。
移住支援金や支援制度があるかどうか
条件に当てはまれば国が実施する移住支援金の対象になる場合があるが、気に入った移住先が積極的な移住支援を行っているかどうかもチェックしておくと良い。
地方創生移住支援金と各自治体の移住支援制度
ここからは、国が実施している地方創生移住支援金と各自治体の移住支援制度について解説する。
東京23区に住む人や通勤する人が受けられる移住支援金
地方創生移住支援金とは、東京23区に在住している人や通勤している人が、東京圏外へ移住して起業や就業などを行う場合に、各自治体と共同で交付金を支給する事業のこと。
東京圏とは東京都、埼玉県、千葉県、神奈川県のことですが、1都3県でも条件不利地域に認められている市町村への移住も認められている。
2021年からは、テレワークで移住前の仕事を続ける場合でも対象になった。
交付金の最大金額は100万円だが、起業することで最大300万円の補助金を受け取ることができる。移住前には自分が対象かどうかを必ず確認しておこう。
受給の詳細については各自治体へ直接問い合わせよう。
移住支援金の対象者は?
地方創生移住支援金の対象者は、移住直前の10年間で通算5年以上東京23区や東京圏に在住していて、さらに東京23区へ通勤していた人。
移住支援金の条件は?
移住先が東京圏以外の道府県または1都3県の条件不利地域の場合に限る。
また、転入から3ヶ月以上1年以内に申請することや、申請後5年以上継続して居住する意思があることなどの条件がある。
さらに、その地域の中小企業などへの就業やテレワークによる業務継続、地域での社会的企業などの就業についての要件もある。
参考元:地方創生|移住支援金
各自治体が移住促進のために実施している移住支援制度
国が実施している移住支援金の他にも、各自治体が移住促進のために実施している移住支援制度もある。
住宅に関する支援はもちろん、就職や子育てなどさまざまな支援が実施されている。
例えば、最大10万円ほどの引越し費用補助や、50万円〜200万円ほどの新築住宅取得に関する助成金、最大50万円のリフォーム費用補助など。
仕事に関しては、地域での就職を支援してくれる制度の他に起業や開業に関する支援、農林漁業の研修受け入れ制度などが取り入れられている。
テレワークにおすすめの移住支援制度がある自治体5選
「テレワークで現在の仕事を継続しながら移住したい」という方にぴったりな移住支援を実施している自治体を5つ紹介する。
【静岡県】富士市
出典:富士市移住コトハジメ|富士市取手市テレワーク移住促進事業補助金
富士山と駿河湾を見渡せる静岡県富士市。過ごしやすく温暖な気候が魅力。
富士市の「先導的テレワーク移住者支援補助金」では、東京圏在住の被雇用者や個人事業主が、テレワークの実施をきっかけに富士市へ移住した場合に、住居取得費や引越し費用などの合計最大50万円を補助している。
また本人や家族が自宅でテレワークを行うためにリフォーム工事をする場合、必要経費として最大50万円の補助もある。
そのほかにも新婚世帯への補助金や開業サポート、対象地域での空き店舗を使用したテストマーケティングが無料で実施できる「まちなかラボ」など、趣向を凝らした支援制度が充実している。
【茨城県】取手市
出典:取手市テレワーク移住促進事業補助金|取手市
利根川が広がる取手市では「テレワーク移住促進事業補助金」としてテレワークを行う人へ向けた補助制度が実施されている。
取手市に移住して住宅を取得するか、アパートなどを賃借した場合に受けられる補助制度が設けられている。
東京圏からの移住であれば最大200万円以上の補助を受けられる場合があるので、対象者や条件を確認しておくと良いだろう。
また、取手市に住民登録があれば、市内の宿泊施設をテレワークで使用した場合に1回あたり最大2,000円の補助が出る制度もある。
【岡山県】岡山市
出典:おかやま生活トピックス|おかやま生活
桃太郎伝説が生まれた街岡山市では、テレワーカー向けのお試し住宅の提供を実施している。
住宅内には光回線が整備されているのですぐに仕事をすることが可能。また、敷金礼金のかからない物件なので、コスト面での負担も軽減される。
賃貸マンションやアパート、一戸建てから好みの物件を選べるのも魅力。家賃の一部や仲介手数料、家賃補償保険保証料について一部補助される。
また県外から岡山市へ移住をする場合、対象の賃貸住宅を利用した移住者への家賃補助が実施されているのも魅力。
【栃木県】下野市
出典:テレワーク移住支援金を創設!!!|ベリーマッチとちぎ
都内から車で約1時間半ほどでアクセスできる下野市では、東京圏での勤務をしながらテレワークのために住まいを移した人へ、月額最大5万円の家賃補助制度を実施している。
また、庁舎ロビーにはWi-Fi環境を整えたテレワークスペースを設置。市民の方や他市や他県の誰でも利用できるのが魅力だ。
さらに、対象となる法人やフリーランスが、栃木県内でお試し勤務を行う場合に経費の一部を負担する「サテライトオフィス体験支援補助金@とちぎ」を開始するなど、新しい働き方に伴うライフスタイルの変化にマッチする支援を行っている。
【福島県】全域
出典:ふくしまテレワーク体験|福島県
福島県では県外在住の人限定で、テレワーク体験の補助を行っている。テレワークをしながら福島での暮らしを体験できるプランだ。
体験に関わる交通費や宿泊費、施設利用料、レンタカー代など幅広く支援している。
1泊2日から5泊6日の短期間コースでは1泊あたり1万円の補助金、1ヶ月から3ヶ月の長期間コースではひとりあたり最大30万円の補助金が交付される。
交付条件には、SNSなどで県内のテレワーク環境や地域情報を発信することも含まれているので、地域の魅力を発信したい方におすすめ。
テレワーク×移住支援制度を上手に活用して移住計画を立てよう!
暮らし方や働き方が多様化している現在、テレワークと移住支援制度をうまく活用することで新しい移住スタイルを実現できる。
いきなり完全移住をする必要はなく、まずはワーケーションや体験移住でその土地を知ることから始めてみてはどうだろうか。
今の仕事を変えずに生活環境を徐々に変えていくことで、さまざまなリスクを避けることもできる。