大分県は別府・由布院などの有名温泉地がある「日本一のおんせん県」だ。それだけでなく、豊かで多様な海産物・農産物も魅力である。一方、交通アクセスなどの面から自家用車の必要性が高いなど、移住する前に知っておきたい面もある。
この記事では、大分県移住のメリットと気をつけたいポイント、移住におすすめの自治体とそれぞれの移住支援金(補助金)などについてまとめている。移住先の検討に、ぜひ活用してほしい。
移住する前に知っておきたい大分県の基本情報
まずは、大分県の基本的な情報について紹介する。
地理
大分県は、九州北部に位置する県だ。
海沿いに平野部がある以外は山地の占める割合が大きく、九州本土の最高峰である九重連山の中岳を有する(竹田市)。
北部と東部には海岸線があり、瀬戸内海・周防灘・豊後水道と面している。
人口
県の人口は約110万人(2022年2月時点)である。
そのうち、40%近い約47万人(2022年10月時点)が県庁所在地である大分市に住んでいる。
参考:大分市の統計|大分県
気候
大きく、北部・中部・西部・南部で気候が区分される。
- 北部
中津市、宇佐市、豊後高田市、国東市、姫島村が該当する。瀬戸内気候であるが、冬は曇りがちになることが多い。
- 中部
杵築市、日出町、別府市、大分市、由布市、臼杵市、津久見市が該当する。より瀬戸内気候の影響が強く、冬でも天気の良い日が多い。
- 西部
日田市、玖珠町、九重町、竹田市が該当する。内陸部であり、夏に雷雨が多い傾向がある。また、秋から初冬にかけて盆地霧が発生する。
- 南部
豊後大野市、佐伯市が該当する。夏に発生しやすい大雨、冬の晴天に特徴があり、温暖多雨な気候である。
産業
農林水産業では、かぼすと干しシイタケの生産量が日本一のほか、関さばや関あじ、城下かれいなどがブランド魚として人気である。
県南部では、リアス式海岸を利用した養殖漁業も盛んに行われている。工業面では県北部における自動車関連産業に強みがある。
また、全国一の源泉数・湧出量を誇る温泉産業も有名である。地熱発電の推進などによる自然エネルギー発電も、盛んに行われている。
大分県移住のメリット|自然の魅力がたくさん
大分県への移住には、以下のような利点が挙げられる。
温泉好きにはたまらない
「おんせん県」を自称するほどの温泉愛にあふれた大分県は、源泉数・湧出量ともに日本一である。
観光地として有名な別府(別府市)、由布院(由布市)以外にも、県内には多くの天然温泉があり、日帰り入湯なども楽しめる。
美味しい野菜・海産物が安く手に入る
豊かな山野と海に恵まれた大分県では、新鮮で美味しい野菜・海産物が安く手に入りやすい。
生産量全国日本一のかぼすはもちろん、ねぎ、大葉などの薬味となる野菜、温暖な気候を活用したピーマン、トマトなどの栽培も盛んである。
また魚介類では先に挙げたブランド魚だけでなく、ヒラマサ、タチウオ、ハモ、ちりめん、ブリなどが自慢の魚すなわちプライドフィッシュとして公認されている。
特に養殖であるかぼすヒラメは、エサに1%のかぼす果汁を加えることで、魚独特の臭みが消えることで刺身の旨味が強く感じられる。
治安が良い
県内の犯罪率は低く、全国5位の治安の良さである(2021年時点)。2021年の刑法犯認知件数においては、過去最少となる2,887人を記録。
人口10万人あたりの犯罪認知件数(2019年時点)は、全国平均が593.3件であるのに対し、大分県は265.9件と半分以下である。
また、ワースト1である大阪府(961.2件)と比べると、7割以上犯罪認知件数が少ないといえる。
参考:令和元年の犯罪
子育て支援が充実している
大分県では、経済面での子育て支援策はもちろんのこと、地域全体で子育てを応援する設備、体制が整っている。
地域の児童館など、子どもが安全に健康を増進できる施設や、子を持つ親が集まって育児について話ができる地域子育て支援拠点などがある。
また、男性の子育て参画を推進するワークショップ「おおいたパパくらぶ」の受講ができるなど、行政側から幅広く育児への支援が行われている。
2022年12月1日に、子育て支援ポータルサイト「子育てのタネ」をオープン。妊娠や出産を控えている方や、子育て世帯に向けた情報提供を行っている。
大分県移住のデメリット|気をつけておきたいポイントは?
一方で、以下のような注意点もある。
車社会なので自家用車はあったほうがいい
県内の鉄道路線は限定的であり、地下鉄はない。バスも都会ほどは頻繁に往来していないため、快適な生活を送るのであれば自家用車があるほうが良いと言える。
また、高速道路は宮崎県宮崎市から大分県を通り福岡県北九州市までを結ぶ東九州自動車道、大分県日出町から佐賀県鳥栖市までを結ぶ大分自動車道の2本のみとなっている。
県内での移動はもちろん、県外への旅行でも時間に余裕を持って動く必要があるだろう。
最低賃金は全国最低クラス
大分県の最低賃金は時給854円である。
福岡県が時給900円であるものの、大分県以外の他6県(佐賀県、長崎県、熊本県、宮崎県、鹿児島県、沖縄県)が全国最低賃金である時給853円のため、九州地方では2番目に時給が高いことになる。
ただ、もちろんこの金額は全国単位でみると最下位の次点となる額である。大分県に移住して、アルバイトなど時給で働く仕事だけでまずは生計を立てようと思うと、少し大変かもしれない。
地域によっては工場ばい煙があることも
大分県は工業生産も充実しているが、そのデメリットとして工場ばい煙が発生することがある。
大分臨海工業地帯(大分市)の近くでは、風向き次第で工場ばい煙によって洗濯物が干せない日もあるようだ。
大分市での住宅選びの際は、工場地帯との距離や、不動産業者・地域住民の口コミなどを確認すると良いだろう。
大分県の主な移住支援制度をピックアップ【住まい・仕事・子育て】
出典:県の移住支援情報|おおいた暮らしの第一歩
大分県では、以下のような移住支援制度を設けている。
移住支援金
県外から大分県に移住した場合、最大で100万円の支援が受けられるという制度である。
対象となるのは、大分県ふるさと求人マッチングサイトの掲載企業に就職した移住者をはじめとして、大分県に定住する意思のある人となっている。
条件を満たす2人以上の世帯は100万円※、単身世帯は60万円が受け取れる。
支給に際しては条件が複数あるため、事前に大分県「おおいた創生推進課」に電話連絡のうえ確認しておく必要がある。
※2023年度4月より1世帯につき最大100万円の支給に加え、18歳未満の子どもに対する支援金がひとりあたり最大30万円から100万円に加算される予定
空き家利活用事業
空き家利活用事業とは、大分県外から移住する際、空き家を購入・改修する費用として最大100万円、家財処分費用として最大10万円の支援が受けられる補助制度のこと。
この際、対象となる空き家は「空き家バンク」に登録されている物件、もしくは空き家マッチングチームによって契約が成立した物件に限定される。
空き家を購入して新規事業を起こしたいと考えている人や、家族で大分県への移住を考えている人におすすめだ。
就職・起業支援
就職相談窓口におおいた産業人財センターがある。
ここでは、UIJ求職者向けの専用ダイヤルがあり、専門スタッフが県内での就職相談や県内企業に関する情報提供・仲介あっせんまで、就職をサポートしてくれる。
また、おおいたスタートアップセンターという起業相談窓口もある。
創業支援ディレクター、コーディネーターなどのスタッフが常駐し、創業者の支援をしてくれる。
子育て支援
移住者だけでなく、大分県民が利用できる子育て支援策がある。
「おおいた子育てほっとクーポン」は、子どもが生まれた全世帯を対象に、その子が満3歳になる前日まで使えるクーポン券が発行される。
金額は第1子1万円、第2子2万円と増額されていき、出生順位×1万円が上限なく設定されている。
第2子以降は認可保育所等での3歳児未満の保育料が全額助成される。
さらに、未就学児の通院・入院医療費の全額助成、小中学生の入院医療費を全額助成、不妊治療助成金制度など、手厚い助成制度が設けられている。
また、子育て世帯は移住支援金などの額も増額・優遇されていることが多いため、家族での大分県移住は大きなメリットがある。
大分移住におすすめの市町村(自治体)と支援内容一覧
それぞれの市町村にも、独自の移住支援策が設けられている。
大分市(おおいたし)
出典:大分市移住応援サイト
大分市は大分県の県庁所在地であり、県人口の多くが住んでいる市である。ほかの市町村に比べて利便性が高く、移住先としても人気だ。
大分市では、「移住応援支援金」という制度がある。この制度では、県外からの移住者が対象となる。
子育て世帯には30万円、そのほかの世帯には20万円がそれぞれ支給される。ただし、大分県が実施している「移住支援金」との併給はできない。
別府市(べっぷし)
出典:移住|別府市
別府市は大分市の北西部に位置する、大分県第2位の都市である。別府温泉があるため、温泉好きの人に人気がある。
ただ、観光地に隣接しているため、交通渋滞に巻き込まれたり物価が高くなりやすかったり、といったデメリットもある。
別府市の移住支援策で特におすすめしたいのが、空き家購入・改修にかかる補助金である。
別府市の空き家バンク制度を活用した場合、上限30万円、補助率1/2の購入補助・改修補助が受けられる。
また、移住の検討に際して便利な「おためし移住施設」が利用できる。
日田市(ひたし)
出典:日田においでよ。
日田市は県西部にある人口約6万人の市である。福岡県と隣接しており、大分市、福岡県久留米市の双方向へのアクセスが良い(どちらもJR久大本線を利用して1時間程度)。
日田市でも空き家購入にかかる助成金が用意されている。補助率1/2、補助上限100万円の空き家購入費補助に加え、補助率2/3、補助上限100万円の空き家改修補助がある。
また、転入時の年齢が45歳未満の人には、1世帯上限を50万円として、1人あたり10万円の移住加算金が支援される。
日田市にも「おためし移住施設」があるため、実際の日田での生活を体験するためにもぜひ活用したい。
臼杵市(うすきし)
出典:臼杵市への移住・定住を応援します!|臼杵市
臼杵市は県中部、大分市の南東側に位置している市である。臼杵市の移住支援策は、特に子育て世帯の定住促進に向けた制度が手厚い部分に特徴がある。
引っ越し費用の補助金は補助率2/3、上限額10万円であるが、子育て世帯は上限額が20万円まで引き上げられる。
また、臼杵市で結婚、定住する新婚世帯を応援する制度もあり、新婚世帯家賃補助金(夫婦のみの場合、補助率1/2、上限月額3万円、最長24ヶ月)など、大きな支援が得られる。
豊後高田市(ぶんごたかだし)
出典:豊後高田市IJU支援サイト
豊後高田市は県北部に位置する市である。
豊後高田市では、事業所等に勤務している人が移住して民間賃貸アパート等に入居した場合、補助率1/2、上限年額10万円の家賃支援を受けられるムーブイン就労家賃応援金制度がある。
また、特定の住宅に住む新婚世帯・子育て世帯に対して、36,000円の「新婚・子育て世帯家賃応援金」が支給される。
宇佐市(うさし)
出典:USA de KURASO
宇佐市も県北部に位置している市である。
宇佐市では、転入・企業で働き始めた人に対して奨学金返還の一部を補助する支援事業があり、補助率1/2、1人あたり総額100万円を上限とした補助金が受け取れる。
子育て世帯の中古住宅支援・新築費用助成もあるなど、子育て世帯に対する支援制度が手厚いのも特徴的だ。
宇佐市移住体験ツアーもあるため、積極的に活用していきたい。
魅力いっぱいの大分県移住を検討しよう
大分県移住にはメリットが多数あるが、子育て支援に力を入れている自治体が多く治安が良い点が、特におすすめできるポイントだ。
中古住宅の購入・改修にかかる支援制度も充実しているため、子育て世帯の転居は経済的なメリットも大きいと言えるだろう。
豊かな自然の中でのびのびと子育てができる大分県への移住を、ぜひ検討してみてはいかがだろうか。