秋田県は豊かな自然やお祭りを楽しめるほか、高い教育水準や犯罪の少なさなど、移住先として魅力の多い土地だ。なおかつ、移住者を受け入れるための支援体制も整っているためお得な移住を叶えやすい。
この記事では、秋田移住のメリット・デメリット、活用すべき移住支援制度(補助金)とおすすめ自治体(市町)を紹介していく。
移住する前に知っておきたい秋田県の基本情報
移住を成功させるためには、実際に移り住む前にその土地の特徴を理解しておくことが大切だ。まずは、秋田県の地理・人口・気候・産業など基本的な情報を見ていこう。
地理
秋田県は東北地方の日本海側に位置する県で、県の東部の県境は南北に奥羽山脈が連なり、西部は日本海に面している。
緯度は北京やニューヨーク、マドリードなど世界の大都市とほぼ同じ(北緯40度)。面積は11,640 km²と、全国の都道府県で6番目の大きさを誇る。
参考:秋田のいろは | 美の国あきたネット(秋田県公式サイト)
人口
秋田県の総人口は、令和4年12月1日時点で927,561人、世帯数は385,992世帯だ。
県内で最も人口が多いのは、県庁所在地である秋田市で、総人口は302,745人、世帯数は138,786世帯と、秋田県の人口のおよそ3割を占めている。
参考:秋田県の人口と世帯 | 美の国あきたネット(秋田県公式サイト)
参考:人口・世帯 | 秋田市
気候
秋田県の平均気温は、12.1度と全国平均よりも低い。特に1月は0.4度、2月は0.8度と真冬は凍てつく寒さとなる。
気候の特徴は、夏が短く季節の区分がはっきりしていること。典型的な日本海側気候で、冬は北西の季節風が強く、降水量が多い。
降雪量は、一般的に沿岸部では少なく、内陸部に入るに従って多くなる。
産業
秋田県の産業を出荷ベースで見ると、電子部品、デバイス、化学工業、食料品が主な産業だ。
秋田県の県庁所在地である秋田市の地場産業は、県内の豊かな天然資源を利用した木材・木製品の製造や、パルプ製造、清酒製造など。近年は企業誘致にも積極的で、ICT関連企業の伸びも目覚ましい。
秋田移住のメリット|移住先としての魅力は?
秋田県に移住するメリットは、大きく分けて以下の7つだ。
- 四季折々の美しい自然
- 多彩な伝統行事・風物詩
- 美味しいものが多い
- 都市部より物価が安い
- 全国トップレベルの子育て・教育環境
- 犯罪件数が少なく治安が良い
- 移住支援や子育て支援の充実
それぞれのメリットについて、詳しく解説していく。
四季折々の美しい自然
秋田県は豊かな自然を有する県だが、特に1993年に世界自然遺産に認定された「白神山地」は有名だ。
白神山地は琵琶湖の2倍ほどに匹敵する広大な山並みで、豊かなブナの森が広がっている。
その中心部である約1万7000ヘクタールのエリアには、手付かずの原生的なブナ林が残されているが、これほどの規模で原生的なブナ森が残っているのは東アジアでは白神山地だけ。
白神山地は登山やハイキングにもおすすめで、紅葉だけでなく新緑シーズンもおすすめだ。
多彩な伝統行事・風物詩
秋田というと「なまはげ」をイメージする方も多いだろう。秋田では、なまはげをはじめ数多くの伝統行事やお祭りが開催されている。
例えば、「秋田竿燈まつり」は東北三大祭りのひとつで、高さ12mほどの巨大な竿燈が夜空にゆらめく姿は圧巻の一言。
また、全国から選出された花火師たちが日本一の座を目指して競い合う、全国花火競技大会「大曲の花火」では、大迫力の音と夜空に煌く光の芸術を堪能できる。
そのほかにも日本三大ばやしの「花輪ばやし」や、日本最大級の大綱引き「刈和野の大綱引き」、約450年の歴史を持つ「横手のかまくら」など、秋田で生活すると年中魅力的な伝統行事や風物詩が目白押しだ。
参考:秋田のお祭り | 秋田県公式観光サイト [アキタファン]
美味しいものが多い
秋田県は米作りが盛んということもあり、米を使用した郷土料理が多い。例えば、きりたんぽやダマコモチが代表的な郷土料理だ。
また、1年の多くの時期を深い雪に覆われるため、凍み大根や干し餅など、厳しい冬を生き抜くための保存食が発展している。
秋田は豊かな自然環境に恵まれているため、コゴミ、ウド、ドケ、アイコ、ワラビ、ゼンマイ、フキなど、山菜の種類も豊富で食べ方も多彩だ。
都市部より物価が安い
ほかの地方都市でも言えることだが、秋田県は東京や大阪などの都市部と比較して家賃が安い。秋田の中心地である秋田市でも、ワンルームで3.8万円、1K1DKで4.9万円程度だ。
さらに、湯沢市や由利本荘市、大仙市などであれば、ワンルームが3万円代前半で借りることができる。
東京の同じ条件の物件が7万円程度することを考えると、秋田県の家賃はかなり安いと言えるだろう。
また、秋田は一戸建て住宅比率や持ち家比率、持ち家住宅の広さなどで全国1位に輝くなど、住宅環境に恵まれた県でもある。
全国トップレベルの子育て・教育環境
あまり知られていないかもしれないが、秋田県は全国トップレベルの子育て環境・教育環境が整った県でもある。
平成19年度(2007年度)に再開された小・中学生の全国学力状況調査では、平成24年度まで毎回トップクラスの成績を収めている。
また、体力・運動能力などの調査においてもトップクラスとなっている。
秋田県は、自然環境、住環境、教育環境など、さまざまな面で優れた点を持ち、生活しやすく子育てしやすい環境だと言えるだろう。
参考:秋田県の魅力 | あきた企業立地サポートガイド
参考:本県の子育て支援(機関紙「あきた経済) | 一般財団法人 秋田経済研究所
犯罪件数が少なく治安が良い
秋田県は、犯罪件数が少なく治安が良いところも魅力的だ。
秋田県警察が平成26年に行った調査では、秋田県の治安に対して「治安が良い」と答える県民が79.4%と圧倒的多数を占めた。
犯罪に巻き込まれる心配なく、「安心して生活したい」という人にとっても秋田県は魅力的な移住先だと言えるだろう。
移住支援や子育て支援の充実
移住するとなると、どうしても多くの経済的負担がかかってしまう。秋田県は、移住支援が充実しているため、負担を抑えて移住を叶えることができる。
例えば、県では東京圏からの移住者に対して移住支援金制度を設けているが、最大100万円支給という自治体が多いなか、秋田県では最大200万円支給している。
また、秋田県では幼児教育・保育の無償化など、子育てに関する支援も充実しているため、子育て世代にも優しい環境だ。
秋田移住のデメリット |どのような後悔や失敗がある?
秋田移住にはたくさんのメリットがあるが、デメリットも存在する。秋田県へ移住する際に、後悔や失敗となりやすい点は、以下の5つだ。
- 積雪量が多く雪かきや運転が大変
- 娯楽が少ない
- 車の所有が必須
- 言葉や文化に馴染めない可能性がある
移住した後に「こんなはずじゃなかった」と後悔しないためにも、秋田移住のメリット・デメリットの両面を理解しておこう。
積雪量が多く雪かきや運転が大変
秋田県は寒さが厳しい地域であるため、冬の厳しい寒さや積雪や吹雪は覚悟しておかなければならない。
冬場は雪かきが必要になったり、交通機関が麻痺することも多い。また、車のチェーンやスタッドレスを用意するなど、さまざまな降雪対策が必要だ。
娯楽が少ない
秋田県は、都心部と比べると大型商業施設やブランドショップなどの数も少なく「娯楽が少ない」と感じる人もいるだろう。
秋田市にはイオンモールや映画館、美術館、動物園などの娯楽施設があるが、秋田市以外になると娯楽施設の数はグッと少なくなってしまう。
多少は都会的な刺激が欲しい、利便性を求めるという人には、県内で最も人口が多く栄えている秋田市への移住をおすすめする。
車の所有が必須
秋田県へ移住するのであれば、車なしの生活は厳しくなる。
秋田市の中心部は、他の地域よりも公共交通機関が整ってはいるが、マイカーを所持した方が快適な生活を送れるだろう。
秋田移住を検討中の人は、車を所有するための準備をしておこう。
言葉や文化に馴染めない可能性がある
地方へ移住するとなると、その土地ならではの方言や文化・風習がある。
そのため、移住した後に「方言がきつく感じる」「田舎の文化や風習に馴染めない」ということも少なくない。
移住を成功させるために、お試し住宅を利用するなど、移住希望先での生活を短期間でも体験しておくことをおすすめする。
秋田移住で活用したいポータルサイト&支援制度&サポート
秋田移住を考えているのであれば、ぜひ県や各自治体が提供するポータルサイトや支援制度を活用しよう。
秋田県への移住を検討中の方がチェックしておきたいポータルサイトと支援制度は、以下の通りだ。
- 秋田暮らし はじめの一歩
- 移住支援金
秋田暮らし はじめの一歩-秋田県移住・定住ポータル総合サイト
出典:秋田暮らし はじめの一歩
秋田暮らし はじめの一歩とは、秋田県への移住・定住を応援するポータルサイト。
「しごと」「くらし」「住まい」「イベント」「エリア」「支援制度」「地域おこし協力隊」のテーマごとに、移住者が欲しい情報を提供している。
求人情報や県・市町村公営住宅情報、空き家バンク、イベント情報を定期的に発信しているほか、移住の際に活用できる支援制度を、カテゴリや市町村、キーワードで検索することも可能だ。
秋田県への移住を考える人は、ぜひ一度サイトをチェックしてみよう。
移住支援金
秋田県では、東京圏(東京都、埼玉県、千葉県、神奈川県)から秋田県へ移住する人を対象に、単身者の場合60万円、家族で移住する場合は1世帯につき100万円※の移住支援金を支給している。
※2023年度4月より1世帯につき最大100万円の支給に加え、18歳未満の子どもに対する支援金がひとりあたり最大30万円から100万円に加算される予定
移住支援金は、次の要件を全て満たした人が対象となる。
住民票を移す直前の10年間のうち、通算5年以上、東京23区内に在住していた方又は東京圏(東京都、埼玉県、千葉県、神奈川県)のうちの条件不利地域(※1)以外の地域に在住し、東京23区内に通勤していた方(ただし、東京圏のうちの条件不利地域以外の地域に在住しつつ、東京23区内の大学等へ通学し、東京23区内の企業等へ就職した方については、通学期間も本事業の移住元としての対象期間とすることができます。)
住民票を移す直前に連続して1年以上、東京23区内に在住又は東京圏のうちの条件不利地域以外の地域に在住し、東京23区内への通勤をしていたこと。
【就職に関する要件】、【テレワークに関する要件】、【起業に関する要件】又は【本事業における関係人口に関する要件】のいずれかを満たす方
(※1)条件不利地域
・東京都:檜原村、奥多摩町、大島村、利島村、新島村、神津島村、三宅村、御蔵島村、八丈町、青ヶ島村、小笠原村
引用:移住支援金制度について | 秋田暮らし はじめの一歩
・埼玉県:秩父市、飯能市、本庄市、ときがわ町、横瀬町、皆野町、小鹿野町、東秩父村、神川町
・千葉県:館山市、旭市(令和3年4月1日以降)、勝浦市、鴨川市、富津市、いすみ市、南房総市、東庄町、長南町、大多喜町、御宿町、鋸南町
・神奈川県:山北町、真鶴町、清川村
上記以外にも細かな要件があるが、移住支援金は非常に大きな金額となるため、条件に当てはまる場合は、ぜひ活用してみてほしい。
秋田移住|支援制度が充実している自治体(市町)おすすめ8選
最後に、移住に役立つ支援制度が充実している秋田県内の市町を紹介する。
具体的に移住したい地域が決定していない場合は、お得な移住を叶えられる以下の自治体を移住先の候補として考えてみよう。
秋田市(あきたし)
出典:秋田市いいわ
秋田市は秋田県最大の都市で、東北では仙台市に次いで人口の多い秋田の県庁所在地だ。
県内で最も栄えた街だが、全国でも犯罪件数が少なく治安が良い。また、医療機関や福祉施設がバランスよく立地しているため、安心して生活できる。
秋田市には、「子育て世帯移住促進事業補助金」という制度がある。この制度は、18歳未満の子を養育していることなどの条件を満たした方を対象に、以下の通り費用を負担している。
ア)住宅の新築・購入に係る費用
100万円+10万円×(子どもの人数)+50万円(※)
(※)市内に主たる事務所を有する事業者と契約した場合のみイ)住宅の賃貸借契約に係る初期費用(敷金、仲介手数料など)
20万円+10万円×(子どもの人数)ウ)転居に係る費用(引っ越し業者に支払う費用)、移動手段の確保(自動車等の購入)に係る費用、生活必需品(家具家電)の購入に係る費用
引用:子育て世帯移住促進事業補助金 | 秋田市いいわ
20万円+10万円×(子どもの人数)
秋田市では、上記のほかにも「若者移住促進事業補助金」、「移住相談ツアー」など多くの支援制度があるので、市へ移住する際は活用してみよう。
横手市(よこてし)
出典:移住・定住支援・応援人口|横手市
横手市は秋田県東南部の中心都市。450年もの歴史を持つ伝統行事のかまくらは全国的に有名だ。
盆地の寒暖差と肥沃な土壌を活かした、米や野菜、果物作りが盛んで、発酵食品、B級グルメの横手焼きそばなど、豊かな食文化にも注目が集まっている。
横手市ではUIJターン・起業サポートを行なっており、市内の就職情報・企業情報を集約した「横手JOBナビ」や、農業をはじめたい方に向けたサポートなどを行っている。
また、中学生までの子どもの医療費無料、市内の子育てに関する多くの情報を得られる横手市児童センターの設置など、子育て支援にも力を入れている。
大仙市(だいせんし)
出典:大仙市で新しい暮らし、はじめてみませんか。|大仙市
秋田県の南東部に位置する大仙市は、四季折々の豊かな自然に恵まれた土地で、温泉やスキーを楽しめるほか、全国花火競技大会「大曲の花火」が開催されることでも知られている。
新幹線や高速道路が整備されていて、新幹線を利用した場合、東京駅から大曲駅までは最速3時間ほどと、アクセスの良さも魅力のひとつ。
大仙市は、移住定住にも積極的で「住宅取得支援事業補助金」として、住宅の確保にかかる経費を最大120万円補助。
「若者・子育て世帯家賃支援事業補助金」や「移住引越支援金」「大仙市移住体験応援事業」などさまざまな支援が受けられる。
鹿角市(かづのし)
出典:鹿角暮らし
鹿角市は秋田県の北東端部に位置する市で、青森県や岩手県と接している。
鹿角市には、ユネスコ世界文化遺産に認定された「北海道・北東北の縄文遺跡群」の構成資産である国指定特別史跡「大湯環状列石」や、十和田八幡平国立公園など、豊かな自然に恵まれている。
鹿角市では、「鹿角市ふるさとライフ住宅改修支援補助金」として、移住を目的に登録建物を購入もしくは賃借する人などを対象に、最大100万円支給している。
お試し住宅やお試し移住ツアーも提供しているので、市への移住を希望する人はぜひ活用してみよう。
大館市(おおだてし)
出典:おおだて暮らし
大館市は青森県と接する県内陸北部に位置する市で、「忠犬ハチ公の故郷」「きりたんぽの本場」としても知られている。
自然豊かな土地でありながら、大型商業施設や大館市立総合病院をはじめとする医療機関の数も多く、ほどよい田舎ライフを満喫できる。
大館市では、「大館市空き家バンク制度」「定住奨励金制度」「住宅リフォーム支援事業」など、住まいに関する支援が充実しているのが特徴だ。
にかほ市(にかほし)
出典:にかほーむ
にかほ市は秋田県南西部に位置する市で、日本海と鳥海山に挟まれているというエリアの特徴から、海と山を一緒に楽しめる特徴を持つ。
世界有数の総合電子部品メーカー「TDK」の一大生産拠点となっており、製造業を中心に、農業、漁業が盛んな街で、以前は地域おこし協力隊も募集していた。
移住支援に積極的で、定住を目的に市内に住宅を取得し転入された人を対象に、最大100万円の奨励金や、固定資産税相当額3ヶ年分、家族1年間無料温泉パスポートを交付するなど、定住奨励金が充実している。
子育て支援や住宅支援も豊富で、支援やサポートに魅力を感じる人が多く、多くのIターン者が市内へ移住している。
三種町(みたねちょう)
出典:暮らし・移住・定住|三種町
三種町は、秋田県の北西部に位置しており、西側は美しい日本海、東側は緑豊かな山々に面する自然環境に恵まれており、伝統野菜「じゅんさい」や、メロンや梅の栽培が盛んな農業の町でもある。
また、「とてもしょっぱい温泉」として有名な森岳温泉は、美肌効果やきりきず、やけどなどに効果があるといわれ、森岳温泉郷には宿泊施設や飲食店が立ち並ぶ。
三種町では、「三種町住宅取得支援補助金」として、町内に住宅を取得する人を対象に新築住宅の場合、最大100万円、中古住宅の場合最大50万円の補助金を支給している。
五城目町(ごじょうめまち)
出典:五城目移住宣言
五城目町は秋田県の中央部に位置する町だ。良質な秋田杉の育成地としても知られており、林業の発展を支えた五城目大工といった技術も継承されている。
500年以上もの歴史を誇る朝一では、地元で採れた新鮮な野菜や手作りの漬物や佃煮などがずらりと並ぶ。
移住者のまちづくり成功例として多くの人が視察で訪れているのも特徴だ。
例として、築137年の茅葺屋根の古民家を村に見立てて再生させたシェアビレッジ町村や、廃校を利用した地域活性化支援センター(BABAME BASE)などがある。
五城目町では、「空き家利活用に係る改修等融資利子補給金給付事業」「五城目町住宅リフォーム推進事業」「五城目町新婚さん生活応援事業」「起業支援事業」などの支援を受けられるので、町への移住を希望する人は、ぜひ活用してみよう。
移住支援制度を活用して秋田移住をお得に叶えよう
秋田県は四季折々の美しい自然や、多彩な伝統行事や風物詩など魅力あふれる土地だ。
秋田移住には多くのメリットがあるが、その反面デメリットも存在する。
移住を成功させるためには、その土地へ移住するメリット・デメリットの両面を理解したうえで決定することが重要だ。
ぜひ、秋田移住のメリット・デメリットを理解し、県や自治体が提供している制度やサポートを活用しながら、秋田移住に向けて準備を進めていこう。