日本百名山に数えられる美しい山々に囲まれ、鮮やかな四季の変化を楽しめる山形県。人の営みと自然が調和するこの場所は、豊かな自然の中で暮らしたい方にぴったりの移住先だ。
山形県は移住者の受け入れにも積極的で、さまざまな支援制度が整っているのも魅力。山形移住のメリット・デメリットや活用すべき支援制度(補助金)、移住におすすめの自治体を早速チェックしていこう。
移住する前に知っておきたい山形県の基本情報
まずは、山形県の基本情報について紹介する。山形県の概要を知って、移住後の生活をイメージするのに役立ててほしい。
地理
東北地方の日本海側に位置する山形県。鳥海山や月山など、日本百名山にも名を連ねる秀麗な山々に囲まれ、山形県の「母なる川」と呼ばれる最上川が流れる、豊かな自然に溢れた地域だ。
面積は9,323.15km2と広く、森林が県土の約7割を占めている。
県内は、庄内・最上・村山・置賜の4つのエリアに分かれ、それぞれの地域で特色ある自然や文化を楽しめるのも特徴だ。
参考:山形県について|山形県
参考:山形県の森林|山形県
人口
山形県の人口は103万6,400人(令和5年2月1日時点)。人口の約半数は県庁所在地のある村山エリアに集中している。
ここで、山形県と東京都の人口密度を比較してみると次のようになる。
■山形・東京の人口密度比較
都道府県 | 人口 | 面積 | 人口密度 |
---|---|---|---|
山形県 | 103万5,157人 | 9,323.15km2 | 約111人/km2 |
東京都 | 14,02万8,040人 | 2,194.05km2 | 約6,394人/km2 |
※人口は令和5年3月1日時点のもの
山形県の人口密度は約111人/km2と、東京都の人口密度の約60分の1の低さだ。
「都会は人が多くて疲れる」「もっとゆったりと生活したい」と感じているなら、山形県はぴったりの移住先だろう。
参考:山形県について|山形県
参考:山形県の人口と世帯数(推計)(令和5年3月1日現在)|山型県
参考:東京都の人口(推計)|東京都総務局統計部
参考:令和5年 全国都道府県市区町村別面積調|国土地理院
気候
山形県は四季の変化がはっきりしており、夏は暑く冬は寒いのが特徴だ。
東北地方なので夏は涼しいイメージがあるかもしれないが、夏場は最高気温が30℃を超す日も多い。一方、冬場は県内全域が豪雪地帯に指定されるほど多量の雪が降る。
県内でも、置賜・村山・最上・庄内のエリアごとに気候の特徴が異なるので、移住先を検討する際には必ずチェックしておきたい。
産業
きれいな水と空気、豊かな自然に恵まれた山形県では、県内全域で農林業が盛んに行われている。
収穫量全国1位を誇るさくらんぼや西洋なし、ブランド米として知られる「つや姫」、上質なサシが魅力の「米沢牛」などは、山形県の特産品として全国的にも有名だ。
また、県内には約230もの温泉があり、松尾芭蕉ゆかりの「立石寺」など歴史的な名所旧跡も多いことから、観光業にも力を入れている。
参考:山形県について|山形県
山形移住のメリット|移住先におすすめな5つの理由
山形県に移住するメリットは、主に次の5つが挙げられる。
美しい自然を身近に感じながら暮らせる
日本海に裾野を引く鳥海山、庄内平野、最上川。山形県には、人の営みのすぐそばに美しい自然が溢れている。
四季の移ろいがはっきりしているため、季節ごとに表情を変える自然の優美さも、生活に彩りを与えてくれる。
「自然の中でのびのびと子育てしたい」「豊かな自然に囲まれて、穏やかなセカンドライフを過ごしたい」という願いも、山形移住で叶えられるだろう。
山や海などの大自然にすぐアクセスできるため、アウトドアやスキー、マリンスポーツなどの趣味を充実させることも可能だ。
食材の宝庫!季節ごとの旬を味わえる
きれいな水と空気、昼夜の寒暖差の大きさなど、上質な農畜産物を生み出すための好条件が揃う山形県。
収穫量全国トップのさくらんぼをはじめ、ぶどう・もも・メロン・すいか・枝豆など、多種多様な果物や野菜が生産されている。
ほかにも、「つや姫」「雪若丸」などのブランド米や、全国的にも有名な牛肉、山が育むきのこや山菜類など、美味しいものが目白押しだ。
日本海に面した山形県では年間130種類もの魚介類が水揚げされ、新鮮な海の幸も存分に楽しめる。
理想のマイホームを手に入れやすい
山形県は持ち家比率が74.9%と、マイホーム所有率が多い県だ。
山形県で住宅取得にかかる費用の平均額は約3,376万。東京の住宅取得費用(約4,852万円)の7割程度の価格で憧れのマイホームが手に入る。
また、1住宅あたりの敷地面積や持ち家住宅の延べ面積を比較してみると次のようになる。
■山形と東京の住宅比較
都道府県 | 1住宅あたりの敷地面積 | 持ち家住宅の延べ面積 |
---|---|---|
山形県 | 368㎡(東京の2.64倍) | 160.9㎡(東京の1.72倍) |
東京都 | 139㎡ | 93.3㎡ |
東京よりも安い価格で広い家を持てる山形県なら、自分好みの理想のマイホームを実現できるだろう。
参考:フラット35利用者調査報告(2021年)|独立行政法人 住宅金融支援機構
参考:社会生活統計指標-都道府県の指標-2023|総務省統計局
手厚い子育て支援&充実の教育環境
山形県では、出産支援金の給付や保育料の負担軽減など、妊娠期から出産・子育て期をサポートするさまざまな取り組みを実施している。
教育活動においては、国内で初めて1クラス33人以下の少人数学級編制を全小中学校で実施。地域住民を先生として迎え、伝統芸能や文化などを学ぶ機会もある。
治安が良く安心して生活できる
移住を考えるなら、治安の良さも大事なポイントだ。
山形県では、人口千人当たりの刑法犯認知件数は2.89件、窃盗犯認知件数は1.83件と、東京都の犯罪件数(刑法犯5.89件・窃盗犯3.93件)に比べると約半数の少なさだ。
さらに、認知件数1件あたり、刑法犯検挙率は83.9%、窃盗犯検挙率は85.1%と、全国トップの検挙率を誇っている。
参考:社会生活統計指標-都道府県の指標-2023|総務省統計局
山形移住のデメリット|失敗しないための注意点は?
美しい自然や豊富な食材など、魅力に溢れる山形県。しかし、移住するにあたっては注意しておかなければならないこともある。
山形移住のデメリットとしては、次の3点が挙げられる。
生活には車が必須
山形県は大都市ほど公共交通機関が整備されているわけではないため、基本的に車は必須だ。
人によっては、免許の取得やペーパードライバー講習の受講、マイカー購入などを検討する必要があるだろう。
自治体のなかには、運転免許を取得したり、ペーパードライバー講習を受講したりする移住者に対して補助金を支給しているところもあるので、ぜひチェックしてみてほしい。
冬は雪国ならではの大変さも
山形移住の最大の心配事と言えば、冬場の雪事情だろう。
山形県は、県内全域が豪雪地帯に指定されるほど積雪の多い地域だ。県内35市町村のうち、26市町村は特別豪雪地帯に指定されており、特に多量の雪に見舞われる。
雪かきや屋根の雪おろしなど、雪国ならではの生活の大変さがあることは十分に理解しておこう。
平均収入は首都圏より低い
2022年の家計調査をもとに、東京と山形の1ヶ月の家計収支を比較してみると次表のようになる。
■1ヶ月の家計収支(2022年)
実収入 | 実支出 | 黒字額 | |
---|---|---|---|
山形市 | 62万8,688円 | 40万4,666円 | 22万4,022円 |
東京都区部 | 69万5,496円 | 48万6,225円 | 20万9,271円 |
収入は山形の方が約7万円少ないが、黒字額で見ると山形は東京よりも約15,000円多いことが分かる。
山形では東京に比べて生活費や税金が安いため、移住して収入が下がったとしても、ゆとりある暮らしを送ることは十分可能だ。
山形県の移住支援制度・補助金は移住前に要チェック
山形県は移住支援が手厚く、住まいや仕事、子育てなど多方面からさまざまなサポートを提供している。
こうした支援制度をうまく活用していくのが、移住成功のための重要なポイントだ。
山形県の主な支援制度・補助金を早速チェックしてみよう。
移住支援金
山形移住をする際にまずチェックしてほしいのが、移住支援金制度だ。
東京圏(東京都・埼玉県・神奈川県・千葉県)から山形県へ移住し、県内の中小企業などに就職したり、テレワークなどを行ったりする場合に支援金が交付される。
支給額は、単身者の場合は最大60万円、世帯で移住する場合は最大100万円。18歳未満の子どもがいる場合は、ひとりあたりさらに30万円が加算される。
移住検討のための交通費や宿泊費、移住先での住居の確保など、移住には何かとお金がかかるもの。移住支援金制度をうまく活用すれば、移住にまつわる費用負担もだいぶ軽減されるはずだ。
支給対象の要件などは、事前にしっかりチェックしておこう。
賃貸住宅家賃補助
「移住したらまずは賃貸に住もう」と考えているなら、ぜひ賃貸住宅家賃補助制度を活用しよう。
山形県では、賃貸住宅に入居する県外からの移住者に対して家賃補助を行っている。支給額・期間は、月額10,000円を上限として最長24ヶ月。
転入日の前日までに、公的相談窓口を利用するなどの条件を満たす必要があるので注意しよう。
テレワーク支援事業
山形県では、テレワーク支援事業として下記2つを実施している。
山形県でお試しテレワークをする県外在住者に、テレワーク試行費用として最大50,000円を支給。
山形県にテレワーク移住した県外在住者に最大10万円を支給。
山形県では気軽に利用できるテレワーク施設も多数あるので、移住後にテレワークを行う予定の方はチェックしてみよう。
食の支援事業
山形県では、県が指定する30市町村に移住した方に対し、県産米や醤油、味噌を1年分提供している。
提供対象となる世帯には条件があるので、ホームページで確認しておこう。
「やまがた暮らし応援カード」事業
山形県では、移住希望者を対象にやまがた暮らし応援カードを発行している。
カードを持っていれば協賛店からの割引サービスや特典を受けられるもので、移住前後にかかる費用負担を軽減できるのがポイントだ。
協賛店は、令和5年4月時点で132事業所442店舗。レンタカー会社や宿泊施設、引っ越し業者、スーパーなど多岐にわたる。
移住検討時や引っ越しにかかる費用負担をできるだけ抑えたい方は、ぜひ活用してみよう。
その他の支援制度・補助金(仕事・住まい・子育て)
移住者の受け入れに力を入れている山形県では、ほかにも多くの移住支援制度がある。
就職・起業支援
山形県では就職・就農・創業などについても積極的に支援している。
県内にU・Iターンして転職・就職を行う方と県内企業をマッチング。
子育て中の女性の「働きたい」を応援する総合相談窓口。育児と仕事の両立についての悩み相談や職業紹介などの支援をワンストップで実施。
独立就農に必要な農業技術および経営に関する研修を実施(50歳以上の新規就農希望者が対象)。
創業に関する研修会・セミナーなどを開催しているほか、優れたビジネスプランを公募し創業する場合には助成金でサポートしている。
住まいの支援
住まい関連の支援制度には次のようなものがある。
子育て支援
前述した子育て支援制度のほかにも、山形県では次のようなサポートを実施している。
18歳未満の子どもがいる家庭、または妊婦のいる家庭を対象に交付。協賛店で提示すると割引などの特典が受けられる。
講習を受けたドライバーが、出産間近の妊婦の送迎や、乳幼児連れのお出かけをサポート。
母子世帯または父子世帯で、親が一時的に家事・育児ができない場合に、家庭生活支援員を派遣。
移住体験ツアー・セミナー情報はポータルサイトをチェック!
山形県への移住を検討する際は、移住体験ツアーや移住セミナーなどにも参加するのがおすすめ。
実際に現地に足を運ぶことで、その地域の雰囲気や魅力を肌で感じることができる。
山形県が実施している体験ツアー・セミナーに関する情報は、移住ポータルサイト「やまがた暮らし情報館」からチェック可能だ。
十人十色の山形暮らし|先輩移住者の体験談
移住のきっかけや移住後のライフスタイルは人それぞれ。ここでは、山形に移住を決意した3組の体験談を紹介する。
鳥海山を眺めながら、理想の田舎暮らしを満喫
出典:移住者インタビュー|at sakata
まず紹介するのは、千葉県から山形県酒田市に夫婦で移住した荒木良子さんだ。
10年以上前から地方移住を検討していたという荒木さん。酒田市に移住を決めたきっかけは、“直感”だったという。
鳥海山を眺めながら田んぼのあぜ道でコーヒーを飲んでいた際、その景色と空間の心地良さに心が動いたそうだ。
移住後は、窓辺で鳥海山と田んぼを眺めながら2~3時間が過ぎる日もあるほど、スローライフを満喫。
庭の花を摘んで生けたり、ドライフラワーでリースを作ったりと、何気ない日常を大切に過ごしている。
自給自足を目指して、人との関わりの中で豊かに生きる
出典:移住レポート|前略 つるおかに住みマス。
山形市出身の本間明さんは、祖父母が残した一軒家に住むため、鶴岡市に孫ターンした移住者だ。
大学卒業後は和歌山の税理士事務所で働いていたが、社会情勢の変化などをきっかけに、自給力を高める必要性を考えるようになったそう。
鶴岡市に移住してからは、農業や自然体験インストラクターなど、地域資源を生かすさまざまな取り組みに挑戦している。
将来的には、農業をやりながら、祖父母の家をお試し移住のためのゲストハウスとして活用することが夢だという。
“複業”スタイルを軸に、仕事で出会った仲間や地域の人々と関わり合いながら、自分らしい人生を謳歌している。
パウダースノーに魅せられて。家族でスキーを楽しむ暮らし
出典:移住者インタビュー|OBANENNEGA
スノーボードやスキー用の帽子を完全オーダーメイドで作っている会田さんは、令和3年8月に家族で尾花沢市への移住を実現した。
家族揃ってスキーやスノーボードが大好きなので、毎日スキーを楽しめる理想の居住場所をずっと探していたそう。
そんな中、尾花沢のパウダースノーに魅了され移住を決意。
現在はスキー場から徒歩1分の場所に住んでおり、子ども達は毎日学校が終わった後にスキーなどを楽しむ生活を送っている。
雪国ならではの大変さもあるが、ウィンタースポーツを愛する人にとっては非常に魅力的な環境が整っている尾花沢。「色んな人がここを目指して来てくれれば」と会田さんは語る。
移住先に選ぶならここ!山形県のおすすめ自治体5選
最後に、移住支援制度が充実している山形県のおすすめ自治体を5つ紹介する。
鶴岡市(つるおかし)
出典:前略 つるおかに住みマス。
日本有数の稲作地帯である鶴岡市は、国内で初めて「ユネスコ食文化創造都市」に認定された、豊かな食文化が息づくまち。学校給食発祥の地でもあり、食育事業への取り組みにも積極的だ。
宝島社の調査では、第11回住みたい田舎ベストランキングで総合部門・子育て部門で第4位にランクインした。
鶴岡市では、令和5年2月から出産・子育て応援金事業をスタート。妊婦ひとりにつき5万円、および生まれた子どもひとりにつき5万円を支給している。
市営住宅を活用したお試し住宅では、手頃な家賃で最長6ヶ月間リアルな鶴岡暮らしを体験可能だ。
酒田市(さかたし)
出典:at sakata
酒田市は、雄大な庄内平野を流れる最上川の河口に位置する港町だ。中心市街地から30分もあれば、海や山などの大自然にアクセスできる。
市内のどこからでも望める鳥海山や、稲の収穫期に黄金色に染まる庄内平野の美しさも見どころ。
酒田市では、移住して中古住宅または空き家を購入する場合、最大で25万円の補助が出る(中学生以下の子どもがいる場合は最大50万円)。
購入に伴って住宅を改修する場合も、20万円を上限として助成を受けられるので、マイホームを格安で手に入れたい方は要チェックだ。
酒田市では定期的に移住者交流会が開かれているほか、気軽に酒田ライフを体験できるお試し住宅もある。
天童市(てんどうし)
出典:山形県天童市移住ポータルサイト
東京から新幹線で約2時間40分、飛行機で約1時間と、都心へのアクセスが良好な天童市。
首都圏からの日帰り往復も可能なので、「テレワークメインだけど月に数回都内のオフィスに出社する」という方にもおすすめの移住先だ。
子育て支援が充実している天童市では、出産・子育て応援給付金として、妊娠・出産の届出時にそれぞれ5万円が給付されるほか、18歳まで子どもの医療費は無料。
小学校または中学校に入学した児童ひとりにつき10万円が支給されるエール天(10)という独自の取り組みなどもあり、安心して子育てできる環境が整っている。
寒河江市(さがえし)
出典:SAGAE
さくらんぼの産地としても有名な寒河江市。春・秋はトレッキング、夏は渓流釣りやキャンプ、秋は芋煮会など、季節に合わせたレジャーやイベントを楽しめるのが魅力のまちだ。
寒河江市の移住支援の中でとりわけ注目したいのが、I・Jターン世帯を対象とした運転免許取得補助だ。
運転免許取得費用やぺーパードライバー講習・雪道運転講習などの受講費用を、最大で15万円補助してもらえる。
車の運転に不慣れな場合や、雪道での運転に不安がある場合もしっかりサポートしてもらえるので安心だ。
市内には移住体験施設もあるので、まずはリアルな寒河江暮らしを体験してみてはいかがだろうか?
尾花沢市(おばなざわし)
出典:OBANENNEGA
「ウィンタースポーツを思い切り楽しみたい!」という方には、日本三雪の地にも数えられる尾花沢市がぴったり。
冬は除雪などの大変さもあるが、スキーなどの趣味を満喫するにはうってつけの環境が整っている。
尾花沢市では、満2歳未満の未就園児を対象に月額10,000円分/人の商品券を給付したり、未就学児の休日一時預かり事業を実施したりと、独自の子育て支援を提供している。
また、市内で住宅を新築する場合は最大で350万円の補助が受けられるので、夢のマイホームも実現しやすい。
山形県への移住で豊かなライフスタイルを手に入れよう!
山形県は、四季折々に表情を変える大自然の中で、豊かなライフスタイルを実現できる移住先だ。
県や各自治体ではさまざまな支援制度で移住者をサポートしているので、どのような制度があるのか事前にしっかりと把握しておこう。
移住体験ツアーや移住体験住宅なども活用しながら、山形移住の準備を進めてみてほしい。