移住に伴って「新たに農業家庭菜園をはじめてみたい」「田舎で自給自足生活に挑戦してみたい」と思う方は多いのではないだろうか。そのような方に注目されているのが、農地付きの空き家だ。
空き家と農地がセットになった物件で、すぐに家庭菜園や畑仕事をはじめられるのが魅力。この記事では、農地付き空き家の魅力や注意点に加え、推進している自治体を紹介する。
農地付き空き家とは
農地付き空き家とは、文字通り農地が付属している空き家だ。全国的に空き家が増えているなかで、空き家活用の推進や農山村地域への移住を促進する取り組みのひとつとして、農地付き空き家の提供が始まった。
地域再生計画を定めている市町村では、農地付き空き家を取得しやすくなっている。農地や既存住宅を取得するハードルが低くなり、農地と空き家を手に入れやすいのが特徴だ。
農地付き空き家に住むメリット・魅力
農地付き空き家に住む魅力は、以下の3つだ。
- 住宅と農地をセットで手に入れられる
- 農業や家庭菜園を始めやすい環境を得られる
- 農業に必要な設備が付いてくることもある
農地と住宅を同時に手に入れられることで、さまざまなメリットを期待できる。
住宅と農地をセットで手に入れられる
家庭菜園や畑を始める際、家の近所で農地を手に入れる必要がある。別々に取得する手間をかけず、農地付き空き家であれば両方を一緒に手に入れられるのがメリットだ。
セットで入手できることで、費用も比較的抑えやすい。まとめて取得して浮いたお金を農地の手入れに活用したり、育てる作物の種苗を購入するなど、選択肢が増えるだろう。
農業や家庭菜園を始めやすい環境を得られる
空き家を取得してから、農業や家庭菜園をするための土地を確保する際、元々田畑ではない土地で始めようとすると、一から耕し、土壌を改良するなど、非常に手間がかかる。
農地付き空き家であれば、その心配はない。農地が既に備わっているので、農業や家庭菜園を始めやすい環境を得ることができる。憧れのスローライフを実現しやすくなるのが魅力だ。
農業に必要な設備が付いてくることもある
物件によっては、農地に加えて農機具や物置などが付属していることもある。なぜなら、物件とともに道具も一緒に譲りたい空き家登録者が多いからだ。
基本的に設備は自費で揃える必要があるが、設備が既に整っていればコストを抑えられて、すぐに本格的な農作業ができるようになる。
農地付き空き家を利用する際のデメリット・注意点
農地付き空き家は、家庭菜園や畑仕事を始めたい方にとっては見逃せない物件だ。ただ、取得するために条件があったり、別途費用がかかったりするなど、いくつかの注意点がある。3つのデメリット・注意点を解説していく。
- 条件が定められている
- 別途費用がかかる場合がある
- 農地の手入れ・管理が必要
条件が定められている
農地付き空き家を取得するためには、自治体で定めている条件を満たす必要がある。例えば、後述する新潟県十日町市(とおかまちし)では、以下の条件を定めている。
引用元:農地付き空き家制度|十日町市
- 十日町市空き家バンクに登録されている家屋と農地をセットで売買すること
- 空き家の所有者等が所有している農地であること
- 農地の全てを効率的に利用して耕作を行うこと
- 取得希望者又はその世帯員等が農作業に常時従事すること
- 周辺農地の効率的かつ総合的な利用の確保に支障がないこと
上記の条件を参考にすると、取得したものの農地を使わないとなれば、農地付き空き家は取得できないことになる。自治体ごとに条件が定められているので、取得を検討する際はHPを確認しよう。
別途費用がかかる場合がある
無料で譲渡される物件もあるが、税金や登記などの維持費用が発生する。維持費用を含む予算を計算し、余裕を持って取得するのがおすすめだ。
物件の状態によっては、リフォームやリノベーションが必要になることもある。追加の費用がかかってしまうため、状態の確認も欠かさずに行おう。
農地の手入れ・管理が必要
農地付き空き家で暮らすうえで、農地の手入れや管理は欠かせない。手入れが行き届かないと、雑草が伸び放題になったり外観を損ねたりするなど、悪影響を及ぼすだろう。
農地そのものはもちろん、害虫や害獣の対策も必要だ。場合によっては設備を用意する必要もあり、追加費用が発生する可能性がある。
農地付き空き家を見つける方法
メリットとデメリットを理解したら、物件探しを始めよう。農地付き空き家は、以下の方法で探すことができる。それぞれの特徴を押さえていこう。
- 空き家バンク
- 不動産ポータルサイト
空き家バンクで検索する
農地付き空き家を取得する条件として、空き家バンクの利用を義務付けている場合が多い。空き家バンクとは、空き家の登録者と利用を希望する人をマッチングするサービスだ。
条件を指定して検索することもでき、農地付き空き家を探しやすい。その他の条件も加えれば、より希望に合った物件を見つけられるだろう。
不動産ポータルサイトで条件を入れて検索する
不動産ポータルサイトのなかには、空き家バンクと連携しているサイトもある。ポータルサイトは各サイトを横断して検索できるため、条件に合った物件をまとめて見つけられる。
市町村や物件の特徴などから比較しやすく、自分に合う農地付き空き家を探すことができる。
農地付き空き家を推進している5つの自治体
農地付き空き家を推進している自治体が多くある。そのなかでも、特におすすめしたいのが、以下5つの自治体だ。
- 【茨城県】下妻市(しもつまし)
- 【栃木県】大田原市(おおたわらし)
- 【新潟県】十日町市(とおかまちし)
- 【兵庫県】西脇市(にしわきし)
- 【島根県】雲南市(うんなんし)
自治体の特徴や、農地付き空き家に関する取り組みをチェックしていこう。
【茨城県】下妻市(しもつまし)
出典:住マイルしもつま
下妻市は、茨城県の南西部にあるまち。海から50km以上離れた地域によって、内陸型の温暖な気候となっている。
畜産や農業が盛ん。なかでも養豚は特に盛んで、市内には精肉店が多く、美味しい豚肉が身近にある。農業では、きれいな水や恵まれた土地・気候を活かし、梨や米が多く作られている。
空き家の利活用や移住定住の促進などを目的に、令和3年8月から農地付き空き家の提供をスタート。購入はもちろん、賃貸にも対応している。
【栃木県】大田原市(おおたわらし)
出典:大田原市|移住・定住促進
大田原市は、栃木県の北東部に位置している。多くの鮎が漁獲される那珂川、八溝山系の山々など、豊かな自然に恵まれたまちだ。
首都圏の食料基地として、野菜や果物などが多く生産され、畜産では和牛や乳牛なども盛んに飼育されている。
農地付き空き家は、担い手不足を解消するために取り扱いしている。市内全域で農地の取得面積を緩和しているため、希望する空き家を取得しやすい。
【新潟県】十日町市(とおかまちし)
出典:I’m home! Tokamachi
十日町市は、新潟県南部に位置するまちだ。東京から上越新幹線と北越急行を乗り継いで約2時間とアクセスが良く、ちょうど良い田舎暮らしを楽しめる。
また、この地域は日本の原風景が多く残っており、世界最大級のアートフェスティバル「大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ」が開催される。多くの人を魅了している芸術祭のある暮らしができるのが特徴だ。
農地付き空き家については、令和4年5月1日から売買できる農地の下限面積を引き下げている。
これにより、空き家バンクに登録された家屋に付随した農地について、10平方メートルから売買でき、農地付き空き家の取得がしやすくなった。
【兵庫県】西脇市(にしわきし)
出典:移住・定住|西脇市
西脇市は、兵庫県の中央部に位置している。山々や川に囲まれ、恵まれた自然の中で四季を感じながら生活できるまちだ。
大阪・神戸まで車で約1時間のアクセスで、都会への交通の便にも恵まれている。
西脇市では、令和元年7月から空き家バンクに登録された空き家とセットになった農地について、下限面積を1平方メートルに引き下げた。
新規就農希望者の移住・定住や使用されていない農地の解消を促進している。
【島根県】雲南市(うんなんし)
出典:ほっこり雲南定住サイト
雲南市は、島根県の東部に位置するまちだ。中国山地の山麓に位置し、まちの中心を斐伊川(ひいかわ)が流れている。松江市、出雲市に隣接しているため、交通や経済のつながりが密接だ。
雲南市の農業を見てみると、有機農業が盛んで、安全かつ新鮮な農作物が生産されている。
また、雲南市は、農地付き空き家制度をはじめて導入した自治体といわれている。
先駆けとなり、新規就農者や移住・定住者の促進を活発に行ってきた。特例を設けているため、農地を取得しやすい制度を整えている。
農地付き空き家で理想の田舎暮らしをはじめてみよう
農地付き空き家は、農地と住宅を一緒に手に入れられる物件だ。物件によっては、農機具や納屋などがついていることもあり、コストや手間を抑えて家庭菜園や畑仕事を始められる。
物件探しには、空き家バンクや不動産ポータルサイトが便利だ。住んでみたい市町村や農地の状態などを参考にして、自分に合った農地付き空き家で理想の田舎暮らしをスタートさせよう。