地方移住の選択肢のひとつに、地域おこし協力隊として移住をするというものがある。この場合、就業に関する不安を少なくして移住ができる。
ただし、移住と就業がセットになっていることが大半なため、応募に制限がかかっている場合も少なくない。
この記事では、地域おこし協力隊について解説するとともに、募集要項で多く見られる内容や、地域おこし協力隊のメリット・デメリット、さらに求人募集サイト3つを紹介する。
地域おこし協力隊とは?
ご存知の通り、日本では東京をはじめとした大都市圏に人口が集中し続けている。
その理由のひとつに、「地方では希望の職がない」「産業が十分に育っていない」というケースがある。
こうした問題を解決するのが、地域おこし協力隊である。
地域おこし協力隊は、国が支援している地方活性化事業のひとつだ。
一定年齢以下の若年者が、過疎化が問題となっている地方に移住して創業、あるいは事業継承を行いながら、地域の産業を活性化していくことを目標としている。
各市町村によって求められる産業や事業が異なるため、待遇・職種は地域によってさまざまだ。
自分の望む働き方の実現を目指して地方移住する際に、検討したい施策と言えるだろう。
地域おこし協力隊の募集要項
地域おこし協力隊の募集要項は市町村によって異なる。しかし、基本的にはどこであっても似たような内容となっている。
以下に、代表的な募集要項の一部を提示する。
現在別の市町村に住んでいる
地域おこし協力隊として働くためには、「移住する」ことが求められる。そのため、必然的に現在は別の市町村に住んでいなくてはならない。
年齢制限
多くの地域おこし協力隊の募集要項には、年齢の下限と上限が設定されている。
下限は18歳、ないし20歳程度のことが一般的だ。上限は30歳、35歳、40歳など、区切りの良い年齢になっていることが多い。
下限設定には、少なくとも高校卒業程度の学力、社会性が求められるほか、成人として自分の就業に責任を持つという意味合いもあるだろう。
また、“長期的に地域社会を活性化するため”という観点から、年齢の上限が設定されている。
制度への理解
地域おこし協力隊は、単なる就職や移住とは異なり、その地域の産業を再興するという側面が重要である。
そのため、いくつかの「守るべきルール」が設定されているケースが少なくない。
これらをあらかじめ理解したうえで、地域おこし協力隊として参加できるかどうかを判断する必要がある。
なかでも多く見受けられるのが「最低1年間は勤続する」など、就業に対して制限を設けているケースである。
事業継承型の場合、短期で離職してしまっては事業継承につながらない。自己都合での中途退職のハードルが高い点には、留意しておこう。
社会性
地方のなかには、近隣住民との距離感が非常に密な市町村も存在している。
都会ではほとんど起こらないような隣人間のコミュニケーションや、地域社会を円滑に回すための年中行事があることも珍しくない。
こうした地方が持つ風土に、自らの考え方を合わせていけるだけの社会性は必要不可欠である。
地方公務員法の順守
地域おこし協力隊は総務省管轄の国家事業であり、立場は地方公務員法に基づく地方公務員となる。
応募時には、地方公務員法第16条に規定された「欠格事項」に該当しないことが求められる。
具体的には、以下のいずれにも該当しない必要がある。
・禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終わるまで又はその執行を受けることがなくなるまでの者
引用:地方公務員法第16条の欠格条項|目黒区
・当該地方公共団体において懲戒免職の処分を受け、当該処分の日から二年を経過しない者
・人事委員会又は公平委員会の委員の職にあって、同法第六十条から六十三条までに規定する罪を犯し刑に処せられた者
・日本国憲法施行の日以後において、日本国憲法又はその下に成立した政府を暴力で破壊することを主張する政党その他の団体を結成し、又はこれに加入した者
・平成11年改正前の民法の規定による準禁治産の宣告を受けている者(心神耗弱を原因とするもの以外)
地域おこし協力隊のメリット・デメリット
地域おこし協力隊に参加するメリット、デメリットには、以下のようなものがある。
【メリット1】地域社会のためになる
何より、地域おこし協力隊は地域社会のためになる。
地域おこし協力隊としての募集要項のなかには、地方移住を考えているなら必要な事項も多く含まれている。
単に地方移住を検討しているのであれば、地域おこし協力隊への参加を考えるのも良いのではないだろうか。
【メリット2】新しい働き方ができる
地域おこし協力隊の大きなメリットは、新しい働き方を生み出せるという点にある。
特に創業型であれば、自分で考えた事業をうまくサイクルさせるためにさまざまな課題に向き合わなければいけなくなる。
こうしたとき、その地域で生きてきた先人たちの知恵や、そこでできているコミュニティが、問題解決に大きく役立つだろう。
【デメリット1】居住・就業が制限される
地域おこし協力隊は、その市町村に住み、仕事をすることが求められる。そのため、必ずしも生活のすべてを自由には決められない。
また、継続就業年数も決まっているため、途中で投げ出すことも容易ではない。
【デメリット2】地域に馴染めないと苦しい思いをすることも
地域社会ではコミュニティが形成されている。
地域おこし協力隊は、すでにできあがったコミュニティに自ら飛び込んでいく必要があるため、「自分」という存在を受け入れてもらえないと、生活そのものが苦しくなる。
地域社会に馴染むための社会性や、人から認めてもらえるように頑張る姿勢などが求められるだろう。
地域おこし協力隊募集サイト3選
地域おこし協力隊として地方創生に参加したいと考える人におすすめのサイトは、以下の3つだ。
地域おこし協力隊| ニッポン移住・交流ナビ JOIN
出典:地域おこし協力隊| ニッポン移住・交流ナビ JOIN
ニッポン移住・交流ナビJOINのおすすめポイントは、「隊員インタビュー」や「隊員たちの日常」といった、先輩隊員たちのリアルな様子を知れるという点だ。
具体的にどのような生活を送っているかを想像しやすくなるため、「自分だったらこういうことができるかもしれない」とイメージが膨らみやすい。
地域おこし隊員を募集している市町村を幅広く検索できる点もおすすめである。
地域おこし協力隊の募集一覧|移住スカウトサービス SMOUT
出典:地域おこし協力隊の募集一覧|移住スカウトサービス SMOUT
移住スカウトサービスSMOUTは、フリーキーワードからプロジェクト検索が可能である。
具体的な移住希望先は決まっていないものの、やりたいことがあるという人におすすめのサイトだ。
また、地域おこし協力隊以外にも、地方での体験イベントや、地方移住に向けた情報収集などの紹介もあるので、地方移住に興味がある人にはぜひおすすめしたい。
LIFULL 地方創生
出典:LIFULL 地方創生
LIFULL地方創生では、就職という観点から地域おこし協力隊を募集している地方自治体を探すことができる。
都道府県による絞り込みはもちろんのこと、地域の特性として「海」「山」「温泉」などのキーワードから、自分が希望する風土を選びやすくなっているのが特徴だ。
他のサイトに比べて写真が多い傾向にあるのも、うれしいポイントである。
地域おこし協力隊|自分に合った働き方で地域社会に貢献しよう
地域おこし協力隊は、一定の安定した給与をもらいながら地方移住ができるという点から、移住を考えるときの選択肢としてはメリットが大きい。
「地方のためになる」のはもちろんだが、自己実現達成に向けても、地域おこし協力隊への参加は理想的だろう。
反面、地方公務員としての任用期間が決まっているため、自分の一存だけで勝手にやめることはできないという点に注意が必要だ。
デメリットも理解したうえで、よりよい地方移住のために、地域おこし協力隊への参画も検討してみよう。