異国情緒があふれるまちや、自然に囲まれた田舎などいろいろな顔のある長崎県。
今回は長崎県への移住を検討している人に向けて、県が用意している移住支援制度の内容や、長崎県内でおすすめの移住エリアを紹介する。
移住者が年々増加傾向の長崎には、どのような魅力があるのか見ていこう。
長崎県の基本情報
まずは九州の長崎県がどのような場所なのか、簡単に紹介する。
地理
長崎県は九州地方の西北部にある県だ。県の面積は約4,100平方キロメートルで、その約半分が島々である。陸地は山岳、丘陵が起伏しており平地が少ない。
県内には離島や半島が多くあり、島の数は無人島を含めて全部で594ある。東京までは直線距離で約960キロメートル。朝鮮半島や中国など東南アジアの国に近い。
人口
2022年9月現在の長崎県の総人口は1,283,569人、世帯数は558,415世帯だ。総人口のうちの約115万人は市部に集中する。
気候
長崎県は南北に長い地形で離島や山岳地帯もあり、地域によって気候の特徴が変わる。人口が多く集まる長崎市の平均気温は約17度。年間降水量は約2,000ミリメートル前後だが、雲仙・多良岳・国見岳周辺は多雨地域と呼ばれ降水量も多い。
産業
長崎県の産業は、農業・漁業・工業などだ。
- 農業:肉用牛、ビワ、じゃがいもなど
- 漁業:沿岸漁業や養殖漁業が盛ん
- 工業:造船、電気部品、水産加工品など
ほかにも、長崎県内にはユニークなお祭りや、世界遺産に登録された文化財や史跡があり訪れる観光客も多いことから、観光業も盛んだ。
長崎へのIターンやUターン希望者が増えている
「移住」というキーワードがここ数年注目されているが、長崎県へIターン、またはUターンする人たちの人数が増えている。
統計が残る2016年の移住者数が500人に満たなかったのに対し、2021年度は約1,700人が長崎県に移住している。
移住者数の割合はUターンが約6割、Iターンが約4割。どちらも同じ九州地方の福岡からの移住者が多い。また、関東地方や大阪などの都市部から移住してくる人もいる。
長崎への移住者数の年齢を見てみると、特に40代以下の若者世代が長崎へ移り住む割合が多い。子育て世代も含まれるため、長崎県では子育て支援の取り組みにも力を入れる。
移住者数が右肩上がりに増えている長崎県は、移住を考えている人にとって注目したい県のひとつだ。
参考:データと数字で知る長崎|ながさき移住ナビ
参考:長崎県への移住 最多1740人 2021年度 コロナ禍の地方回帰など要因|長崎新聞
長崎県の主な移住支援制度6つ
出典:ながさき移住ナビ
移住者数が増加している長崎県は移住者に対してどのような支援をしているのか、見ていこう。
就業・創業する人へ移住支援金の交付
東京23区に在住または通勤している人で、長崎県へ移住後就職または創業を考えている人に移住支援事業を実施している。
対象は、県が運営する県内就職応援サイトの「Nなび」に掲載されている支援対象求人の企業に就職した人、または県の地域産業雇用創出チャレンジ支援事業において、創業支援金の交付決定を受けた人だ。
支給対象者の範囲は専門人材やテレワーカー、移住先の地域に移住前から深くかかわっていた人へも広がっている。
移住支援金は単身の場合は60万円、世帯の場合100万円※。詳細は長崎県の移住支援公式サイト「ながさき移住ナビ」を確認しよう。
※2023年度4月より1世帯につき最大100万円の支給に加え、18歳未満の子どもに対する支援金がひとりあたり最大30万円から100万円に加算される予定
「ながさき移住倶楽部」での情報発信
「ながさき移住倶楽部」という会員制度をご存知だろうか。これは県外に住んでいて長崎県への移住に関心がある人なら誰でも無料で入会できる制度だ。
ながさき移住倶楽部の会員になるとさまざまな割引が適用される。
レンタカー料金の割引、引っ越し料金の割引、リフォームや新築に関する工事費の割引、電力会社の応援プランなど、12の特典と期間限定で長崎県の離島への航空運賃割引が受けられる。
また、長崎への移住についていつでも相談できたり、移住に向けて役立つ情報などを受けられたりするので、長崎への移住を検討中なら無料会員になるのも良いだろう。
起業・事業承継のサポート
移住先での仕事を探す選択肢はいろいろあるが、その中に
- 起業
- 事業継承
の2つもある。起業とは移住先で新しく事業を起こすこと、そして事業継承とは移住先にある企業の経営の後継者となることだ。
長崎県でも
- 長崎県信用保証協会
- 新産業創造課
- 波佐見空き工房バンク
- 後継者バンク
など、さまざまな形で起業や事業継承を目指す移住者を支援している。
農林水産業への就業支援
長崎で農林水産業にチャレンジしてみたいという人は、「ながさき移住ナビ」の中に詳細がある。
農業を始めるなら、長崎県新規就農相談センターへ相談すると良いだろう。オンラインでも相談会を行っている。
漁業を目指したいなら、「ながさき漁業伝習所」が、段階に応じた研修を用意しサポートしてくれる。
もし長崎県内の農産村地域へ移住を検討しているなら、お試し移住ができる。農山村集落で実際に移住体験をしてみると移住の際のイメージが湧きやすい。
空き家バンク・お試し暮らし
長崎県で移住後の住まいを探すなら、市町の空き家バンクを見てみよう。県内の多くの地域で空き家バンクの情報を提供している。
空き家バンクなら、空き家を無償で譲渡してもらえたり、安い価格で家が買えたりする。
空き家バンクの案内は移住相談員が一緒に同行してくれるので、その後の移住までがスムーズに進むメリットがある。
長崎県の一部の地域では、市町にある住宅に移住前にお試し暮らしができる。
例えば島原市では、主要観光地になっている武家屋敷の通りに面した物件をお試し住宅として開放。3日以上14日以内なら、実際に住宅で暮らして周辺地域のことを知ることができる。
こうした空き家バンクやお試し暮らしを上手に利用しながら移住先での生活をしていこう。
子育て支援
子連れ移住を考えている人にとっては、移住先の子育て支援は重要な項目だろう。長崎県の子育て支援の内容は自治体によっても異なる。
例えば長崎市の場合、県外から移住し長崎県で就職や創業などをする子育て世帯へ35万円の補助金が支給される「長崎市子育てウェルカム補助金」がある。
雲仙市では小学校・中学校に入学する子どもたちの保護者に経済的理由がある場合、学用品の費用負担や、結婚・出産して雲仙市内に定住する家族へ赤ちゃん支援金などがある。
このように、長崎県では自治体によってさまざまな子育て支援を行っている。
長崎県|移住におすすめの市町村(自治体)7選
最後に、長崎県へ移住する際におすすめの自治体を7つ紹介しよう。
長崎市(ながさきし)
出典:ながさき人になろう
長崎県の中で人口がいちばん多い長崎市(ながさきし)。年間平均気温は約17度で、台風や積雪の影響はあまりない。
長崎市は海と山に囲まれている。市内中心部から車で1時間程度行けば自然を満喫できる場所がある。
おまつりやイベントが週末どこかのエリアで開催されていて、市内はいつも賑やかだ。グラバー園、軍艦島、大浦天主堂などの名所や史跡も多い。
市内全域に大容量高速データ通信が整備されていて、どこにいても快適にネットを使用できる。
長崎市は子育て世代を中心に、長崎市へ移住する人へのサポートや支援などを行っている。
主な支援策は
- 移住希望者が市内で宿泊する際の割引制度
- 市内を巡る際に利用するレンタカー無料貸し出し
- 東京23区内から長崎市へ移住する際の補助金制度
- 長崎市子育てウェルカム補助金
- 空き家・空き家情報バンク
など。
長崎市へ移住を検討する人たちへの支援を行うながさき移住ウェルカムプラザでは定期的にオンラインでの暮らし説明会や、就職個別相談会なども行っている。
大村市(おおむらし)
出典:おおむらくらしのおおくらさん
九州の北西部にある大村市(おおむらし)には、約97,000人が暮らしている。
市内には国内と東アジアの国々を結ぶ長崎空港があり、2022年に九州新幹線西九州ルートが開業し、これからも人口増加が期待できる。
新幹線の新駅を利用すれば、東京や大阪などの大都市へも2時間以内でアクセス可能。長崎市や佐世保市へも1時間以内で行けるので、仕事や遊びの幅が広がる。
市内にある多良岳山系はさまざまな農作物が育てられ、大村湾では海の幸が水揚げされ、新鮮な地元の海の幸や山の幸が食卓に並ぶ。
大村市は子育て世代へのサポートも充実。
- 交流スペース「おむらんど」
- 第2子保育料軽減
- 一時預かり事業
- ふるさとのこころをはぐくむ絵本事業
- 夜間初期診療センター
など、親も子どもも安心して過ごせる制度が整う。
また、大村市で新規就農する場合のサポートや創業塾、3世代同居や近居の場合の住宅経費の助成、お試し住宅など暮らしや住まいのサポートもある。
大村市の移住で不明な点は移住コーディネーターに相談できる。
佐世保市(させぼし)
出典:佐世保移住サポートサイト 99life
アメリカの文化と独自の文化が融合する町、佐世保市(させぼし)。米海軍基地のレシピを元にした、佐世保バーガーやレモンステーキなど独自の食文化も存在する。
佐世保市の中心部は商業施設や官公庁など、日常生活するうえで必要なものや機能が揃う。その一方で田舎暮らしをしたい人におすすめのエリアもある。
休みの日に渡ってマリンスポーツや無人島ツアーが楽しめる島もあり、大自然を満喫できる。
佐世保市へ移住するなら「西九州させぼ移住サポートプラザ」へ相談してみよう。この施設では、移住に関連する部署と連携をして移住者が持つ不安を取り除くさまざまなサポートを行う。
佐世保市の移住支援は
- 空き家等改修補助事業
- 住宅新築、購入助成金
- 賃貸住宅入居支援助成金
- 子育て世代移住応援助成金
- 創業促進補助金
- 新卒移住応援助成金
など、手厚い支援が魅力だ。
支援金や補助金だけではなく、市内散策のための電動アシスト自転車レンタル、お試し住宅、モバイルWi-Fi貸し出し、プラザ職員による移住体験ツアーなどのサポートもあり、移住に力を入れているのが分かる。
西九州させぼ移住サポートプラザでは、オンライン移住相談も実施。平日・土日共に面談が可能だ。
諫早市(いさはやし)
出典:諌早市移住定住パンフレット「諫早くらし 〜カラフルなヒト・コトが集うまち〜」
7つの市町が合併して誕生した諫早市(いさはやし)は、長崎県のほぼ中央にある市だ。有明海、大村湾、橘湾の、3つの海に面していて、新鮮な海の幸が手ごろな価格で手に入る。
都会と田舎がちょうどよく交わっていて、シティライフと自然と両方楽しめるのが特徴。佐賀県の県境にある多良岳では登山や山のグルメが楽しめる。
諫早市には有名企業の工場や工業団地があり、雇用が多いのも特徴だ。2022年には新幹線も開通し、駅周辺の再開発も進む。
そんな諫早市の移住支援は
- 中小企業創業支援資金
- 新規就農相談
- 空き家バンク
- 住宅性能向上リフレッシュ事業
- 小中学生の子どもの医療費助成
- 多子世帯の保育料軽減
- 子育て支援センター
など、住まい・仕事・子育てと支援がバランスよく整っている。
五島市(ごとうし)
出典:住んでみらんかな 五島やけんよか!
11の有人島と52の無人島で構成されている五島市(ごとうし)は、長崎港から出ている高速船に乗った先にある島々だ。
島の中には空港もあり福岡まで約40分で行くことができる。大型スーパーやドラッグストアなどもあり、医療施設や教育環境も充実していて、安心して暮らせる街として注目されている。
五島市の平均気温は約17度と、冬は暖かく夏は涼しい気候が特徴だ。島にはキリシタン文化が残る集落がある。
また、島に古くから伝わる祭りも多く、他では見られないユニークな祭りが島を盛り上げる。
五島市は国際トライアスロン大会が開かれるなどスポーツも盛んだ。四方を海に囲まれた島なのでマリンスポーツを楽しむ人も多い。
2000年に五島市へ移住した人は約200人。その8割が30代以下と若い世代の移住が目立つ。
五島市の主な移住支援制度は、
- 空き家バンク、空き家リフォーム助成
- 子育て世帯引っ越し助成
- 18歳までの医療費助成
- 移住先での就職活動の面接旅費助成
- 短期滞在住宅
- 東京圏からの移住者支援
など。島への移住を検討するなら、五島市UIターン相談窓口に相談しよう。
雲仙市(うんぜんし)
出典:雲仙市移住・定住・婚活支援サイト
島原半島にある雲仙市(うんぜんし)は、日本初の国定公園や異なる泉質が楽しめる温泉郷、山や海など見どころがたくさんあるエリアだ。
雲仙市の年間平均気温は約17度。寒暖差は少なく1年を通じて穏やかな気候が続く。各地に温泉が湧いていて、温泉の場所によって泉質が異なる。
海を見ながらお湯に浸かれる温泉や避暑地にある温泉など、温泉好きにはたまらない環境だ。
雲仙市内の温泉街にある宿泊施設は、テレワークやワーケーションに対応できるよう環境が整備されている。
コワーキングスペースなども新設するなど、移住者を受け入れる準備を積極的に行っている。
雲仙市は住まいに関する移住支援が充実していて、雲仙市若者UIターン家賃補助金や空き家マッチング制度、雲仙市お試し住宅の設置などをしている。
雲仙市の移住支援はほかに
- 結婚、定住支援金
- 農業研修者への支援
- 新規就農者支援
- 漁業研修者への支援
- 子育て応援住宅支援
- 就学援助(新入学用品の支給)
などいろいろな支援がある。未婚の移住者に対して結婚応援事業も行うというのは、ほかではあまり見かけないユニークな移住支援内容だ。
壱岐市(いきし)
出典:いきしまぐらし
壱岐市(いきし)は福岡の博多港から出る高速船が就航しており、福岡へのアクセスが良いことから移住者が増加傾向にある市だ。
九州北部の玄海灘沖にある島で、福岡までは約1時間で行くことができる。
島を囲むのはコバルトブルーの海。時間によってはエメラルドグリーンへと変わり美しい景色が自慢だ。
島の近くには岩礁地帯があり、アワビやウニが獲れるほか、イカ漁やブリ・マグロ業が盛ん。温暖な島の気候は農業や畜産業にも適している。
壱岐市は、島ならではののんびりと温かい雰囲気に包まれている。地域の人たちは子どもに優しく、近隣の人を気にかけている。
幼稚園や保育所、学校もあり学習環境は充実していて、離島の学校へ留学する児童や生徒にはホームステイ費用を補助してもらえる制度もある。
壱岐市ではインターネット回線の工場にも取り組んでいて、テレワークができる環境も整っている。
壱岐市の移住支援は
- 乳幼児福祉医療費制度
- 出産祝い金
- 漁業就業者実践研修や短期漁業研修
- 市内の企業情報紹介
- 空き家バンク
- UIターン希望者の短期滞在費補助
- 移住費用補助
など、移住者を積極的に受け入れる制度を整えている。
移住者に人気の長崎県で移住ライフを楽しもう
移住者数が右肩上がりに増えているというデータがある長崎県。移住者数の増加とともに、各自治体では移住者受け入れに力を入れている。
さまざまな魅力があり、移住した人が済みやすさを実感する長崎県をぜひ移住検討先のひとつに入れてみてほしい。