五島列島は、長崎県のなかでも特に移住者が多い離島。移住人気が高い理由には、豊かな自然や美味しい食べ物など多くの魅力があるからだ。また、支援制度も充実しているため移住後の島暮らしをスムーズにはじめやすい。この記事では五島市の基本情報や島の魅力、移住支援制度の内容まで詳しく解説する。
長崎県五島市の基本情報
移住の情報を集める前に、五島市がどのようなところか押さえていこう。人口や面積などの概要をはじめ、これまでの移住者のデータを紹介する。
概要
五島市は、五島列島の最南端に位置している。11の有人島と52の無人島で成り立ち、九州地方西部の海に浮かんでいる島々だ。
五島市の概要は、以下の通りである。
- 人口:36,278人
- 面積:408.15km
- 人口密度:89人/1km²
- 事業所数:2,322件 ※2021年時点
- 病院:4院 ※2021年時点
- 診療所:41院 ※2021年時点
- 小学校:14校 ※2021年時点
- 中学校:11校 ※2021年時点
- 高校:4校 ※2021年時点
- 保育園:16園 ※2021年時点
- 幼稚園:3園 ※2021年時点
- 認定こども園:5園 ※2021年時点
参考元:五島市とは五島市移住定住促進サイト|「五島やけんよか!」
11の有人島がある
五島市には、比較的大きな福江島、久賀島、奈留島、椛島を含む、11の有人島がある。最も面積が大きく、人口が多いのが福江島だ。
福江島は、福江地区、富江地区、岐宿地区、三井楽地区、玉之浦地区に分かれ、久賀島、奈留島、椛島を含めると8つのエリアに分類できる。
福江地区は、福江港ターミナルや五島つばき空港があり、五島市の玄関口。学校やスーパーなど必要な施設が揃っているため、暮らしやすいエリアと言える。
富江地区は、福江地区に次ぐ人口の多いエリア。商店街があり、スーパーや病院等もそろっている。岐宿地区は、福江島で最も面積が広く、ほどよく市街地から離れた自然豊かなエリアだ。
その他のエリアについては、下記の表を参考にしてみよう。
福江地区 | 富江地区 | 岐宿地区 | 三井楽地区 | 玉之浦地区 | 久賀島 | 奈留島 | 椛島 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
スーパー | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 |
コンビニ | 〇 | 〇 | 〇 | × | × | × | × | × |
ガソリンスタンド | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | × |
郵便局 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 |
銀行 | 〇 | 〇 | × | × | × | × | × | × |
病院 | 〇 | 〇 | × | × | × | × | × | × |
診療所 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 |
保育園 | 〇 | × | 〇 | × | 〇 | × | 〇 | × |
幼稚園 | 〇 | × | × | × | × | × | × | × |
こども園 | 〇 | 〇 | × | 〇 | × | × | × | × |
小学校 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | × |
中学校 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | × |
高校 | 〇 | × | 〇 | × | × | × | 〇 | × |
児童クラブ | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | × | 〇 | × |
移住者のデータ
五島市には、令和元年度に115世帯223人、令和2年度に112世帯204人が移住しており、長崎県内でトップクラスの移住者数である。
令和2年における家族構成や年代別のデータは、以下の通り。
【家族構成】
単身:57%
2人:18%
3人:14%
4人:6%
5人:5%
【年代別】
20歳未満:25%
20代:26%
30代:26%
40代:9%
50代:7%
60代以上:6%
どちらのデータも幅広いため、家族構成や年代に関わらず、移住しやすい島と言えるだろう。
平成28年度から令和2年度までのデータで、定着率は80.2%。ほとんどの移住者が住み続けているので、住みやすい島と考えることができる。
参考元:移住者|五島市移住定住促進サイト「五島やけんよか!」
五島列島五島市の魅力|移住したくなる5つの理由
五島市の魅力は、以下の5つである。
- 自然に恵まれている
- 美味しい食材がいっぱい
- 病院やスーパーなど施設が充実している
- 主要都市との交通アクセスが良い
- 自然災害が少ない
移住したくなる五島市の魅力をチェックしていこう。
自然に恵まれている
五島列島には、離島ならではの手つかずの自然が多く残っている。特に、周囲に広がる海は魅力のひとつで、休日に海水浴やマリンアクティビティを楽しめる。
海を一望できる展望台や公園などビュースポットも多く、雄大な海を眺めるのもおすすめだ。
美味しい食材がいっぱい
五島列島の周囲には恵まれた海流があり、海の生き物が育まれている。ブリやマグロ、サバなど、季節それぞれの魚が水揚げされている。
長年の努力でつくりあげた霜降り和牛「五島牛」、温暖な気候で育てられた農作物も有名で、質の高い食材は「五島ブランド」と呼ばれるほどだ。
美味しい食材が身近にあり、食卓を華やかに彩ってくれるだろう。
病院やスーパーなど施設が充実している
地区によって、有無や数に違いはあるものの、病院やスーパーなど生活に欠かせない施設が充実している。
大型スーパーやドラッグストア、ホームセンターなどが揃い、島から出ることなく、大半のものを購入できる。
病院や学校なども中心部に整備されている。中心部から離れるほど、施設の数は減る傾向があるので、暮らしやすさを重視する場合は中心部への移住がおすすめだ。
主要都市との交通アクセスが良い
五島市は、福江地区にある福江港ターミナルと五島つばき空港で、各所へと移動できる。
長崎空港や福岡空港での乗り継ぎは必要だが、スムーズに移動できれば、羽田空港まで約3時間でアクセス可能。
離島生活をしながらも、必要なときに島外に移動しやすいのは大きなメリットである。
主な都市へのアクセスは、以下の通り。
- 長崎:ジェットフォイルで約1時間25分、フェリーで約3時間10分
- 福岡:飛行機で約40分、フェリーで約8時間30分
- 大阪:長崎空港もしくは福岡空港での飛行機乗り継ぎで約1時間55分
- 名古屋:長崎空港もしくは福岡空港での飛行機乗り継ぎで約2時間
- 東京:長崎空港もしくは福岡空港での飛行機乗り継ぎで約2時間30分
参考元:交通アクセス|五島市移住定住促進サイト「五島やけんよか!」
自然災害が少ない
五島市は、比較的自然災害が少ない地域である。台風は発生するものの、大きな被害がでることはほとんどない。
地震もかなり少なく、最近100年間の記録では、震度1や震度2がほとんどで、89回しか地震が起きていないのも特徴。
五島列島五島市が実施している移住支援制度とサポート情報
五島市では、移住支援制度やサポート体制が充実している。住まい、仕事、子育てなど幅広い支援が整っているため、さまざまなニーズに対応しているのが特色だ。
ここでは、住まい、仕事、子育ての3つに分けて主な制度を紹介する。
住まいの支援
住まいに関する主な支援は、以下の4つ。
- 空き家バンク
- 短期滞在住宅
- 結婚新生活支援事業
- 3世代で同居・近居促進事業
空き家バンク
所有者から空き家を提供してもらい、希望者とのマッチングを行っている。
五島市移住定住促進サイト「五島やけんよか!」では、賃貸または購入、地区、テーマ(海が近いなど)、価格帯で空き家の検索が可能。
内見を希望する場合は、希望日の5日前までに予約フォームからの予約が必要になる。
短期滞在住宅
五島市の移住支援員に相談したことがある方、五島市の下見をしたことがある方を対象に、短期滞在住宅を提供している。
期間は1ヶ月以上3ヶ月未満が基本で、入居利用料は無料。光熱費や通信費などの諸費用は自己負担となる。
結婚新生活支援事業
五島市の人口減少対策のひとつとして、婚姻数の増加を目指すために夫婦への支援を実施している。
移住者に限った支援ではないが、要件に当てはまれば移住者でも利用できる。
補助上限は1世帯30万円で、夫婦ともに29歳以下の場合は60万円。住居の取得または賃借、引っ越し費用に対して援助が行われる。
補助対象者は、以下の通り。
・令和4年4月1日以降に婚姻した夫婦
引用元:結婚支援として、家賃や引越費用等を助成します!|まるごとう
・夫婦ともに39歳以下であること。
・前年の夫婦の所得の合計額が400万円未満であること。ただし、申請日において無職である場合はこの限りでない。また、夫婦の一方又は双方が貸与型奨学金の返済を現に行っている場合は、年間返済額を控除して計算する。
・夫婦の結婚生活のための住居が市内にあり、夫婦の一方又は双方が当該住居の所在地に住所を有していること。
・夫婦の双方が、過去に国が交付する地域少子化対策重点推進交付金を活用した補助等を受けていないこと。
・夫婦の双方が、市町村税(国民健康保険税を含む。他自治体含む。)を滞納していないこと。
3世代で同居・近居促進事業
3世代で同居または近居を始める際にも、費用の援助を受けられる。住宅の取得や改修工事が援助の対象で、上限額は40万円だ。3世代での移住を考えている場合に、ぜひ活用してみよう。
仕事の支援
仕事に関する主な支援は、以下の通りだ。
- 支援サイト「まるごとう」
- 就職相談・支援、研修
- 起業・事業拡大支援・事業承継支援
- 面接旅費助成
- 奨学金返済助成
支援サイト「まるごとう」
支援サイト「まるごとう」では、求職者向けに情報提供を行っている。情報提供申込フォームから申し込むと、企業説明会や面談会などの情報を送るサービスだ。
就職相談・支援、研修
就職相談・支援、研修は、長崎県の支援施設がそれぞれ提供している。長崎県総合就業支援センター、ながさきUIターン就職支援センター、福祉人材研修センターが主な窓口。
ながさき漁業伝習所や役所なども関わり、漁業や農業の研修も実施している。
起業・事業拡大支援・事業承継支援
五島市で起業する場合には、経費の支援を受けられる。創業の場合は、設備費や改修費など対象の費用に対して最大600万円の補助を受けることが可能。
将来的に事業拡大や承継を行った場合にも、援助を受けられるのも嬉しいポイントだ。
面接旅費助成
五島市に移住することを前提に、市内企業で面接を受けたり、起業のために調査をしたりする場合に旅費の助成を行っている。
往復交通費と宿泊費が対象の経費で、ひとりあたり6万円まで補助を受けられる制度だ。
対象者や申し込みの流れ、必要書類などは、五島市移住定住促進サイト「五島やけんよか!」の面接旅費助成についてのページをチェックしよう。
奨学金返済助成
市内で働く35歳未満の方を対象に、奨学金の返済費用を一部助成している。
長崎県内の奨学金以外に独立行政法人日本学生支援機構奨学金が含まれているため、移住者でも利用可能。助成額は、年間36万円以内で、償還開始から10年間助成が行われる。
子育ての支援
子育てへの支援は、特に充実している。主な支援をチェックしていこう。
- 子育て世帯引越し補助
- 五島市一般・特定不妊治療費助成事業
- 出産育児一時金の支給
- 医療費の一部助成(乳幼児・子どもの福祉医療費)
- 多子世帯の保育料軽減
- 幼児教育・保育の無償化
- 児童手当
子育て世帯引越し補助
定住を目的に五島市に移住する子育て世帯に、引越し経費を対象に上限15万円を補助している。
対象者の条件は、以下の通りである。
下記のいずれかに該当する方
・18歳に達する日以後の最初の3月31日までの間にある子(高校3年生以下)を扶養し、同居している世帯
・妊娠中であって、母子健康手帳の交付を受けている者を含む世帯
・夫婦の双方が40歳未満の世帯
その他条件
・補助金の交付決定から5年以上市に居住しようとする世帯
・税を滞納していない世帯
・転勤または季節労働等により一時的に転入した者でない世帯
・世帯員全員が、国家公務員又は地方公務員でない世帯
引用元:子育て世帯引越し補助|五島市移住定住促進サイト「五島やけんよか!」
五島市一般・特定不妊治療費助成事業
五島市では、一般不妊治療を受けている夫婦に対して費用の一部を助成している。保険診療を受けられる医療機関での治療が対象で、交通費や宿泊費の助成を受けることが可能。
初診から治療の完結までを1回とし、上限6回の助成を受けられる。
出産育児一時金の支給
国民健康保険の被保険者を対象に、ひとり42万円または40万4千円の出産一時金が支給される。双子以上の場合は、人数分の支給を受けられる。
支給方法や必要書類は、まるごとうの「出産育児一時金の支給」ページををチェックしてほしい。
医療費の一部助成(乳幼児・子どもの福祉医療費)
子どもが医療機関を受診した場合に、医療費の一部助成を受けられる。保険医療機関ごとに1日800円(月上限1,600円)の自己負担額を除いた額が助成される。
助成の対象は、「18歳に達する以後の最初の3月31日」までに拡大されている。
自己負担額や申請方法は、まるごとう「医療費の一部助成(乳幼児・子どもの福祉医療費)」のページを確認しよう。
多子世帯の保育料軽減
第2子以降の児童が保育所や幼稚園、認定こども園に通っている場合、所得に関わらず、保育料の軽減を受けられる。
第2子の保育料を半額(第1子と保育施設同時在園の期間、第2子の保育料は無料)に、第3子以降は無料で利用できる制度だ。
幼児教育・保育の無償化
令和元年10月1日から、幼児教育と保育の無償化を実施している。対象者は、以下のように定められている。
認定こども園・認可保育所等
- 3歳児クラスから5歳児クラスの利用料
- 0歳児クラスから2歳児クラスの利用料(市民税非課税世帯のみ)認定こども園・認可保育所等
幼稚園の預かり保育
- 3歳児クラス及び満3歳児クラス(市民税非課税世帯)の利用料(上限月額11,300円)
一時預かり事業・病後児保育事業・ファミリーサポートセンター事業
- 3歳児クラスから5歳児クラスの利用料(上限月額37,000円)
- 0歳児クラスから2歳児クラスの利用料(上限月額42,000円、市民税非課税世帯)
障害児通園施設
- 3歳から5歳までの利用料
児童手当
中学校卒業までの児童を対象に、以下のように手当を支給している。
- 3歳未満の児童:一人当たり月額15,000円
- 3歳以上小学校修了前:一人当たり月額10,000円(第3子以降は15,000円)
- 中学生:一人当たり月額10,000円
支給時期は、毎年6月、10月、2月の10日とし、前月分までの手当がまとめて支給される。申請の仕方や提出先は、まるごとの「児童手当」に関するページを参考にしよう。
五島列島移住前にチェック|気を付けたいポイント
五島市には、たくさんの魅力と手厚いサポートがあるが、いくつか気を付けたいポイントもある。2つの注意点をあらかじめ把握しておこう。
快適な生活には車が必要
スーパーや病院などへのアクセスは、基本的には車が必要になる。島内を走る路線バスは本数が少ないため、利便性には少々欠ける。
そのため、世帯に1台の車が必要になるだろう。購入は島内でできるが、中古でも新車でも費用がかかる。車にかかる費用を事前に計算しておくことが大切。
物価が高いものがある
島内の野菜や魚は安く売られているものが多いが、ほとんどのものの物価は本土と変わらない。
ただ、ガソリンなどの燃料類は、都市部よりも高価な傾向がある。車がほとんど必須になるため、燃料費は生活費の一部を占める可能性がある。
五島列島への移住を考えてみよう
五島市は、雄大な自然や温暖な気候に恵まれた離島。余暇を充実させてくれる海、食事が楽しみになる美味しい食材、充実した施設、災害の少なさなどが魅力だ。
移住支援制度も幅広く整備しており、過去5年間の定着率が8割ということにも頷けるだろう。地区ごとの特徴や制度を理解したうえで、五島列島五島市への移住を前向きに考えてみよう。