日常生活から離れ、特別な時間を過ごすことができる美術館。この記事では、何度でも足を運びたくなる、日本が誇る素晴らしい美術館を3つご紹介します。
日本の三大美術館ってどこ?
フランス「ルーヴル美術館」、ロシア「エルミタージュ美術館」、アメリカ「メトロポリタン美術館」は、「世界三大美術館」と一般的にいわれています。
現在、日本国内には457の美術館が存在しますが(※2021年度総務省統計局調査)、そのなかには「世界三大美術館」に負けるとも劣らない、素晴らしい美術館があります。ただ、「日本三大美術館=この3つ!」という固定のイメージはそれほど強くないかもしれません。
とはいえ、数ある美術館の中から「日本三大美術館」として名を挙げられることの多い美術館は存在します。そんな評価の高い3つの美術館をピックアップ。その魅力について解説していきます。
大塚国際美術館【徳島県鳴門市】
大塚国際美術館は、瀬戸内海国立公園や国指定記念物の名勝「鳴門」としても指定を受ける、鳴門公園内にある“陶板名画”美術館です。
陶板名画とは、世界の名画を陶器の板の上に再現したもの。色彩や大きさはもちろん、表面の質感や筆遣いまでが忠実に再現され、まるで実物を見ているような迫力や臨場感を味わうことができます。また、紙やキャンバス、土壁に比べて経年劣化のスピードが遅く、2000年以上にわたってそのままの色と姿で残るといわれており、文化財の記録保存のあり方としても注目を集めています。
大塚国際美術館の常設展示スペースは日本最大級(延床面積29,412㎡)で、鑑賞ルートは約4kmにも及びます。そこに並ぶのは、レオナルド・ダ・ヴィンチの《モナ・リザ》やパブロ・ピカソの《ゲルニカ》、フェルメールの《真珠の耳飾りの少女》をはじめとした、26ヶ国190あまりの美術館が所蔵する約1,000点もの作品。一箇所で世界中の名画(陶板名画)を網羅的に鑑賞できる、非常に珍しい施設と言えるでしょう。
また、その展示方法も非常にユニークです。壁画が描かれた古代遺跡や教会を空間ごと再現した「環境展示」。西洋美術の変遷を美術史に沿って展示した「系統展示」。そして、古今の画家たちが描いた作品をテーマごとにまとめた「テーマ展示」。まるで世界中を旅しているかのような没入感を味わえるほか、展示の方法自体が作品を鑑賞するための視点や切り口を与えてくれるため、誰でも楽しく、西洋美術への理解を深めることができます。
大塚国際美術館
【所在地】〒772-0053 徳島県鳴門市鳴門町土佐泊浦字福池65-1
【営業時間】9:00~17:00(入場券の販売は16:00まで)
【入館料(当日券)】一般:3,300円/大学生:2,200円/小中高生:550円 ※税込
【アクセス】JR・鳴門駅からバスで約15分
【公式サイト】https://o-museum.or.jp/
足立美術館【島根県安来市】
近現代の日本画を中心に所蔵する足立美術館は、5万坪の広大な日本庭園と約120点に及ぶ横山大観のコレクションが有名です。
「美術館なのに庭が有名なの?」と思う方もいるかもしれません。そこには、“庭園もまた一幅の絵画である”という足立美術館の創設者・足立全康の信念があります。隅々まで手入れされ、四季折々の表情を見せてくれる足立美術館の庭園は、アメリカ発行の日本庭園専門誌「数寄屋リビングマガジン/ジャーナル・オブ・ジャパニーズ・ガーデニング」による日本庭園ランキングにおいて、21年連続1位をキープ。さらに、フランスの旅行ガイドブック「ミシュラン・グリーンガイド・ジャポン」(改訂第6版)において、最高評価の三つ星を獲得しました。
もう一つの特徴である横山大観のコレクションには、彼の名を世に知らしめた出世作《無我》や、絢爛豪華な趣を持つ《紅葉》、富士山を奥に見つつ山々の間を雲が縫う様子が描かれた水墨画の名作《雨霽る》をはじめ、一度は自分の目で見たい日本画の名作も含まれます。
もちろん、所蔵されているのは横山大観の作品や近現代の日本画だけではありません。陶芸家として名高い北大路魯山人のコレクション約500点を所蔵する「魯山人館」や、大正から昭和にかけて児童雑誌に掲載された絵画を集めた「童画コーナー」も見ごたえ抜群です。
施設内には、純金の茶釜で沸かしたお湯で淹れたお抹茶をいただける茶室「寿楽庵」や、「池庭」に囲まれた喫茶室「大観」があり、鑑賞後の余韻に浸る時間も存分に楽しめます。
足立美術館
【所在地】〒692-0064 島根県安来市古川町320
【営業時間】夏季〔4~9月〕9:00~17:30/冬季〔10~3月〕9:00~17:00
【入館料】大人:2,300円/大学生:1,800円/高校生:1,000円/小中生:500円 ※税込
【アクセス】JR・安来駅から無料シャトルバスで約20分
【公式サイト】https://www.adachi-museum.or.jp/
大原美術館【岡山県倉敷市】
1930年に設立された大原美術館は、日本初の西洋美術中心の私立美術館。岡山県倉敷市にある町並保存地区・観光地区である「倉敷美観地区」の一角を成しています。
本館には、クロード・モネの代表作《睡蓮》をはじめ、セザンヌ、ルノワール、ゴーギャンほか、誰でも一度は耳にしたことのある有名な画家の作品が数多く所蔵されています。そのなかでも特筆すべきは、エル・グレコの《受胎告知》。エル・グレコの作品は日本にたった2点しかなく、そのうちの貴重なひとつを、この大原美術館で鑑賞することができるのです。
西洋美術のほかにも、日本における近現代の美術、民芸運動ゆかりの作家たちによる制作物、東洋や古代オリエントとイスラムの古美術といった幅広いコレクションが揃い、その数は約3,000点にものぼります。
開館前の時間を使った解説付きの「モーニングツアー」や倉敷考古館とコラボレーションした「ミステリーツアー」、親子で楽しめる体験型プログラム「いこうdeオオハラ」など、イベントも充実。ただ鑑賞するだけでは物足りない!という人にもおすすめです。
また、大原美術館は建物そのものも魅力的です。古代ギリシャや古代ローマの神殿のような外観が特徴の本館は、建築家の薬師寺主計が設計したもの。センスの光る意匠は、開館当時から変わりません。
大原美術館
【所在地】〒710-8575 岡山県倉敷市中央1-1-15
【営業時間】〔12~2月〕9:00~15:00/〔3~11月〕9:00~17:00
【入館料】一般:2,000円/高中小生(18歳未満):500円 ※税込
【アクセス】JR・倉敷駅から徒歩で約15分
【公式サイト】https://www.ohara.or.jp/
お散歩気分で美術館!アートが身近にある暮らしはいかが?
今回は日本にある素晴らしい美術館を3つご紹介しました。
とても大きな美術館だったり、所蔵数が多かったり、いずれも一度で味わいつくすというのは至難の業かもしれません。また、期間限定の特別展や参加したい催し物があっても、遠方から訪れる場合は、なかなか都合がつきにくいものです。
何度でも足を運びたい!と思える素敵な美術館と出会ったら、その近くにもうひとつの生活拠点を置くというのもおすすめです。散歩に出かけるように気軽な気持ちで美術館に出かけ、頻繁にアートに触れることのできる生活は、とても豊かなものと言えるでしょう。