和歌山県は世界遺産やパワースポット、白い砂浜と青い海など、見どころが多い県だ。都内から地方への移住への注目が高まっているなかで、和歌山県への移住相談も年々増加の傾向である。今回は和歌山県への移住を考えている人へ、県が取り組む移住支援制度や、移住におすすめのエリアを紹介する。
移住する前に知っておきたい和歌山県の基本情報
まずは、和歌山県がどのような県なのか基本情報を見ていこう。
地理
和歌山県は、近畿地方の南側にある紀伊半島の南西部にある。面積は、その大部分が標高1,000メートル前後の山岳地帯だ。
山脈からは紀の川、熊野川、有田川など多くの川が太平洋や紀伊水道に流れていて、和歌山県に住む人々は水に恵まれた生活を送る。
和歌山県の海岸線は、リアス式海岸で650キロメートルにも及んでいる。
人口
和歌山県の人口は、2022年4月現在で約90万人、世帯数は約40万世帯だ。県内で最も多い人口は和歌山市で約36万人、その次に田辺市(約7万人)、橋本市(約6万人)と続く。
参考元:和歌山県の推計人口(令和4年4月1日現在)|和歌山県
気候
北から南までの距離が長い和歌山県は、北側は天気や湿度が安定し雨量も少ない瀬戸内海式気候、南側は雨が多く台風の影響を受けやすい太平洋岸式気候と、気候条件が異なる。
例えば年間の降水量は、和歌山市が1414.4ミリメートルなのに対し、新宮市では3332.9ミリメートルと大きく違う。
産業
和歌山の産業は、「卸売・小売業」と「医療・福祉」の比率が特に高い。繊維業・パイル織物・日曜家庭用品などの地場産業も盛んだ。
また、和歌山県のみかんの収穫量は全国で17年連続1位を取り続けている。
参考元:和歌山県の商工業|和歌山県
参考元:令和2年産みかんの結果樹面積、収穫量及び出荷量(近畿)|農林水産省 近畿農政局
和歌山県が行っている主な移住支援制度
ここからは、和歌山県に移住を希望している人に向けて、県が行っている支援制度を紹介する。
住まい・暮らしのサポート
和歌山県では移住を希望する若者や現役世代に向けて、負担軽減のために移住支援金を交付している。対象者となるのは、
- 県が運営する求人マッチングサイトに掲載の求人に応募・就職した場合
- 内閣府地方創生推進室の専門人材事業を利用して移住・就職した場合
- 自己の意思において県内でテレワークをする場合
- 県実施の「わかやま地域課題解決型起業支援補助金」で起業した場合
- 認定関係人口として認められた場合
上記のいずれかと、ほかに県が定める移住に関する要件を満たせば、単身で申請の場合は30万円、2人以上の世帯で申請する場合は50万円(子供がいる家庭は15万円が加算)が交付される。※
※2023年度4月より1世帯につき最大100万円の支給に加え、18歳未満の子どもに対する支援金がひとりあたり最大30万円から100万円に加算される予定
また、移住希望の若年層へのアプローチとして、和歌山県内での仕事と暮らしを一定期間体験し、和歌山県での働き方や生活の仕方を実感できるプログラム「わかやま しごと・暮らし体験」も実施している。
首都圏に住み、移住推進地域へ検討している人が居住地から移住検討地まで訪問する際は、県から交通費(最大2万円)を支援してもらえる制度もある。
和歌山県で移住して住まいを探す場合は、
- 空き家バンクに登録している場合、空き家の片付けサポート費用(最大8万円)
- 空き家の改修補助金(最大80万円)
- 契約前の空き家の点検費用(最大5万円)
などの支援金を申請できる。
就業サポート
和歌山県では、移住先の地域の課題を解決するために、県内で起業する人に向けて「地域課題解決型 起業支援補助金」を最大で300万円交付している。
この制度を利用し和歌山県内では古民家を活用した観光客向けの宿泊・休憩施設を開いた移住者や、地元食材を活用し洋菓子を製造・販売する移住者などがいる。
また、地域の生業(なりわい)を引き継ぐ「継業」を目指す移住者にも補助金のサポートがある。
継業については、後継者を求める県内の企業の事業主と、継業を希望する移住者のマッチング支援プロジェクトもあるので安心だ。
和歌山県の移住者への就業サポートはほかにもある。詳しくは県の移住支援制度を確認してみてほしい。
子育てサポート
和歌山県へ移住を希望する人のなかには、子連れでの移住を検討する人もいるだろう。和歌山県には、「わかやま子育て支援パスポート」という制度がある。
これは、社会全体で子育て家庭をサポートすることを目的として県が立ち上げた事業だ。
このわかやま子育て支援パスポートを申請すると、子育て家庭がこのパスポートに協賛する店舗を利用した際に割引や特典などのサービスを受けられる。
和歌山県は、子育てと仕事を両立できる社会を実現するため、県内の企業と連携して「わかやま結婚・子育て応援企業同盟」を発足させた。
この同盟に参画している企業は、2022年7月現在で622企業・団体。
子育てしやすい職場環境を整えたり、育児・介護休業法を全社員が理解を深められるよう研修を実施したり、育児休業からの復帰の際は本人の希望を聞いてもらえたりと、子育て中の人がスムーズに仕事復帰できるような努力をしている。
和歌山県の子育てサポートはほかにも
- 紀州っ子いっぱいサポート(第二子以降の子どもを育てる世帯の負担軽減のため保育料の助成をする)
- 在宅育児支援
- ひとり親家庭支援
など、さまざまな家庭環境に応じた子育てサポートを行っている。
参考元:わかやま子育ての広場
和歌山県でおすすめの移住先(自治体)8選!
ここからは、和歌山県内で移住におすすめの自治体を8つ紹介していこう。
有田市(ありだし)
出典:Are:turn-有田市移住サイト
有田市(ありだし)と言えば思い浮かぶのが有田みかんでないだろうか。有田市はみかんの一大生産エリアだ。また、太刀魚(たちうお)の漁獲量日本一でもある。
有田市は海と山、そして川に囲まれている。
夏には沖合に浮かぶ無人島の地ノ島や矢櫃(やびつ)海岸などマリンレジャーを楽しめる場所があり、町の中心地を流れる有田川では子どもたちが公園で遊んだり、スポーツを楽しんだりできる施設が整っている。
秋になるとみかん畑が一面オレンジ色に染まる。
有田市の中心部は商業施設が集中していて、買い物や外食に困らない。
市内には駅が3つあり、うちのひとつ、箕島駅からは約30分で和歌山駅までアクセス可能だ。特急を利用すると大阪までも通勤圏内になる。
東京圏から有田市へ移住(転入)する場合、一定の要件を満たすことで移住支援金が受けられる。
交付金額は単身の場合60万円、2人以上の世帯は100万円に、18歳未満の子どもひとりにつき30万円が加算される。
また、有田市への移住希望差が現地を訪問する際、市が定める5つの条件を満たし、さらに現地で移住担当職員が同伴のうえで先輩移住者や地域住民と意見交換をしたり、仕事関係の相談をしたりした場合、居住地から有田市への片道交通費が補助される。
有田市には就農、特にみかん就農を目指して移住する人も多く見られるため、市の就農支援も充実している。
その例としては、2年間の研修を積むことで年間300万円の保障がもらえるというものもある。
みかん就農のほかにも漁業の仕事もある。漁業に従事したいと考えているなら、市の漁協組合で直接相談を受けているので利用してみよう。
有田市で子育てをしたいと考えている人に向けて、市では「子育て世代活動支援センターWaku Waku」を開設。
子育て世代の親子だけでなく地域住民が交流できる場としてさまざまな世代が利用している。ほかにも有田市ではほかの自治体に比べても子育て支援が充実しているのも魅力だ。
有田市への移住に関するさまざまな情報を入手したいなら、市の移住サイト「Are:turn」を活用してほしい。
橋本市(はしもとし)
出典:はしっ子暮らし
大阪市内(難波)まで、南海電鉄に乗れば約40分で到着でき、和歌山市方面と奈良方面にはJRも走るなど、交通アクセスが良い橋本市(はしもとし)。
高野山のふもとにあり、山と川に囲まれ、田舎過ぎず、ちょうど良い暮らしができるのが魅力だ。
橋本市では企業誘致に力を入れているため、新しい仕事を求めて移住してくる人も多い。
大阪までのアクセスの良さもあり、市でも移住に関するセミナー(夜間の相談会やオンライン相談、移住関連イベント)を定期的に開催し、新規の移住者を積極的に受け入れている。
橋本市にある「きのくに子どもの村学園」は、体験学習を主体とした学校だ。全国から生徒を受け入れていて、学校には寮がある。
この学校の教育目標、「感情、知性、人間関係のいずれの面でも自由な子どもを育むこと」に共感し、和歌山へ教育移住を実現させたという移住者も多数いる。
この地に長く暮らせるように「住みやすさ」に力を入れる橋本市は、和歌山県の中でも注目の移住先のひとつだ。
田辺市(たなべし)
出典:SUMORA TANABE
世界遺産「熊野古道」をはじめ、数々の歴史的文化資源がある田辺市(たなべし)。
日本三美人の湯のひとつ、龍神温泉や湯の峰温泉など、豊富な温泉地があるのも特徴だ。田辺市は紀州梅の一大生産地でもある。
田辺市の移住支援として、最長1年間入居し田辺市の暮らしを体感できる「短期滞在施設」がある。地域内の3地区に8戸の住宅が用意されていて、お試し移住が可能だ。
また、県外から移住する場合、空き家改修の補助金交付(最大160万円)、移住者の起業に対しての経済的支援(補助金最大350万円)などもある。
有田市と同様に、田辺市でも東京圏からの移住に支援金が交付される。
田辺市の子育て支援制度には
- 子ども医療費助成(中学校卒業まで)
- 市立幼稚園、私立幼稚園(認定こども園)での預かり保育
- 学童保育所の減免
- 山村地域における子どもの居場所提供
- 子育て相談事業
など、子どもの年齢に応じてさまざまなものがある。詳しくは「田辺市みんなで子育て応援プログラム」を確認しよう。
和歌山市(わかやまし)
出典:和歌山市移住定住支援サイト
和歌山県の中で人口が最も多いのが県庁所在地の和歌山市だ。大阪の中心部へは電車や車を使っても1時間程度、関西国際空港へはリムジンバスなら40分で到着する、利便性が良いところが魅力でもある。
和歌山市は「トカイナカ」という都会と田舎、両方の良いところを持ち合わせている。主要都市へのアクセスの良さを持ちながら、時間の進みはゆったりとしている。
人口が多い都市でもあることから、公共施設や医療施設、さらには教育施設が充実している。医療体制が整っているので看護や介護が必要な家族を持つ人でも安心して暮らせる。
和歌山市には、市外から和歌山市に移り住み、三世代で同居・あるいは近所に住む(近居)ための住宅購入、または住宅をリフォームする場合に費用の一部を助成する「和歌山市転入型三世代同居・近居促進補助金」がある。
和歌山市の移住サポートはほかにも、就職支援(和歌山市移住・定住 就職相談窓口)、お試し移住(トライアル和歌山市)、空き家バンクなどがある。
和歌山市のお試し移住では、小中学生の子どもがいる家庭に、住民票を移さずに市内の小中学校に通い学べるトライアルスクールも実施。家族で和歌山市への移住体験が可能だ。
海南市(かいなんし)
出典:移住・定住|海南市
みかん、びわ、桃の果物の栽培や、海の幸にも恵まれている海南市(かいなんし)は、紀州漆器の産地としても有名だ。家庭用品産業の盛んなエリアでもある。
特急列車が停車し、高速道路のインターチェンジもあり都会へのアクセスは良好。市内には歴史や漆器町の街並みや、子どもが楽しめる公園や牧場、博物館などもあり、国宝建造物も身近に感じられる。
海南市の移住支援は
- 空き家バンク
- 空き家リフォーム工事補助
- 子ども医療費助成
- 未就学児の給食費無償化
- 創業サポート
- 店舗リフォーム工事補助
など多岐に渡る。
紀美野町(きみのちょう)
出典:きみので暮らそ。
和歌山県の北部にある、紀美野町(きみのちょう)は、山と川の豊かな自然に囲まれた町。空を見上げれば夜には星と月が輝く。
大阪から約1時間半で到着する紀美野町には、自然の美しさと、人気のカフェやレストランへの訪問を目的に多くの人が訪れる。
紀美野町には先輩移住者が多く、田舎暮らしを楽しんでいる。地域活動や地区の行事もあり、積極的に参加することで住民との距離も縮まり、心地よい紀美野町暮らしができる。
紀美野町の移住支援には、定住促進補助金、定住奨励金(5年以上定住する意思のある人奨励金を支給)、子ども医療費無料(高校生まで)などがある。
紀美野町の移住ポータルサイト「きみので暮らそ。」では、田舎暮らしをするにあたっての大切なことや心構え、移住までのステップなどを詳細に紹介している。
紀美野町への移住に興味を持った人はぜひこのサイトを参考にしてほしい。紀美野町まちづくり課でも、移住希望の相談を受け付けている。
紀の川市(きのかわし)
出典:Good Life with Kinokawa
「住いも甘いも紀の川市」というシティプロモーションを行っている紀の川市(きのかわし)は、1年を通じてさまざまな種類の果物を収穫できる果物産地だ。
歴史や伝統がある文化施設や史跡もあるほか、紀州三大祭りのひとつ、「粉河祭」は地域に活気を生み出す。
市内には近畿大学生物理工学部があり、若者たちの存在は地域の活性化にも繋がっている。世界一有名な駅長といわれる、ねこの「たま駅長」がいるのも紀の川市だ。
紀の川市では、県外からの移住を進めるために「ワンストップパーソン」を設置。移住や定住の相談ができる。
子育てをしやすい街を掲げていて、子育て支援センターや高度な専門医療体制を備えた総合病院、子どもの医療費助成などの支援を通じて住民の子育てをサポートしている。
紀の川市内で新規就農を考えている人に向けては、給付金の補助や就農に関する研修会を開催している。
また、京奈和自動車道が開通したことにより都市部へのアクセスも向上したため、紀の川市に住みながら都市部へ働きに出ることも可能だ。
子育て世代の助成のための就職活動、創業(起業)支援なども行っている。
岩出市(いわでし)
出典:岩出市
岩出市(いわでし)は、広域幹線道路が整備され大型店舗などが次々と出店し、成長や発展が注目されている。
大阪府や和歌山市のベッドタウンとしても人気だ。大阪府との県境にあるので、県をまたいで買い物や観光なども楽しめる。
市全体で子育てを応援する取り組みをしていて、子育て応援企業ステッカーを登録した市内企業に配布。
子連れでも安心して訪れられる設備を配置したり、イベント開催などの取り組みを行ったりしている。
岩出市では、移住して市内で起業を考えている人に向けて、「岩出創業支援事業」を紹介している。
具体的には、ワンストップ相談窓口の設置や創業セミナーの開催、会社設立の登記にかかる登録免許税の軽減や各種融資の優遇などがある。
また、岩出市で住まいを探す人に向けて、古い住宅に耐震診断や改修について補助金を受けられる「住宅耐震化促進事業」もある。
和歌山への移住に向いている人とは
和歌山県を移住候補のひとつとしている人に、事前に知っておきたい移住へ向いている人を紹介したい。
田舎暮らしに抵抗がない人
和歌山県は自然が多く、都会よりも田舎暮らしをしたいという人に向いている。
和歌山で移住支援を受けられる移住推進市町村も都市部よりも田舎に近いエリアが多い。公共交通機関の本数も限られていて車が必須なところもある。
田舎ならではの、近隣住民との距離が近く、人づきあいの難しさも感じることもあるだろう。田舎暮らしに抵抗がない人は和歌山県でもスムーズに暮らせるだろう。
地域の担い手として働きたい人
全国的にもそうだが、和歌山でも高齢化と転出による人口減少は問題となっていて、県ではさまざまな取り組みをしている。
そのなかで、地方に移住してお給料をもらいながら地域の活動に取り組む「地域おこし協力隊」は、地域の担い手として働きたいという人におすすめの仕事だ。
ほかにも、地域の生業を引き継ぐ「継業」を和歌山県に移住して目指すことも、和歌山で地域の担い手として働きたいと考えている人に向けてのひとつの選択肢であるだろう。
豊かな自然と世界遺産のある和歌山へ移住してのびのびと暮らそう
川・山・海などの自然に囲まれ、都会へのアクセスも良好な和歌山は、移住者を積極的に受け入れるための支援も多く用意している。
和歌山は子育て世帯・シニア・おひとり様、どのような人も受け入れてくれる。移住を考えている人はぜひ和歌山県への移住も検討してほしい。