旅とテレワークを融合したワーケーションが広がりつつあり、自治体も積極的に推進している。より多くの人がワーケーションできるように補助金制度を実施している自治体も増えてきた。
この記事では、ワーケーションの補助金制度の概要や地域別の事例を紹介する。
ワーケーションの補助金制度とは
ワーケーション補助金制度とは、制度を提供している自治体の宿泊施設に滞在し、ワーケーションを実施した際に助成を受けられる制度だ。
助成によって地域に人を呼び込んだり、ワーケーションを通して地域の経済を活性化したりするなど、様々な目的で制度の導入が進められている。
助成の対象となる費用は、自治体によってさまざまだが、宿泊費や交通費などの一部を補助している場合が多い。
注意点は後述で詳しく解説しているが、自治体それぞれで定めた条件があるため、利用するために十分に気を付けよう。
【地域別】ワーケーション補助金制度の事例とそれぞれの特徴
ワーケーションの補助金制度は、全国各地で実施されている。ここでは、地域別に補助金制度の事例を紹介していく。
北海道
北海道でワーケーション補助金制度を実施しているのは、北海道の中央に位置する富良野市だ。
ワーケーション実証費用助成金という制度を導入し、市外の会社員やフリーランス・個人事業主を対象に、市内の宿泊施設の滞在費やレンタカー利用料の一部を助成している。
【助成要件】
引用元:【ご案内】令和4年度「ワーケーション実証費用助成金」について|富良野市
富良野市内に4泊以上滞在(連泊に限る・宿泊施設の変更は可)すること。
レンタカーを利用する際には、富良野市内または旭川空港、新千歳空港の営業所で借りる場合に限ることとし、宿泊助成を受ける期間内とすること。
ワーケーション実証期間中の消費(支出)額を積算、算出すること。
同一期間中に同一の企業等に所属する社員等による実証は、10人以内であること。
同一社員等が年度内に実証できるのは2回までとする。
同一企業の社員等が年度内に実証できる延べ人数は、20人以内であること。
滞在期間中、ワーケーションの実施をSNSで紹介し、本市の魅力を拡散すること。
実証終了後は市に体験記を提出すること。
滞在期間中、本市の関係者と1回以上、情報交換会あるいは交流会に参加すること。
【助成対象経費・助成限度額】
対象経費 | 限度額 |
---|---|
宿泊費 | ・5,000円(1泊/1人)※助成割合 2分の1以内※7連泊分まで助成 ・10,000円(1泊/1人)※助成割合 4分の3以内※7連泊分まで助成 |
レンタカー利用料 | 2,500円/日※助成割合 2分の1以内※8日分まで助成 |
東北
東北地方では、福島県では個人でも利用できる補助金制度、秋田県では団体向けの補助金制度を導入している。
福島県の「テレワーク×くらし」体験支援補助金は、県外在住の対象法人に在籍する会社員やフリーランスを対象に助成を行う制度だ。
長期滞在と短期滞在でコースを分けているため、下記の表を参考に違いを理解しよう。
コース名 | ふくしま“じっくり”体験コース【長期コース】 | ふくしま“ちょこっと”体験コース【短期コース】 |
滞在期間 | 1~3ヶ月間 | 5泊6日まで |
補助上限額 | 30万円/人 | 1人あたり1万円/泊 |
補助率 | 補助対象経費の3分の4 | |
対象経費 | ・本県に滞在している間の宿泊費(飲食代は除く) ・交通費 ・コワーキングスペース等の施設利用料 ・レンタカー代(燃料費は除く) |
秋田県では、ワーケーションを推進する企業または団体を対象にした、ワーケーション実践団体奨励金交付事業を実施している。
要件を満たした企業または団体は、10万円の補助金を得られる制度だ。
中部
長野県岡谷市では、市外・県外からのワーケーションの受け入れに力を入れている。
市指定のワーキングスペースを利用した場合、施設利用料の2分の1(上限5,000円/月)の補助を受けられる制度だ。
また、「岡谷市ワーケーション等実施支援補助金」も導入し、市内で2泊3日以上のワーケーションをする場合に補助金の交付を受けられる。対象経費と上限額は以下の通り。
対象経費 | 限度額 |
---|---|
交通費 | 2分の1※1人あたり10,000円/回 |
宿泊費 | 2分の1※1人あたり5,000円/泊 |
レンタカー | 2分の1※10,000円/日(1企業1日1台まで) |
近畿
奈良県の南部東部振興課では、奥大和ワーケーション・レンタカー助成を実施している。
豊かな自然や温泉などがある奥大和地域へのワーケーションを助成し、「奥大和ワーケーション」の普及を目指している取り組みだ。
助成を受けられるのは、レンタカーの費用である。指定レンタカー営業所でレンタカーを借りた場合、1泊につき2,000円(上限1万円)の補助を受けられる。
中国
広島県福山市では、ワーケーションによって地域活性化に取り組む企業や人材に対して補助を実施している。
ワーケーションの受け入れ体制を整える市内の宿泊施設や旅行業者も対象とし、ワーケーション全般に関わる制度となっているのが特徴だ。
対象経費 | 限度額 |
---|---|
交通費 | 50万円 ※対象経費の2分の1以内 |
滞在費 | |
移転費 | |
オフィス利用料 |
四国
香川県では、移住に関心があり指定のコワーキングスペースを2日以上連続して利用した方を対象に、経費の助成を行っている。
対象は東京圏在住者、または大阪圏在住者のみだ。
在住エリア | 助成金額 |
---|---|
東京圏 | 3万円 |
大阪圏 | 1万円 |
※指定コワーキングスペースを3日以上利用した場合は、3日目以降1日あたり5,000円を加算
九州・沖縄
九州地方では、鹿児島県がかごしまワーケーション実施支援事業を導入している。
県外在住の個人、県外の企業の従業員を対象に、ワーケーションに必要な費用の補助を行う制度である。
【補助要件】
引用元:かごしまワーケーション実施支援事業について|鹿児島市
県外在住の個人,または本県に事業所を有しない法人企業あるいはその従業員である者。
県等の補助金等の不正受給処分がなされていないこと又は不正受給処分がなされてから3年以上経過していること。
性風俗関連営業,接待を伴う飲食等営業又はこれらの営業の一部を受託する営業を行っていないこと。
同一の事業について,国,県等から他の補助金を受けていないこと及び受ける予定がないこと。
県税に未納がないこと。
事業員の構成員等が暴力団員による不正な行為の防止等に関する法律(平成3年法律第77号)第2条第2号に規定する暴力団(以下「暴力団」という。)若しくは同条第6号に規定する暴力団員(以下「暴力団員」という。)でないこと又は暴力団若しくは暴力団員と密接な関係を有しないこと。
その他,公序良俗に反する業務を行う者など,補助対象とすることが社会通念上不適切と知事が認める者でないこと。
【補助限度額・補助率】
補助限度額 | 15万円/人 |
補助率 | 補助対象経費の4分の3以内 |
ワーケーション補助金制度を利用する際の注意点
ワーケーション補助金制度を利用する際は、以下のポイントに気を付けよう。
- 自治体によって申請方法が異なる
- 受給資格や受給額の確認が必要になる
- 補助金の内容に左右されず本当に行きたい場所を選ぶ
- 申請期限をしっかり守る
申請方法や受給資格などは自治体によって異なるため、事前に確認が必要だ。
自治体によって申請方法が異なる
ワーケーション補助金制度を提供している自治体によって、手続き方法が異なる。例えば、香川県の場合は、制度を利用するためには相談窓口やイベントでの移住相談が必要だ。
ワーケーションを行っても申請が通らなければ助成を受けられないので、申請方法はあらかじめ確認しておこう。
受給資格や受給額の確認が必要になる
ワーケーション補助金制度では、助成対象者の要件を定めている。受給額や助成対象の経費なども異なるため、希望に合っているか確認しなくてはいけない。
補助金の内容に左右されず本当に行きたい場所を選ぶ
補助金制度が利用できる地域へワーケーションに行くのも良いが、本当に行きたい場所を選ぶことも大切。
日常から離れた場所でリフレッシュしたり、仕事のモチベーションを上げたりするのが目的であるため、興味のない地域では効果が薄くなりがちだ。
まずは行ってみたい地域を考え、その自治体で制度を実施しているかを確認してみよう。
申請期限をしっかり守る
ワーケーション補助金制度は、公募で募集している場合が多い。申請期限を過ぎてしまうと、ワーケーションを実施しても助成を受けられない。
なかには、いつでも申請できる助成金もある。申請期限を把握したうえで、余裕を持って制度の利用を申請しよう。
ワーケーションの補助金制度を賢く利用しよう
ワーケーション補助金制度は、市内での宿泊やコワーキングスペースの利用料、交通費などの助成を受けられる制度だ。
上手に活用することで、負担を軽減しつつワーケーションを存分に楽しむことができる。
紹介した補助金制度を参考にし、行ってみたい地域の制度を活用してワーケーションを始めてみよう。