人と、地域との繋がりを作るには?「ふるさと回帰フェア2024」取材レポート

ふるさと回帰フェア2024:セミナー

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2024年9月21日(土)・22日(日)の2日間、東京・有楽町にある東京国際フォーラムで開催された「ふるさと回帰フェア2024」。先日、この催し全体の体験記をご紹介しましたが、興味深いセミナーもいくつも実施されていたので、今回はその模様をお伝えします!

目次

「ふるさと回帰フェア2024」地方移住セミナーレポート

こうした地方移住セミナーの目的は、地域暮らしについて知る最初の一歩となること。実際にどうやって移住したのか、そのきっかけや行って良かったこと・苦労したこと、どうやって人と人の繋がりを作っていくのかといったことについて、移住実践者の体験や、その手助けをしている人々の生の声を聞くことができました。

地方移住セミナー①:移住先で結婚、自ら改修した古民家で暮らす【富山県南砺市】

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「移住」と聞いて多くの人がイメージするであろうパターンで移住を果たしたのは、東京都大田区から富山県南砺市に移り住んだ石田香楠子さん。

造形作家である石田さんは、その作業時に大きな音が出ることから都内では制作がしづらく、遠方にあるアトリエと自宅を何時間もかけて往復する日々を送っていました。作業しやすいところに暮らしたいと思っていた2016年、都内で行われたイベントに参加して南砺市の人と交流。そこで知り合った人に誘われ、翌週には山菜採りのために同市へ出向きました。

石川県金沢市からほど近い南砺市の人たちに温かくもてなされ、しばらくお客さんとして通っていたとき、ある古民家の取り壊し予定を耳にします。この土地や文化、人々がすっかり気に入っていた石田さんは、思いきってその家を買い取ることに。南砺市で知り合った人の息子さんという伴侶も得て、自ら改修した古民家で2019年から暮らしています。この自宅で、石田さん自身の結婚式披露宴も行ったそうです。

築110年で、広い母屋のほかに納屋もあった古民家は、助成金や補助金を使って費用の一部をカバーする形で改修。梁や囲炉裏の煙で黒くなった壁は趣としてそのまま残したこともあって、そこまでお金をかけずに快適な我が家とアトリエ「かなんとこ」ができあがりました。

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そんな石田さん宅の広いスペースを活かし、納屋を改装したアトリエではヨガや落語、お菓子作りに演奏会、子ども向けの羊毛を使ったワークショップなど様々なイベントを開催。多くの人が集まって活気があふれるようになったことで、地元の人から感謝されることもあるそうです。

現在、移住コーディネーターとしても活動する石田さんは、南砺市での日々をSNSで発信中。11月には、南砺市役所などと協力しての移住体験ツアーも予定しています。

セミナーの最後には、先輩移住者として石田さんがこれからの移住を考える人にアドバイス。「一回でなく何度でも行ってみること。そうやって春夏秋冬にその場所がどう変化するのかを把握したり、人と知り合って人脈作りをしたりすることが大事」と呼びかけました。

地方移住セミナー②:よそ者だからこその視点を活かしてビジネスチャンスに【青森県田子町】

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石田さんと違って決してスムーズなスタートではなかったものの、持ち前のバイタリティと商才で困難をチャンスに変えていったのは五十嵐孝直さん。千葉県習志野市の出身で神田外語大学卒の五十嵐さんは、シンガポールに駐在したり、ロールスロイスのマーケティングを担当したりと、幅広く活動していました。

しかし、ロールスロイスで働いていた30代半ば、「自分にしかできないことをやりたい」という思いに駆られるように。そこで、ビジネスにしたいと考えていた大好物のシンガポール名物、バクテーが豚肉とにんにくを使うことから、にんにくの産地で人口わずか5,000人ほどの青森県田子町の地域おこし協力隊に着任します。

とはいえ、2019年の移住後すぐ地元の人たちに受け入れられたわけではなく、最初は「東京に帰れ」「この町を利用するな」などと厳しいことを言われたことも。それでも五十嵐さんは、「ずっとこの場所で生きてきた人が、突然やってきたよそ者をすぐに受け入れられないのは仕方ない」と相手の立場を理解。さらに、「よそ者だからこそ気づく町の魅力を伝え、産業に繋げていくのが自分のやるべきこと」と考えたそうです。

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そんな外からの視点を活かし、田子町のにんにくを使ったバクテースパイスの製造・販売業のほか、観光業、宿泊業、輸出業など、さまざまなビジネスを展開。あおいもりトレーディングという会社も興して、地元の人の雇用を生み出したり、県外からお客を呼び込んだりと、新たな故郷に貢献しています。

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町の人々と真摯に向き合い、協力し合って信頼関係を築いたことで、かつて厳しい言葉を投げかけた人とも打ち解け、今では「お前しかいない」と頼りにされるほどの間柄なのだとか。

「地方は隙間だらけで、自分が持っている何気ない特技や趣味が、町にとっては貴重な資源になることもある」と、自らの経験も踏まえて語る五十嵐さん。「移住者が新しい場所で取り組むべきなのは、人と人との関わり合いを増やしていくこと」だと強調していました。

地方移住セミナー③:起業でも転職でもない第3の選択肢、事業継承【全国】

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街なかを歩いているとき、あるいはどこかの店に入ったときに、「閉店のお知らせ」という貼り紙を目にしたことは誰でもあるのではないでしょうか。そうしたお知らせを見ると、それがお気に入りの店だった場合は特に残念に思うものですが、そうした人の思いを繋げて閉店以外の選択肢を提供しているのが、齋藤めぐみさんが関わる事業継承マッチングプラットフォーム「relay(リレイ)」です。

齋藤さんによれば、地域を支えてきた小規模事業者の廃業が近年相次いでおり、その数は年間5万に上るのだとか。超高齢社会の日本では、2025年までに70歳を超える中小企業・小規模事業者の経営者がおよそ245万人おり、そのうち過半数の127万人が後継者不足。その結果、ここ10年ほどの間に廃業した企業の多く、約6割が黒字経営にもかかわらず、後を継ぐ人がいないことから店を閉めざるを得ないそうです。

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日本全国でそうした事業者が増えているにもかかわらず、大企業でなければ買い手がなかなか見つからない状況に風穴を開けたのが、「オープンな事業承継」という新しい考え方。業界の鉄則であった「ノンネーム(売り手情報の非開示)」という方法ではなく、情報を開示して事業が持つストーリーや事業者の思いを伝えることで、買い手により強く訴えかけるという方法です。

その手法で多くの小規模事業者が廃業から救われ、一度は「閉店のお知らせ」を貼り出すところまでいったある本屋も存続することができました。地域に根差していたこのお店の後継者となったのは、子どもの頃にそこに通っていた地元出身の男性。そういう縁が実現するのも、情報がオープンになったからと言えるでしょう。

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この手法は買い手側にとってもメリットが多いと言えます。すでに店が持つ技術や資産、お客を引き継げますし、事業承継というストーリーはメディアで取り上げられることも少なくないからです。「こういう仕事をしてみたいけど、経験のない自分が一から始めるのは不安…」といった理由で踏み出せないでいる人も、夢に手を伸ばしやすくなるでしょう。

小規模事業者の事業継承は「地方創生の起爆剤」と語る齋藤さん。地元で愛されるお店を守り、多様性のある街並みを保つことが、移住者や来訪者、雇用、税収を増やすことに繋がっていくからです。この取り組みは、デジタル技術の活用によって地方活性化を目指す内閣官房の「デジタル田園都市国家構想」をはじめとした政府や公的機関からも注目されています。

こうした話を聞いて強く思ったのは、人と人の繋がりの大事さ。近代化や新型コロナウイルスの影響で人との関係がどんどん希薄になりつつある現代ですが、新たな人と知り合うこと、コミュニティを広げてゆくことが、実りある人生への近道と言えるのかもしれません。

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