移住するときに活用したいもののひとつに「空き家バンク」があります。空き家バンクは、地域の空き家を比較的安く借りたり購入したりできるシステム。物件自体は古いため、ある程度の改築が必要になるケースが大半です。
そのため、安い物件であることで生じるデメリットや失敗事例も把握しておく必要があるでしょう。この記事では、空き家バンク利用で注意したいポイントや失敗事例を紹介します。
空き家の種類
一口に「空き家」と言っても、保存状態によってすぐに住める物件と、そうでない物件があります。
理想的な間取り、価格帯の物件であっても、大幅なリフォームが不可欠なこともあるという点に注意が必要です。
空き家バンクに登録されている可能性がある空き家の種類について、以下にまとめました。
人が最近まで住んでいた物件
半年ほど前まで人が住んでいたような物件は、ほぼそのまま住み始めることができる優良物件と言えるでしょう。
もちろん築年数、補修状況、居住状況によって、水回りや畳交換などのリフォームが必要になるケースは多いですが、それでも基礎工事からやり直しになるようなことは少ないと言えます。
ただ、空き家物件としての魅力は非常に高いですが、後述する物件の情報については事前にしっかりとリサーチをしておいたほうが良いでしょう。
人が時々利用していた物件
別荘などの住宅を指します。こうした物件は、保存状態に当たり外れが大きいです。
定期的に利用、手入れされてきた物件であれば、人が最近まで住んでいた物件同様、そのまま住めるほど良い状態かもしれません。
一方で、何年も利用されていなかった別荘であれば、設備状態に問題を抱えている可能性もあります。
利用頻度や設備の不調などの情報は、積極的に集めることをおすすめします。
別荘の場合、一般的な住宅地から大きく外れた場所に立地していたり、設備が一般家庭のものと異なっていたりするケースもあります。
細かい点まで、入念にチェックしましょう。
長年放置されていた物件
最も注意したいのが、しばらくの間入居者がいなかった「放置住宅」。
入居者がいない状態が長く続くと、メンテナンスをする人間がいないため、設備のさまざまな点に問題が生じているケースが考えられます。
また、現在では一般的な設備となっているものが存在しないケースも。例えば、インターネット回線が通っていない、トイレが水洗式ではないなどが考えられます。
価格と立地条件だけを見てこのような空き家に飛びつくと、フルリフォームはもちろん、基礎工事からやり直しが必要になるようなケースもあるため、十分な注意が必要です。
移住で空き家バンクを利用するときに気をつけるべき5つのポイント
上記のような空き家の分類を踏まえたうえで、実際に空き家バンクを利用する際に気をつけたいことを紹介します。
長年放置されていた物件には注意
長年利用者がおらずに放置されてきた空き家には大いに注意が必要です。
水回りなどの劣化が激しいなどの理由から、一般的な賃貸住宅のように即入居できるような状態ではない可能性が非常に高いからです。
保存状態によっては一度更地にして建て直すことを検討する必要があるかもしれません。
建て直しとなると、補助金の額を考えても高額な持ち出しになる可能性は高いでしょう。
物件についての情報はしっかり集める
物件についての情報はしっかりと集めておくに越したことはありません。
内装の状態、建物の状態はもちろんのこと、どのような理由で物件が空き家になったのかは、できればチェックしておきたいポイント。
事件・事故で人が亡くなった物件などが空き家になっているケースや、前住居者が近隣トラブルを起こしていた可能性も考えられます。
こうした情報は、後々のトラブルを避けることにもつながります。
契約に際しては専門家のアドバイスを仰ぐ
不動産売買の契約は、もちろん個人でも可能です。
しかし、書類の内容は複雑で、専門知識がないと適切な契約が結べない可能性があります。
具体的には、前所有者と口頭で交わした約束と、書面に記載されていた売買契約内容にズレがあるケースなどが考えられます。
契約締結後に前所有者が亡くなって遺産相続を行おうとした際に、購入していたはずの土地の一部の権利が前所有者から譲渡されておらずにトラブルになる、といったことも。
不動産業者を介して取引をすると手数料はかかりますが、書類不備や後のトラブルを防ぐという観点から、利用することをおすすめします。
「無料で譲ります」は必ずしも優良物件ではない
前述のように、建て直し以外に方法がない空き家というものは存在します。購入費用が無料であったとしても、建物を取り壊すのには費用が別途かかります。
もちろん、更地にしたとしても固定資産税の支払いが求められます。
安易に「無料だから」と購入するのではなく、自分の理想の物件にできるかを考えたうえで、購入の検討をしましょう。
物件購入は再転出を難しくする
残念ながら、移住が100%成功するとは限りません。
移住先の気候や環境が体に合わなかったり、近隣住民とのトラブルが起こったりすることも考えられます。
賃貸物件であれば次の移住先を探して転居すれば終わりかもしれませんが、物件を購入してしまうと、そう簡単には転出できません。
気候や地域柄、交通事情、生活環境などにも配慮を忘れないようにしましょう。
空き家バンク活用の失敗例
実際に、空き家バンクを活用して住宅を購入したものの、以下のように失敗してしまったという事例もあります。
外気温の影響を強く受ける物件だった
一般的な日本家屋では、通気性を高めて夏の暑さをしのぐように設計されていますが、その分冬は寒いという特性があります。
一方で、近年では酷暑の夏が多く、エアコン設備が不可欠となっているため、ある程度気密性を高めたほうが、冷暖房効率の良い物件と言えます。
古民家のような物件を購入すると、ほぼ居抜きで利用できるような状態だったとしても、そのままでは、夏は暑く冬は寒い可能性が高いです。
冷暖房費がかさんでしまうと、初期投資費用が安く済んでもランニングコストが高くついてしまいます。
リフォームしてみたがイメージと違った
購入後にリフォームを行って引き渡しとなったが、「イメージしていた出来と違う雰囲気になってしまった」というケース。
リフォームには大きな金額が必要で、要望のすべてを満たせないかもしれません。
また、施工会社との意思疎通がうまくいっておらず、要望したものと違う仕上がりになってしまうことも。
何を作るのにいくらくらいの費用が必要なのか、最終的なデザインはどのような形になるのか、実際に使ったときに不便を感じる可能性はないかなど、多岐にわたって事前の入念な打ち合わせが必要です。
一軒家特有のマイナス面を想像できていなかった
多くの人はマンションなどの集合住宅での生活を送っており、なかには実家も含めて一軒家に住んだことがないという人もいるかもしれません。
そのため、草むしりなどの一軒家特有のマイナス面をイメージしづらいことも。
雪が多く降る地域における除雪や、鹿児島県など一部地域における降灰掃除など、地域の特性などもあわせて想定しておくことが大切です。
補助金の申請を忘れる
自治体によっては、空き家バンクを活用した物件購入や、リフォームに際して補助金がもらえるケースがあります。
移住する前の情報収集はもちろん、移住先の自治体への事前相談や、利用の可否を確認しておくようにしましょう。
また、補助金申請が可能なのであれば、領収書は一式すべて保管しておく必要があります。
紛失しないように、しっかり保管しておくことが大切です。
空き家バンクのデメリットもしっかり理解して活用しよう
空き家バンクは、地域の空き家を活用でき、かつ補助金が受け取れる可能性もある、移住先・移住者双方にとってメリットのある制度です。
一方で、空き家になっている物件には、何かしらの理由が存在します。
安価な物件だからと飛びつくのではなく、実際に自分がそこで生活するイメージを持って、慎重に物件選びを行いましょう。