福島県会津エリアの最奥部に位置する檜枝岐村は、尾瀬国立公園の福島県側の玄関口となる、人口約500人の小さな村。深い山々に囲まれた自然いっぱいのロケーションが魅力で、日常の喧騒から離れてのどかなワーケーションを過ごすのにぴったりです。
この春には待望のワーケーション施設もオープンし、ますます訪れやすくなった檜枝岐村ですが、仕事の合間にはどのようなことが楽しめるのでしょうか?
今回は檜枝岐村でのワーケーションでぜひ体験したいこと5選をお届けします!
【その1】村の歴史を感じる「山人(やもーど)料理」に舌鼓
せっかくのワーケーション。どうせなら普段ならなかなか食べられない、その土地ならではの味覚をいただきたいですよね。檜枝岐村にも、もちろん古くから受け継がれてきた伝統の料理があります。その一つが「山人(やもーど)料理」です。
標高が1,000m近くあり、さらに深い山に囲まれた谷あいの村である檜枝岐村では、古くから林業が盛んでした。しかし、山で働く男たち(山人)は、一度山に入ると数日間は下山することができません。しばらく山に籠って働くことになるのですが、その期間山人たちは山に持ち込んだそば粉や酒、味噌や塩を、山で採れる食材と合わせて料理にして、食べていたのです。そして山人たちが山で食べていた料理が、今、檜枝岐村の名物として注目を集める「山人料理」なんです。
地元で採れる山菜やキノコ、そばにイワナを用いた料理で、現在は村内の旅館や民宿で提供中。限られた食材に対して様々な工夫が凝らされているのもさることながら、宿ごとに少しずつ料理や味付けなどアレンジも異なるので、あちこちに泊まって食べ比べてみるのも面白いかも。いずれも素朴でヘルシーなので、その味わいにも注目が集まっています。
【その2】つなぎなし、そば粉100%の「裁ちそば」をズズッと
高地にあり寒冷な檜枝岐村では、米や小麦の栽培ができません。そのため、古くからそばが栽培され、主食とされてきました。「山人料理」にも、そばは欠かせません。
そんな檜枝岐村では、米や小麦が育たないため、つなぎなしの水と熱湯だけでそばを練って打つスタイルが定着。「裁ちそば」と呼ばれ、「山人料理」と並ぶ檜枝岐村の名物として知られています。
つなぎを用いないため、そば粉を練って延ばしても折りたたむことができません。そのため、2mmほどの厚さに延ばして何枚も重ねて、包丁を手前に引いて切って裁っていくのが檜枝岐村ならではの製法。布を裁ち切るような様子から、「裁ちそば」と呼ばれているのです。
そば粉100%ならではの香り高さ、食感、喉越しは「裁ちそば」ならではのもの。檜枝岐村を訪れたなら、必ずいただきたい名物です。また、同じくつなぎを使用せずに練ったそば粉を機械で製麺した「丸そば」を提供するお店もあるそう。裁ち切るわけではないため麺の角が丸いため、こちらは「丸そば」と呼ばれています。「裁ちそば」はズズッと啜れる「ざる」で、「丸そば」は温かいおつゆをかけた「かけ」でどうぞ。
そばを使った名物は他にも。そば粉と餅粉でつくり、じゅうねん(エゴマ)をまぶした「はっとう」も古くから食べ継がれてきた料理で、「山人料理」には欠かせません。ほんのりと甘く、もちもちとした食感が後を引く素朴な味わいが特徴です。
その昔、高貴な方が村を訪れた際に大層この料理を気に入り、村人が食べることはご法度とされたため「はっとう」と名付けられたという逸話が残されています。「裁ちそば」も「はっとう」の村内の旅館・民宿や飲食店でいただけるので、ぜひ体感して、逸話の真偽を自らの舌で確かめてみては?
【その3】綺麗な山と川の恵みを生かした特産品をお土産に
周囲を緑豊かな山々に囲まれ、村内にはいくつもの清流が通る檜枝岐村。その恵まれた自然環境を生かした特産品も外せません。
まずは、「サンショウウオの燻製」。檜枝岐村ではタンパク源として昔からサンショウウオがよく食べられてきたのですが、近年では旅館や民宿でも提供するようになり、滋養強壮に効果があると言われています。檜枝岐村ではサンショウウオは大事な資源で、乱獲して個体を減らしてしまわないように注意しています。「山の恵み」とともに生きてきた檜枝岐村の生活を垣間見ることができる名物です。
続いては、肉厚のシイタケと噛み応え抜群のキクラゲ、香り豊かな舞茸などの乾燥キノコ。シイタケとキクラゲは数年前に檜枝岐村にUターンした起業家が栽培しています。これもまた、檜枝岐村の山の恵みの1つです。
他にも新緑期の数週間しか採ることのできない貴重で純粋な栃蜜や、青シソやトウガラシといった山の幸を塩漬けにした「山人(やもーど)漬け」も、檜枝岐村ならではの味わい。「山人漬け」は村内の各家庭で受け継がれてきた伝統の味で、「裁ちそば」の薬味としてなど「山人料理」でも提供されています。
最後は500mlのペットボトル入りの「尾瀬の自然水」。尾瀬国立公園の広大な原生林の一枝一葉のしずくを集め、幾重ものフィルターをくぐり抜けた清らかな水で、口当たりのよさとまろやかさが自慢です。そのまま冷やして飲んでもよし、お茶やコーヒーを淹れるのに用いてもよし、ウイスキーや焼酎を水割りにするのにもよし。お好みに合わせて、味わってみては? 「尾瀬の自然水」でつくった「尾瀬の自然水ゼリー」も絶品です。
【その4】村人と交流して、のんびりとした生活を体感
檜枝岐村にはスーパーマーケットもコンビニエンスストアもありません。今でこそネット通販を利用できるようにもなりましたが、まとまった買い物をするためには隣の南会津町や少し離れた会津若松市や白河市、栃木県の那須塩原市まで出かける必要があります。
不便なこともある一方で、村の人々は仕事よりもプライベートを重視する傾向が強く、満員電車での通勤や長時間労働もないため、仕事が終わるとすぐに家に帰り、ある人はプライベートを充実させ、またある人は子どもとの時間を過ごすといったように、都会ではなかなか難しい生活を実現させている人が多いのも特徴。
また、人口が約500人と少ないため、住民全員で村の子どもたちを気にかける環境が成り立っています。地域で見守っていてくれるという安心感があり、またほとんどの人と顔見知りという関係性もあるため、誰かとすれ違えば元気にあいさつをする、素直な子どもが育つ環境なのも檜枝岐村ならではの魅力です。
ワーケーションで訪れたなら、そののんびりとした檜枝岐村の時間にどっぷりと浸かって、村の人々との交流も楽しむのがおすすめです。もしかしたら、ワーケーションだけではなく、2拠点目を檜枝岐村に置きたくなったり、あるいは子育て期間だけでも檜枝岐村に移住したくなったりするかもしれません。
檜枝岐村役場 総務課の星 満さんも「檜枝岐村は子育てにとてもよい環境なので村への移住は、子育て期間だけ住んでみようかなというくらいの気持ちで考えるのもいいと思います。リモートワークが可能な方でしたら、十分現実味がありますよ」と話しています。
【その5】代々受け継がれてきた「檜枝岐歌舞伎」を鑑賞
ここまで檜枝岐村の自然やグルメにフォーカスしてきましたが、最後は檜枝岐村独自の文化についてご紹介。
実は檜枝岐村には、古くから親から子へ、子から孫へと口伝えで受け継がれてきた「檜枝岐歌舞伎」があり、今でも春から秋にかけて上演されています。
その昔、お伊勢参りに行って檜舞台の歌舞伎を鑑賞した村人が、見よう見まねで村に伝えたのが始まりとされていて、江戸時代に書かれたとみられる「檜枝岐歌舞伎」の台本も残されています。役者から裏方までの全てが村人だけで継承されていて、今なお続いています。プライベートを重視する檜枝岐村らしさがここにも垣間見えると言えるかもしれません。
「檜枝岐歌舞伎」が上演される舞台は鎮守神社境内にあり、国の重要有形民俗文化財にも指定されています。フリーWi-Fiも利用できるため、神秘的な苔むす露天の観客席をワーケーションスポットとしても利用可能。例年5月12日、8月18日、9月の第1土曜日に上演され、檜枝岐村内の宿泊客は無料で鑑賞できるので、タイミングを合わせて訪れてみては?
2024年春にオープンしたワーケーション施設で、檜枝岐村生活を!
自然、グルメ、文化と魅力たっぷりの檜枝岐村に2024年3月、待望のワーケーション施設がオープンしました。遊休施設をリノベーションしたもので、その名も「つれづれラボ-25」。
よりワーケーションをしやすくなった檜枝岐村にまずは短期滞在して、ワークライフバランスを整えてみませんか? 都会での生活や働き方にイマイチ馴染めないという人には、特におすすめです!