日本の各地にある、“ふるさと”のような地域で働き、暮らし、そして遊ぶことができる制度「ふるさとワーキングホリデー(以下、ふるさとワーホリ)」。
今注目を集める若手俳優の一人、樋口幸平さんが宮城県石巻市で「ふるさとワーホリ」体験にチャレンジしてみました!
第1回では、一緒に体験する「ふるさとワーホリ」の学生スタッフ2人と合流し、親交を深めるまでに密着。今回は、いよいよ「ふるさとワーホリ」体験が始まります。
樋口さんたち3人による石巻市での仕事体験を、いざレポート!
【宮城県石巻市でふるさとワーホリ】石巻市と石ノ森章太郎先生との深いつながり
JR石巻駅で「ふるさとワーホリ」の学生スタッフ、通称・ワカモノメンバーの玉井日向子さんと高橋せらさんの2人と合流した樋口さん。
その後3人は「いしのまき MANGA lab. ヒトコマ」に移動して、石巻市の概要についての説明を受けました。
仕事体験はここ、「いしのまき MANGA lab. ヒトコマ」からスタートします。
「いしのまき MANGA lab. ヒトコマ」は、2023年10月にオープンしたばかりの、マンガやアニメ好きの人たちのための創作・交流活動の拠点です。
色々なイベントやワークショップを通してマンガやアニメと触れ合う機会をつくり、初めの「ヒトコマ」となるお手伝いをしている施設です。
ところで、JR石巻駅前に立ち並ぶさまざまなキャラクターのモニュメントもそうですが、なぜ石巻市にはこれほどマンガ・アニメ文化が根付いているのでしょうか?
その秘密は、石巻市とマンガ家・石ノ森章太郎先生との深いつながりにあります。
石ノ森先生は宮城県登米市中田町の出身。学生時代には、石巻市の中瀬地域にあった映画館まで、数時間かけて自転車で通っていたそうです。
そんな縁もあって、1995年に当時の石巻市長との対談が実現。対談の中で、シャッター街となっていた石巻市中心部に賑わいを取り戻すため、石ノ森先生とゆかりのある中瀬地域にマンガミュージアムを建てる構想が浮かびました。
石ノ森先生は1998年に60歳で亡くなられましたが、その意志は受け継がれてマンガミュージアムの構想は継続。2001年に、中瀬地域に無事「石ノ森萬画館」がオープンしました。
「漫画」ではなく「萬画」なのは、「漫画はあらゆるものを表現できる無限の可能性を秘めたメディアであることから、もはや『漫画』ではなく万物を表現できる『萬画』である」という石ノ森先生の理念からです。
また同時期に、JR石巻駅から「石ノ森萬画館」までの道のりに石ノ森先生のキャラクターのモニュメントなどが整備され、「マンガロード」と呼ばれる観光スポットに。
樋口さんが到着した時に駅前で目にした数々のモニュメントは、この「マンガロード」の一部です。
そんな経緯もあって、風光明媚な自然や豊かな海の幸だけではなく、石巻市は「マンガの街」としても知られることに。
「いしのまき MANGA lab. ヒトコマ」は、いつか「マンガの街」石巻市からマンガ家やイラストレーターを生み出すことを夢見て誕生した施設なのです。
子どもに教える前に、まずは自分でやってみよう!【いしのまき MANGA lab. ヒトコマで仕事体験編】
樋口さんたち3人が「いしのまき MANGA lab. ヒトコマ」で行う仕事体験は、訪れる地元の子どもたちに缶バッジ作りを指導すること。しかし、自分たちが作れなければ、子どもたちに教えることもできません。
ということで、子どもたちが来る前に、まずは樋口さんたち3人が実際に缶バッジ作りに挑戦。
ここでの缶バッジ作りは、元々用意されている58mm四方の下絵に色を塗り、塗った絵をバッジの部品と組み合わせて成型して完成させるというもの。
特徴的なのは、紙に印刷した下絵にアルコールマーカーで色を着けていくアナログ方式以外に、タブレットを使って着色するデジタル方式も可能なことです。
樋口さんと玉井さんはアナログ方式で、高橋さんはデジタル方式を選んで缶バッジ制作をスタート。まずは下絵選びから。樋口さんは、数ある下絵から迷いなくある1枚を選びました。
樋口 やっぱり石ノ森さんと言えば戦隊なので、ヒーローの絵を選びました!
見本を参考にしながら、ヒーローの絵に色を着けていく樋口さん。
スタッフから「一発勝負なので、失敗はできませんよ」と聞かされると、「やばい」と緊張した面持ちに。タブレットなので何度もやり直ししながら着色を進めていく高橋さんを、少し羨ましそうに横目で見る樋口さん。
時には「やっぱりタブレットに変えてもいいですか?」と冗談も交えながら下絵と格闘を続けていたところ、突然樋口さんが声を上げました。
樋口 最悪、間違えた!
塗る色を間違えてしまったようです。新しい下絵をもらい、やり直し。3人とも無口になり黙々と作業を続けること30分、ついに3人共着色を終えることができました。
その後、絵をくりぬいて、専用の機械を用いて缶バッジの部品と組み合わせて、無事完成!
樋口 久々にやると、楽しいですね。
満足いく出来栄えのようですが、まだこれは練習。本番は、これから訪れる子どもたちに缶バッジ作りを教えることです。
子どもたちに缶バッジ作りを指導。そして……
樋口さんたち3人が缶バッジ作りを終えた後しばらくすると、子どもたちが来館。
地元の小学校に通う同学年の男の子と女の子の2人です。樋口さんは、すぐに子どもたちとコミュニケーションを開始。
樋口さんもマンガが好きで、『進撃の巨人』(講談社)や、サッカーをしていたこともあって『ブルーロック』(講談社)などを愛読しているそう。
樋口 マンガ読むの?
男児 読む!『ポケモン』(テレビ東京系列)と『クレヨンしんちゃん』(テレビ朝日系列)!
女児 『ポケモン』。
樋口 「仮面ライダー」は見てた?
男児 昔見てた。
樋口 じゃあ、僕が出演していた『暴太郎戦隊ドンブラザーズ』も見てくれてた?
男児 うん!お母さんが会いたがってた!
樋口 うわぁ!お母さんも一緒に来てくれたらよかったのに。
男児 お母さん、今日は仕事!
みんなマンガが好きだったこともあってすんなりとコミュニケーションが進み、早速缶バッジ作り開始。
しかし、ここでアクシデント発生。男の子も女の子も、樋口さんが体験したアナログ方式ではなく、デジタル方式のタブレットを選択してしまいました。
樋口 教えてあげたいけど、さっきアナログ方式でやったから分からないんだよな……。
やや困惑しながらも、指導を開始。まずは下絵選びから。
すると男の子が、樋口さんがさっき選んだ下絵と全く同じヒーローの絵を選びました。これには樋口さんも笑顔。
樋口 やっぱり男の子はヒーローだよな!
男同士、何か通じるものが芽生えたところで、着色開始。
樋口さんは「めっちゃ上手いじゃん!」と、子どもたちに何度も声をかけています。樋口さんの褒めて伸ばす方針がマッチしたのか、子どもたちは大きな失敗もすることなく、15分程度で絵を塗り終えました。
デジタル着色なので色を塗った絵は、紙にプリントします。
くりぬいた後、缶バッジの部品と組み合わせるのは子どもたちだと失敗する可能性があるということで樋口さんたち3人が代行し、見事完成!
子どもたち2人は出来上がったばかりの缶バッジを手に、うれしそうな表情。帰っていく2人の背中を、樋口さんはいつまでも見守っていました。
樋口 指導するというより、子どもたちと同じ目線で一緒に楽しもうと思いました。
樋口さんはこう話し、少し照れくさそうに笑いました。実は石ノ森先生も若い頃、描いたマンガを姉がよく褒めてくれたそうです。そばで褒めてくれる存在が、人の能力をすごく伸ばしてくれるのです。
樋口さんは知らず知らずのうちに子どもたちにとって、石ノ森先生の姉のような存在になっていたのかもしれません。
「いしのまき MANGA lab. ヒトコマ」での仕事体験は、これで終了。次は、「マンガの街」としての石巻市のシンボルとも言える、「石ノ森萬画館」での仕事体験です。