テレワークや二拠点生活などの広がりから、身近になりつつある移住。群馬県は移住希望地の上位にランキングする県で、移住を考えている方から注目されている。
この記事では、群馬が移住人気を集める理由や移住を成功させるポイント、主な移住支援制度(補助金)、おすすめの自治体(市町村)まで詳しく紹介する。
移住する前に知っておきたい群馬県の基本情報
移住を決める前に、群馬県がどのような県か知ることが大切だ。地理や気候、産業などを把握すれば、移住のイメージを膨らませやすくなる。まずは、群馬県の基本情報から押さえていこう。
地理
群馬県は、日本のほぼ中央に位置する県だ。地形が鶴に似ていることから「つる舞う形の群馬県」といわれている。
面積は約6362km²で、全国で21番目の広さである。県土の6割は森林を占め、山々や湿原、湖沼、渓谷など自然に恵まれている。
県庁所在地である前橋市を中心に、35の市町村がある。
北部と西部の県境には山岳、南東部には関東平野があり、立地によって環境や気候が異なるのが特徴だ。
参考:地勢・気象|群馬県
参考:群馬県のまちづくりと市町村合併|群馬県
人口
群馬県の人口は、令和3年10月1日時点で1,927,000人だ。全国的には第18位に位置し、比較的人口が多い県と言える。
人口構成は、0~14歳が11.5%、15~64歳が58.0%、65歳以上が30.5%。15~64歳の割合は全国で第15位に位置し、現役世代が多い県である。
気候
群馬県の気候は、山地が多い北部と西部、平野が多い南部で異なる。北部と西部は、山間部特有の冷涼な気候。夏は過ごしやすいものの、冬は寒さが厳しく積雪が多い。
一方、南部は標高差が少なく、夏は気温が非常に高くなる。強い日差しが空気を温め、山を上がって雷雲が発生しやすいため、雷が多いのも特徴だ。
冬には、乾燥した季節風「空っ風」が吹き、体感温度は低く感じるだろう。
産業
群馬県には、地域に根ざした地場産業が数多くある。
- 食に関する産業
酒造業、製麺業、こんにゃく製品製造業、漬物・惣菜製造業など
- 繊維に関する産業
小幅織物製造業や広幅織物製造業、ニット・メリヤス製造業など
- 木製品に関する産業
家具・インテリア製造業や建具製造業など
伝統工業も古くから続けられ、だるまやこけし、瓦などが製造されている。
地場産業を中心に、文化や技術の継承はもちろん、就労機会の創出、所得水準の改善、ブランドの創造などを図っている。都心に近い立地を生かし、観光資源を生かした産業も盛んだ。
群馬に移住したくなる5つの魅力
群馬に移住したくなる魅力は、以下の5つだ。
- 物価が比較的安い
- 多くの温泉がある
- 都心にアクセスしやすい
- 子育て環境が整っている
- 空き家が多く住居探しがしやすい
日々の暮らしや余暇、子育て、住まい探しなど、さまざまな面で多くのメリットがある。魅力を知り、移住を前向きに検討してみよう。
物価が比較的安い
総務省では、例年消費者物価地域差指数として、地域別の物価を公表している。
令和3年の結果によると、群馬県は宮崎県に次いで、全国で2番目に物価が低い県である。全国平均100に対して、群馬県の指数は96.6、前橋市の指数は96.5だ。
物価を評価する項目は、住居、食料、教養娯楽、光熱・水道、教育、交通・通信、諸雑費、保険医療、家具・家事用品、被服及び履物の10項目で、群馬県は全体的に低い水準である。
食費や光熱水費を抑えやすいだけではなく、住居の指数が低いことから、住居に関わる固定費も節約しやすいだろう。
多くの温泉がある
群馬県は、多くの温泉があることから「温泉王国」と呼ばれている。全国的にも有名な草津温泉や伊香保温泉をはじめとして、磯部温泉や万座温泉など県全域に魅力的な温泉がある。
温泉の泉質は10種類に分けられ、多種多様な温泉を楽しめる。日帰りで入浴できる温泉も多く、日々の疲れを癒したり、息抜きに県内で温泉旅行に出かけたりできるのが魅力だ。
都心にアクセスしやすい
群馬県は、都心部から近い立地にあり、東京都へは関越自動車道で約1時間、上越新幹線・北陸新幹線で約50分でアクセスできる。
ほかの県へもアクセスしやすく、新潟から電車で約1時間20分、名古屋から電車で約2時間40分ほどで行くことができる。
自然に恵まれた群馬県で暮らしつつ、ショッピングやレジャーで都心に出かけるなど、バランスの良い生活を楽しめるだろう。
子育て環境が整っている
群馬県では、子育て世帯を対象にした制度が豊富に揃っている。
出産に対する出産育児一時金、保育に対する第3子以降3歳未満児保育料免除、私立幼稚園における保育料の補助などを実施。教育資金や医療費、就労など幅広くサポートを行っている。
また、ひとり親家庭や障害のある子どもがいる家庭など、さまざまな境遇の世帯を援助しているのも特徴だ。主な制度については、以下のページを確認してほしい。
参考:「子育て」に関するお助け制度一覧|ぐんまスマイルライフ
空き家が多く住居探しがしやすい
移住で気になる住居だが、空き家を活用したい方にとっては、群馬県は住まい探しをしやすい県だ。
平成30年の住宅・土地統計調査によると、県内の空き家数は158,300戸で、空き家率は16.7%となっている。
空き家率は全国平均の13.6%よりも高く、全国では12番目に位置している。
県内の市町村では空き家バンクを運営している。
また、県では50歳以上の方のマイホームを一般社団法人移住・住みかえ支援機構が借り上げ、3年の定期借家契約により貸し出す事業も行っているため、空き家の活用をしやすい環境だ。
参考:空き家関連情報|群馬県
群馬移住に失敗・後悔しないための注意点4つ
移住を検討する人が年々増えているが、移住後に後悔する例も多い。その原因の多くは、下調べが十分ではなく、現実とのギャップが広かったためだ。
ここでは、群馬移住に失敗・後悔しないための注意点を4つ解説していく。
- 仕事探しを早めに始める
- 車の用意が必要
- 県内のイベントが少ない
- 気温が高い日に気をつける
仕事探しを早めに始める
都心部と比較すると、群馬県の求人数は少ない。有効求人倍率こそ全国的にやや高いが、仕事の選択肢は狭くなりやすい。
群馬に限ったことではないが、移住先での生活を安定させるためにも、仕事探しを早めに始め、転職が決まってから移住するのが重要だ。
仕事探しでは、収入はもちろん職場環境も慎重に調べたい。地方だからアットホームな職場とは限らないため、自分に合った働き方ができる仕事を探すのがおすすめだ。
車の用意が必要
都心部や他県にアクセスできる交通手段はあるものの、県内での移動は自家用車がないと不便が多い。
都心に比べると、バスや電車などの交通網は劣るため、日々の通勤や買い物、レジャーなどのために自家用車を用意しておきたい。
新たに自家用車を用意するためには、初期費用と維持費用が必要だ。頭金や車検料、ガソリン代など、車にかかる費用を想定して移住の準備を進めよう。
県内のイベントが少ない
県内でのイベントは少なく、コンサートなどの大規模なイベントは県外で開催されることが多い。お目当てのイベントに参加するためには、県外に移動する必要がある。
ただ、アクセスしやすい東京都ではイベントが多いため、足を伸ばせば参加できる立地だ。時間と費用はかかるものの、イベントと無縁な県ではない点は安心しよう。
気温が高い日に気をつける
群馬の気候は、夏は暑く、冬は寒いという特徴があり、特に夏の暑さには注意したい。2022年6月には伊勢崎市で40℃を記録し、猛暑日を記録する日も多い。
十分な暑さ対策をしないと、大人はもちろん子どもの体調不良も起こりやすい。
夏場は、昼間の外出を控える、エアコンで温度管理をするなどの対策が必要だ。暑さに慣れていない方にとっては、移住先として辛い環境であることも考えられる。
群馬で実施している主な移住支援制度
群馬では、移住者をサポートするために、支援制度やイベントを実施している。移住者の相談を受け付けたり、暮らしを体験できたりするなど、どれも移住に向けて役立つ制度ばかりだ。
5つの移住支援制度について、詳細を解説する。
- 移住イベント・フェア
- ぐんま暮らし支援センターでの相談サポート
- ぐんま移住・暮らしサポーター
- お試し住宅
- 移住支援金
移住イベント・フェア
移住に向けた情報収集で役立つのが、移住イベントやフェアだ。群馬県で開催されているイベントの情報は、移住ポータルサイト「ぐんまな日々」で更新されている。
例えば、テレワーカーと公務員が高崎市の魅力を語る「Uターン女子会」、地域おこし協力隊の活動報告会などが実施されている。
オンラインで参加できるイベントも多いので、ぜひチェックしてみてほしい。
ぐんま暮らし支援センターでの相談サポート
ぐんま暮らし支援センターでは、オンライン移住相談と対面相談を実施している。
オンライン移住相談は、オンライン会議システム「ZOOM」を活用し、スマートフォンやパソコンから相談員への相談が可能だ。
対面相談は、火曜日から日曜日、10時から18時の間に、ぐんま暮らし支援センターで受け付けている。予約制となっているため、あらかじめ都合の良い日に予約を入れよう。
ぐんま移住・暮らしサポーター
群馬移住をサポートする存在として、移住ポータルサイトにぐんま移住・暮らしサポーターを掲載している。
移住コーディネーターやコンシェルジュのほか、各市町村で活躍する人物も掲載し、SNSのリンクから活動内容を確認できる。
また、みなかみ町地域おこし協力隊OBの鈴木さんは、LINEオープンチャットでの移住相談を受け付けている。詳しくは、こちらを確認してみよう。
お試し住宅
現地での暮らしを体験できるお試し住宅を市町村ごとに実施している。お試し住宅を提供しているのは、富岡市、安中市、南牧村、甘楽町、中之条町、東吾妻町、沼田市、桐生市だ。
例えば、沼田市では、移住促進トライアルハウス-ぬまた暮らしの家-を用意している。1泊2日から4泊5日まで無料で利用でき、自然豊かな沼田市の暮らしを体験できる施設だ。
市町村によって、用意している施設の内容が異なるので、あらかじめチェックしておこう。
移住支援金
群馬県では、一定の条件を満たし移住した方を対象に、移住支援金を支給している。群馬県移住支援金事業では、条件を満たした単身の方に60万円、世帯に100万円を支給。
18歳未満の子どもがいる世帯には、ひとりにつき30万円※が加算される。
※2023年度4月より1世帯につき最大100万円の支給に加え、18歳未満の子どもに対する支援金がひとりあたり最大30万円から100万円に加算される予定
申請方法は、就職する場合、起業する場合、テレワークをする場合などで変わる。申請方法や条件は、こちらのページであらかじめ確認しておこう。
群馬移住におすすめ!移住支援制度や補助金充実の自治体(市町村)10選
群馬には、移住をおすすめしたい自治体(市町村)が多くある。その中でも、10の自治体を紹介する。自治体の特徴や支援制度をチェックしていこう。
- 前橋市(まえばしし)
- 高崎市(たかさきし)
- 伊勢崎市(いせさきし)
- 沼田市(ぬまたし)
- 太田市(おおたし)
- 桐生市(きりゅうし)
- みどり市
- みなかみ町
- 片品村(かたしなむら)
- 上野村(うえのむら)
前橋市(まえばしし)
出典:前橋市の移住・定住総合サイト
前橋市は、県庁所在地であり、県のほぼ中央に位置している。オフィスビルや商業施設、公共交通機関が充実しつつ、山間部がある、都会暮らしと田舎暮らしを両立した立地条件だ。
市民220人につき医師ひとりがいるのは、中核市のうち第4位の数字。医療施設も充実し、万が一のときにも安心だ。
保育関係施設の待機児童数はゼロで、働きながらの子育てがしやすい環境と言える。
移住支援として、前橋移住コンシェルジュを配置している。移住に向けた相談や移住後のアフターフォローを行っているサポートだ。
オンライン移住相談会も毎月開催し、どこからでも情報収集を進められる。
高崎市(たかさきし)
出典:高崎市移住情報
高崎市は、関東平野の北端に位置する市。内陸に位置し、広大な平野に面している立地を生かし、農業が盛ん。お米や野菜、梅、梨、鶏卵などが生産されている。
また、北関東工業地域に含まれ、10以上の工業団地を形成。大型商業施設も多く、産業に恵まれた市だ。
市のシンボルである白衣大観音がある観音山までは、高崎駅から車で約10分ほど。公園や社寺、遊歩道などがあり、里山の自然を満喫できる。
パパ・ママをサポートするため、子育てなんでもセンターを設置し、子育てSOSサービスも提供している。
移住支援金や空き家活用促進改修助成金など、各種補助金を用意しているのも嬉しいポイントだ。
伊勢崎市(いせさきし)
出典:移住・定住|伊勢崎市
伊勢崎市は、前橋市や高崎市などの主要都市に囲まれた、関東平野の北西部に位置している。地形はほぼ平坦だが、周囲に山岳や丘陵、河川など、自然に恵まれているのが魅力だ。
移住支援として、伊勢崎市移住支援金事業補助金や伊勢崎市空き家情報バンクなどを用意。
伊勢崎市移住支援金事業補助金は、単身世帯60万円、2人以上の世帯100万円が補助金額だ。子育て世帯に対して18歳未満の子ども1人あたり30万円を限度に加算している。
沼田市(ぬまたし)
出典:Numata life
沼田市は、市域の約8割を森林が占める市。総面積は県全体の約7%に相当し、広大な土地と内陸性の気候を生かし、フルーツや野菜が盛んに生産されている。
上越新幹線や高速道路を活用すれば、東京都へのアクセスが便利。
また、沼田市は待機児童が少なく、第3子以降の保育料が無料化されているため、子育て世帯の移住にもぴったりだ。
ほかにも、移住コンシェルジュによるサポート、トライアルハウスでの移住体験、新幹線通勤費補助など、多種多様な支援を実施している。
太田市(おおたし)
出典:おおた暮らし
太田市は、県の南東部に位置し、有数の工業都市として広く知られている。
東洋経済新報社が発表している住みよさランキングでは、2008年から9回連続県内1位を獲得し、移住者に注目されている市だ。
太田駅に太田市美術館・図書館がオープン、市内にプロバスケットボールチームが移転するなど、目まぐるしく発展し、活気にあふれている。
子育て支援が豊富で、子育て世帯に安心の市と言えるだろう。
児童医療費の助成や、第2子以降給食費助成事業、第3子以降子育て支援事業など、さまざまな世帯を助けるサポートが揃っている。
桐生市(きりゅうし)
出典:移住・定住情報|桐生市
桐生市は、栃木県との県境に位置している。織物産業が古くから盛んで、日本らしい歴史を感じる街並みが広がっている。
入園料無料の遊園地・動物園、屋内温水プールなど、家族で遊べる施設が多いのも魅力だ。
また、未来創生塾やサイエンスドクターといった特徴的な教育プログラムを実践しているため、子育てに力を入れたい方にも向いている。
子育て支援が充実していることに加え、住宅支援も豊富に整えているのが特徴だ。住宅リフォーム助成や空き家利活用助成など、さまざまな住まい探しの形をサポートしている。
みどり市
出典:移住・定住|みどり市
みどり市は、県の東部に位置している。平成18年に笠懸町、大間々町、東村が合併した市で、桐生市や太田市など7市と接している立地だ。
市の名前の通り、山々や渓谷、湖など美しい自然が広がっている。親水公園やキャンプ場、遊歩道など、アウトドアやレジャーを楽しめるスポットが多い。
ショッピングセンターや病院、学校などの施設も多く、暮らしに困ることは少ないだろう。
子育てを応援するために、市立小中学校の給食費は無料。子育て応援アプリの配信、お出かけマップの作成、中学3年生までの医療費助成など、充実のサポートが魅力だ。
みなかみ町
出典:移住・定住|みなかみ町
みなかみ町は、県の最北に位置している町だ。谷川岳・三国山の麓にあり、利根川の源流域にあることから、上質な水がある地域としても知られている。
清流を舞台にした、ラフティングや釣りなども人気のアクティビティだ。
みなかみ18湯という18の温泉が有名で、特徴の異なる温泉やそこに広がる景色を楽しむことができる。
移住検討の際に気になる交通費を援助するために、レンタカー料金の一部を補助しているのが特徴的だ。1回の視察あたり1日3,000円の補助を最大3日間受けられる。
新幹線通勤費補助金も実施しており、みなかみ町に住みながら都心に通勤するスタイルも叶えられるだろう。
片品村(かたしなむら)
出典:すてきなカタシナ暮らし
片品村は、尾瀬国立公園や日本百山に数えられる3つの山岳を有する、自然豊かな村である。豊かな自然は季節ごとに表情を変え、冬には雪景色やウィンターアクティビティを楽しめる。
大根やトマト、レタス、豆類などの栽培が行われ、農業が盛んだ。観光農園を推進する展望もあり、農業の将来が明るく、就農を希望する方の移住先の選択肢になるだろう。
移住者支援のなかでは、主に子育て支援が充実。2歳以上の保育料は無料、2子以降の小学校の給食費は無料など、子育て世帯を手厚くサポートしている。
上野村(うえのむら)
出典:上野村
上野村は、総面積の9割以上が山野を占める村。「小さくても輝き続ける村」を目標に、移住促進に向けた村営住宅の整備、森林バイオマスによる循環型社会の形成などに取り組んでいる。
子育て支援が多く、誕生祝い金、がんばる子育て応援手当、入学祝金など、補助金の種類が豊富だ。
そのほかにも、後継者定住対策として生活補給金や、結婚祝金などの助成制度がある。
人気急上昇中の群馬への移住を考えてみよう
移住希望地調査で上位にランクインする群馬には、移住者に嬉しい魅力が詰まっている。
物価が比較的安い、温泉が多い、都心にアクセスしやすい、子育てしやすいなど、暮らしやすい条件が整っている。
一方で、夏場の気温が高い、移動に車が必要など、注意点もいくつかある。気をつけたいポイントを知っておけば、移住に向けた準備がしやすくなる。
おすすめの自治体(市町村)を参考にして、群馬で暮らしたいまちを見つけよう。