ふるさとワーキングホリデーは、通常の観光では味わうことができない地域の人々との交流や暮らしを体験できる制度です。地域に貢献することができるなど、さまざまなメリットがありますが、制度には批判の声もあるようです。
この記事では、ふるさとワーキングホリデーに関する声やメリット、今後の課題について紹介していきます。
ふるさとワーキングホリデー制度をおさらい
ふるさとワーキングホリデーは、2017年に総務省が始めた制度です。都市部に住んでいる人が日本国内のさまざまな地方を訪れ、地域の仕事をしながらその土地の人たちとの交流や学びを通じて実際に地域の暮らしを体験します。
受け入れ先は「地域の魅力を知ってもらいたい」「交流人口を増やすことで地域を活性化したい」「地域の良さをもっと知って多くの人に移住・定住してほしい」という思いを持って参加者を受け入れます。
地域を知りたいという想いと、地域を知ってもらいたいというふたつの想いを結びつけるのがふるさとワーキングホリデーです。
ふるさとワーキングホリデーが批判される理由
ふるさとワーキングホリデーの開始時には、この制度についてさまざまな意見が集まりました。
「ワーキングホリデー」という言葉を使っているため、海外に住んで現地で働ける制度を連想する人が多く、ふるさとワーキングホリデーの目的に疑問の声が寄せられたからです。
本来の「ワーキングホリデー」と異なる
ワーキングホリデーは、18歳から30歳までの若者が海外で1年から2年生活しながら働ける制度です。この制度はお互いの国の文化や生活様式を理解し合うことを目的に始まりました。
外務省のサイトによると、ワーキングホリデーは「休暇を目的とした入国及び滞在期間中に、旅行や滞在費用を補うための付随的な就労が認められる制度」とされています。
ワーキングホリデーの本来の目的は休暇を楽しむことが主であり、仕事に重点をおくワーキングホリデーは批判の対象になりました。
しかし、ふるさとワーキングホリデーは国や自治体によって行われる公的な制度であり、参加者はふるさとワーキングホリデーの本来の目的を理解して申し込んでいます。
さらに、総務省が合同説明会を開催したり、各実施団体が説明会を行ったりすることで、地域の取り組みを理解し、納得した上で参加できるようにしています。
長期休暇を利用して働くことへの矛盾
ワーキングホリデーは、長期休暇を目的とする制度ですが、ふるさとワーキングホリデーに関しては、地域への貢献を目的として働くことに疑問を抱く人も多いです。
制度が始まった当初は、「休暇に若者を働かせるのは矛盾を感じる」といった批判がありました。実際に、ワーキングホリデーの本来の目的とは異なるという声もありました。
若者の労働力を利用しているのではないか
ふるさとワーキングホリデーは、若者の労働力をあてにしている制度ではないかと言う人もいました。若者が持っている長期休暇に労働させるのか、との批判がありました。
ふるさとワーキングホリデーのメリット
ふるさとワーキングホリデーが始まる前は批判の声もありましたが、この制度にはさまざまなメリットがあります。
多様なスキルや知識を習得できる
ふるさとワーキングホリデーは、都市部では体験できないさまざまな仕事に携わることができる制度です。
仕事は、農業や漁業、その地域の特色や魅力を活かした産業など、幅広い分野の募集があります。ふるさとワーキングホリデーのポータルサイトを確認してみると、募集の団体は北海道から沖縄までで、仕事内容も多種多様です。
例えば、宮城県石巻市でワカメ・コンブを使った商品づくりのお手伝い、長野県伊那市でアルストロメリア(花)の収穫・栽培管理、沖縄県中頭郡での幼稚園教諭・学童支援など。
これまで行ったことがない仕事や、自分のスキルを活かせる仕事などの中から選ぶことができます。
ふるさとワーキングホリデーを通してさまざまな仕事を体験することで、新しい仕事のスキルや知識を身に着けることができたり、現在の仕事のスキルアップできたりするのはメリットと言えるのではないでしょうか。
地域の活性化に貢献できる
ふるさとワーキングホリデーの目的の一つは、地方の活性化です。人口減少による過疎化に悩む地域では、ふるさとワーキングホリデーを通じ多くの人にその土地の魅力を知ってもらい、地域の活性化につなげたいと考えています。
ふるさとワーキングホリデーに参加することで、その土地独特の文化や地方ならではの生活を体験することができます。
さまざまな経験を通じて、地域の活性化に貢献できることはやりがいを感じることでしょう。
移住後の暮らしをイメージできる
リモートワークの普及などにより、ここ数年で働き方や暮らし方を見直す人が増えてきています。ふるさとワーキングホリデーは、働きながら地方への移住体験ができる制度です。
移住を考えるうえでの悩みに「自分が地域に溶け込めるのか」「地方での暮らしに馴染めるのか」という点があります。ふるさとワーキングホリデーでは移住希望地で実際の暮らしが体験できるため、移住後の暮らしがイメージできます。
ふるさとワーキングホリデーの活動期間は、自治体によって異なりますが、通常は2週間~1ヶ月ほどです。
その期間、地元の人たちとのコミュニティを含めた地域性などを体験できるため、移住を検討している方はぜひふるさとワーキングホリデーに参加してみてください。
自分の可能性に気づける機会になるかもしれない
ふるさとワーキングホリデーは、人生を豊かにする貴重な体験になります。日本全国のふるさとで募集している仕事は、地元では体験できない内容のものが多くあります。
地域に貢献できる喜びややりがいを感じることができるのも、かけがえのない経験となるはず。そして、ふるさとワーキングホリデーを通じて、将来の夢が見つかるかもしれません。
さらに、ふるさとワーキングホリデーに参加し、地域の幅広い年齢層の人たちと交流することや他の参加者と協力しあっていくなかで、新たな自分を発見できる可能性もあります。
ふるさとワーキングホリデーは、自分の潜在能力に気づける機会になるかもしれません。
ふるさとワーキングホリデーの現在
2017年に始まったふるさとワーキングホリデーですが、現在は批判的な声はそこまで大きくありません。
アクティブシニア世代の参加を開始
これまでふるさとワーキングホリデーでは、年齢制限に特定の規定はありませんでした。ただし、多くの団体は18歳以上または20歳以上で、上限年齢は30歳や40歳の人を対象に募集していました。
総務省は、2024年度から退職後の「アクティブシニア層」の参加を促すモデル事業を行うと発表しました。時間的に余裕のあるアクティブシニア層は、通年で地域を訪れることができますので、学生が動けない時期に地域の仕事を手伝ってもらうことが目的です。
最初は、約10自治体程度での実施を検討しています。
参加者が確実に増えてきている
2023年3月時点で、これまで約4,300人がふるさとワーキングホリデーに参加しています。そして、地域での暮らしをした人たちの91%が満足し、81%が再訪意向があるという結果が出ています。
総務省によれば、多くの参加者は10代や20代の若者なので、今後はアクティブシニア向けのモデル事業を通して参加者の裾野を広げたいと考えているようです。
定住に結びつくためにどうしたらよいのか課題
ふるさとワーキングホリデー事業を通じて4,300人が地域での暮らしを経験していますが、任期終了後にその地に移住したのは約100人です。
その割合は全体の約2.4%と少ないのが現状。今後、ふるさとワーキングホリデーを通じて、地域への移住・定住に結びつくためにはどのような対策が必要なのかが課題です。
ふるさとワーキングホリデーに参加するための流れ
ふるさとワーキングホリデーに参加するための流れをご紹介します。
ふるさとワーキングホリデーのポータルサイトから気になる募集を探す
ふるさとワーキングホリデーを検討し始めたら、ポータルサイトでふるさとワーキングホリデーの仕組みや参加者の生の声が記載されているので、確認してみてください。
次に、検索ページで気になる仕事を探します。ポータルサイトでは、働くエリア・実施時期・滞在期間・仕事・シフトに絞り込んで検索できるようになっています。自分の理想の働き方に合わせて探してみましょう。
参加申し込みをする
気になる求人を見つけたら、求人ページの「お問い合わせはこちら」ボタンをクリックして手続きを行いましょう。求人先によっては、各地方での説明会が開催されていて、自治体の担当者と対面で話をすることができます。
説明会への参加は自由ですが、担当者から注意事項が聞けたり地域の人たちの声が聞けたりすることもあるため、ぜひ参加してみてください。
面談を行って結果を待つ
説明会で心配事を解消し、注意点などを確認したら参加申し込みをしましょう。参加申し込みが完了したら、面接を行って正式決定を待ちます。
ふるさとワーキングホリデーの募集人数は、一般の求人と同じように定員が決まっているため、申し込んでも必ず参加できるわけではありません。
決定後は参加のための準備をする
ふるさとワーキングホリデーに参加できることが決まったら準備を始めましょう。担当者と相談しながら日程や宿泊先などを決めていきます。
宿泊費は受け入れ先で用意してくれる場合や、参加者が自分で手配する場合があります。申し込んだ団体の募集ページに詳細が記載されているので確認してください。
ふるさとワーキングホリデーに参加してみよう
ふるさとワーキングホリデーは、働きながら地域を知りながら仕事ができる制度です。その土地の魅力に触れて地域に貢献できるのは、ふるさとワーキングホリデーの魅力。
ふるさとワーキングホリデーが始まるときは、さまざまな批判の声があがりましたが、制度が始まり参加者が増えてくると、批判の声は減っていきました。
ふるさとワーキングホリデーに参加してみたいと思ったら、ポータルサイトなどで制度を理解し、納得したうえで申し込んでみてはいかがでしょうか。