地方への移住を検討するなかで「地域おこし協力隊」を考えている方もいるでしょう。また、旅やワーケーションなどで訪れた地域で何かできないかと考え、地域おこし協力隊に興味を持った方もいるかもしれません。今回は、参加するためにはどのような条件があるのか気になっている方へ、応募の条件と積極的に地域おこし協力隊を募集している自治体をご紹介します。
地域おこし協力隊とはどんなもの?
地域おこし協力隊とは、2009年にスタートした総務省が推進する地域活性化事業の取り組みのひとつです。
利用者としては、収入を得ながら地域で暮らしながら移住への準備ができたり、事業を継承するなどして、地方に貢献できるというやりがいを感じられるメリットがあります。
自治体側からは、利用者が地域おこし協力隊を通じて地域の魅力に気付き、移住・定住することにより人口増や地域の活性化が期待できる制度です。
地域おこし協力隊に応募するための条件
地域おこし協力隊は、自治体によって活動内容や待遇、条件などが異なります。応募する前にしっかり確認しておきましょう。
3大都市圏か政令指定都市に住民票がある
地域おこし協力隊募集に参加するためには、『三大都市圏か政令指定都市に現在住んでいること、さらに任務先が決定したら住民票を移すこと』という条件があります。
- 3大都市圏
埼玉県・千葉県・東京都・神奈川県・岐阜県・愛知県・三重県・京都府・大阪府・兵庫県・奈良県
- 政令指定都市
札幌市・仙台市・新潟市・さいたま市・千葉市・横浜市・川崎市・相模原市・静岡市・浜松市・名古屋市・京都市・神戸市・大阪市・堺市・広島市・岡山市・福岡市・熊本市・北九州市
年齢制限
地域おこし協力隊は、ほとんどの自治体が年齢制限を設けています。多くの自治体は20歳以上であることを条件としていますが、上限はおおむね40歳までや50歳まで、60歳までとしている自治体もあります。
年齢制限が設けられている理由は、地域おこし協力隊には「地方に若者が定着し、地域の活性化を促すため」という目的があるためです。
しかし、年齢に関係なくその地域に魅力を感じ、地域のためになる仕事をしたいという方もいるため、年齢制限を設けていない自治体もあります。
任期の制限
地域おこし協力隊は、いつまでも好きなだけ働けるわけではありません。自治体によって人気は異なりますが、1年~3年の期間を設けている所が多いです。
1年間の期間であったとしても、勤務実績により双方協議のうえで最長3年まで延長する場合もあります。
応募条件に「任務終了後も定住し、起業または就業する意欲がある者」などと記載されていることがあるので確認しておきましょう。
免許やスキルの有無
自治体によっては、地域おこし協力隊に参加するために「運転免許証を所有し、日常的に車を運転している」「パソコン(ワード・エクセル)の一般的な操作ができる」ことを条件に掲げているところがあります。
地域の活性化のためにSNSで情報を発信できるなど、細かい条件が掲げられている場合もあるので確認が必要です。
制度への理解・意欲
地域おこし協力隊に参加するためには、地域おこし協力隊という制度を理解していることが必要です。どのような目的でこの制度があるのか、自分はどのような目的で参加したいと考えているのかが明確でなければなりません。
募集対象の項目に「地域になじむ意思があり、住民とともに地域活動に積極的に取り組む意欲がある方」「心身ともに健康で誠実に業務に臨める方」などと記載されている場合があります。
地域のイベントや活動に積極的に参加することも、地域おこし協力隊の条件です。
地域おこし協力隊に参加するメリット
地域おこし協力隊に参加することにはどのようなメリットがあるのでしょうか。
地域社会に貢献できる
地域おこし協力隊に参加するメリットのひとつとして、地域の活性化に貢献できるということがあります。地方の都市では、少子高齢化などで人口が減りつつあり、働き手や後継者が不足しているのが現状です。
地域おこし協力隊に参加することで、地域が直面している問題解決に貢献できるのは大きなやりがいとなるでしょう。
そして、地域おこし協力隊で仕事や地域のイベントなどを通じて地域の人たちと繋がることができます。地域おこし協力隊に参加しなければ出会うことができない人脈を作ることができるのも、メリットのひとつです。
新しい働き方が体験できる
地域には、農業や漁業、伝統工芸などの産業があります。その土地ならではの伝統工芸や、地方ならではの仕事を体験できるのは、地域おこし協力隊の特徴です。
移住先で担い手が不足している農業や漁業などを仕事として暮らしていくことを考えている方には、実際に地方での暮らしと仕事の両方を体験できる良いチャンスではないでしょうか。
移住を実現するためのステップになる
移住を検討している段階で気になるのは「その土地に馴染めるのか」「自分に合っているか」などがあるでしょう。
地域おこし協力隊に参加することで、実際にその土地での暮らしを体験することができます。移住後の生活は、実際に住んでみないと分からない部分があります。
地域おこし協力隊の制度を活用して、移住候補地で人脈を広げたり情報を集めたりできるのは大きなメリットです。
地域おこし協力隊を募集している自治体
地域おこし協力隊を積極的に募集している自治体をご紹介します。現在は募集を終了している自治体もあるかもしれませんが、活動内容や募集の条件の参考にしてみてください。
【新潟県】三条市(さんじょうし)
新潟県の真ん中に位置する三条市は、金属加工が盛んで「ものづくりのまち」として知られています。街の中心地にはスーパーやコンビニがあり便利な一方、山や川もあるためアウトドア好きな方におすすめの街です。
三条市では、「NPO法人ソーシャルファームさんじょう」の職員として、三条市下田地域の活性化事業に取り組んでくれる人を募集しています。
任期終了後は三条市への移住の意思がある方が条件で、移住後は最大100万円の地域おこし協力隊起業支援補助金や、住居サポート、地元企業への就職支援などで移住をサポートしてくれます。
【長野県】麻績村(おみむら)
長野県麻績村は、長野県のなかでも三番目に小さな村です。長野市と松本市の中間に位置し、村内に高速道路のICやJRの駅があるため移動しやすい村。
かつては善光寺街道の宿場として賑わっていた村で、現在でも伝統行事や文化遺産が多く残っています。
麻績村は、農業の後継者不足という問題に直面しています。この問題を解決すべく、後継者育成支援団体の「NPO法人おみごと」と連携し、農業に興味がある人を迎えて農業後継者の育成活動を積極的に行っています。
麻績村では、リンゴ栽培やそば栽培などの農業に携わってくれる地域おこし協力隊を募集中です。年齢の条件は、おおむね20歳以上40歳以下の方で、家族で移住を検討している人を歓迎しています。
【静岡県】静岡市(しずおかし)
本州のほぼ中心に位置する静岡県静岡市は、海や山に囲まれた自然豊かな街です。県庁所在地で人口も多く、JRの在来線や新幹線で東京へのアクセスも良く、高速道路を使えば県外への移動も便利です。
静岡市では、中心市街地である静岡地域で、さまざまな人たちの知識や技能を活用して、地域の活性化を図るため地域おこし協力隊を募集しています。活動内容は、SNSなどを活用して静岡市の魅力を発信する活動や、空き店舗を活用して商店街を活性化する活動などです。
募集は22歳から60歳までで、パソコンの一般的な作業ができ普通自動車運転免許を有していることが条件となっています。
【高知県】東洋町(とうようちょう)
高知県東洋町は、徳島県に接する美しい海に面した土佐最東端の町です。白い砂浜で有名な白浜海水浴場や、サーフィンスポットで知られている生見サーフィンビーチは、サーファーの聖地として全国から人がやってきます。
温暖な気候で育てられた小夏やポンカンなどの柑橘類や、豊富な魚介類など自然がもたらしてくれる特産品でも有名な町です。
東洋町では、高知県東部地域の観光や産業振興の拠点、情報発信基地として「海の駅」東洋町を運営しています。東洋町が募集している地域おこし協力隊は、町の観光振興に取り組んでくれる人です。
募集の条件は、20歳以上おおむね50歳未満の方で、最長3年間の活動後も東洋町に定住し、就業・起業する意欲のある方。活動期間中は、町が用意した住居を無償で貸与してくれます。
【沖縄県】久米島町(くめじまちょう)
沖縄県の久米島町は、沖縄本島から西に約100kmの東シナ海に位置し、久米島本島や奥武島や硫黄鳥島などから構成されています。
東洋一美しいと称される「ハテの浜」をはじめ、多くの景勝地が有名な久米島。海や山などの豊かな自然には希少野生動植物が暮らしている神秘さも魅力のひとつです。
久米島町では、島内の高校生の学習活動をサポートしてくれる地域おこし協力隊を募集しています。仕事内容は、「町営塾」で行う定期テストから大学受験まで、ひとり一人に合った学習支援です。
募集は、20歳以上で普通免許を取得していることやパソコンの基本的な作業ができることが条件となっています。勤務時間は13時から21時(1時間休憩)なので、午前中は移住のための情報収集や地元の方との交流に充てられそうです。
地域おこし協力隊|条件を確認して地域に貢献しよう
地域おこし協力隊は、地元に貢献しながらその土地をより深く知れる良い制度です。働いて収入を得ながらその地域の暮らしを体験できる点でも、移住を検討している方にぴったりなのではないでしょうか。
今回ご紹介したように、地域おこし協力隊に参加するためにはさまざまな条件があります。自治体によって年齢や運転免許証やパソコンのスキルなど、条件が異なりますので、気になった自治体の募集要項をよく確認することが大切です。
この記事で紹介した自治体も検討しつつ、ぜひ気になる募集を探してみてください。