周囲を海に囲まれた美しい自然景観や、その土地に暮らしてきた人々が紡いだ独自の文化が息づく島は、移住先としても人気。まだ見ぬ島へ、その魅力を探る。 

文・写真『島へ。』編集部

島DATA
東京から南南西180km、伊豆諸島の中央に位置し、富士火山帯南帯に属する。
総面積/55km2
人口/2,374人(2021年2月1日現在)
アクセス/東京竹芝桟橋を22:30に出向する大型フェリーで約6時間半、調布飛行場から小型航空機で約50分でアクセスできるほか、大島との間にヘリコプターも1日1便運航

自然の力を感じられるジオスポットが点在

東京都心のわずか120㎞ 南にある伊豆大島から、南南東1000㎞ の太平洋上に連なる小笠原諸島の父島・母島まで、広大な海域に11の有人離島が点在する「東京の島々」。そのひとつである三宅島は、いまなお活発な火山「雄山(おやま)」を擁することで知られる火山島だ。

ここ100年間でも1940年、62年、83年、2000年と4回も噴火が起こっており、なかでも00年の大噴火では島民たちが約4年半にわたって全島避難を強いられた。当然、島内各所にはこれらの火山活動の痕跡がシッカリと残っている。

三宅島でネイチャーガイドサービス「earthwind&(アースウインドアンド)」を手がける菊地ひとみさんによれば「溶岩流の跡や真っ黒に冷え固まった溶岩、火山ガスの影響で立ち枯れた樹木などから火山活動のダイナミズムや恐ろしさを体感できるのはもちろん、年代の異なる噴火でそれぞれ何が起こったかを学べるのが三宅島火山観光の魅力」だという。

例えば島南西部、阿古地区にある「火山体験遊歩道」では、83年の噴火時、溶岩流で埋もれてしまった阿古小学校と阿古中学校の一帯に遊歩道が設置されており、一面に広がる黒々とした溶岩流の上を歩くことができる。「阿古集落はかつてにぎやかな温泉郷で、520世帯1300人が暮らしていた。溶岩流が押し寄せる前にその全員が避難して死傷者は出なかったものの、わずか20時間で400世帯の民家が溶岩流の下に埋もれてしまった」そうだ。

事実、遊歩道からは溶岩流に2階まで埋めつくされた小学校と中学校の校舎が確認できる。
また、00年噴火の爪痕が残るスポットとして有名なのが、島北東部の神着地区にある椎取神社だ。聞けば「雄山山頂の噴火によって大量の火山灰が降り注いだ後、大雨で水を含んだ火山灰が泥流となって斜面を流れ下り、この神社も飲み込まれた」という。現在では新しい鳥居と社殿が建てられているが、そのすぐ隣りには埋もれてしまった鳥居と社殿がかろうじて地面から顔をのぞかせており、当時の泥流のすさまじさを物語っている。

こうしたショッキングな光景とともに「壊滅的な状態から少しずつ回復してきた緑にも目を向けてもらいたい」と菊地さんは話す。実際、阿古地区の一面の溶岩流には、ところどころにハチジョウススキやハチジョウイタドリがたくましく生えているし、噴火から数年は泥流と火山ガスの影響で立ち枯れた木々に囲まれていた椎取神社周辺も、現在ではすっかり緑の木々におおわれている。

三宅島を訪れてみれば、噴火のたびに再生を繰り返してきた大地の生命力をまざまざと感じることができるはずだ。

当時のまま残されている阿古小学校舎。2 階部分まで溶岩流で埋まっている
三宅島内に12 社ある延喜式内社のひとつ、椎取神社のかつての鳥居

ネイチャーガイドを務める菊地さんは奈良県出身、2007 年に三宅島に移住した

銘酒にキンメ、アシタバ島の逸品を自宅で味わう

とはいえ昨今、長引くコロナ禍でなかなか離島に足を運べない。
そこで、自宅にいながら島旅気分を味わえる三宅島のお取り寄せ産品を紹介したい。まずなんといっても代表格は島唯一の焼酎蔵が醸す銘酒「雄山一」(三宅島酒造TEL 04994-2-1391)。麦麹が使われることが多い伊豆諸島の焼酎としては珍しく、米麹を使っているのが特徴で、シッカリとした麦の香ばしさと力強い旨みが魅力の逸品である。

そんな雄山一のツマミにピッタリなのが、ここ数年、伊豆諸島近海で豊漁が続くキンメダイの一夜干し(ホテル海楽TEL 04994-5-0131)。肉厚でトロッとした白身には上質でまろやかな脂があり、干物にすることで旨みが増している。

島の主要農作物として全国屈指の生産量を誇るアシタバ(明日葉)もオススメだ。読んで字のごとく「今日摘んでも明日にはもう芽が出てくる」といわれるほど生命力の強いセリ科の植物で、ビタミンやミネラル、食物繊維などが豊富に含まれており、伊豆諸島では天ぷらやおひたしなどさまざまな料理に用いられている。

島のアシタバ農家のひとつ、西野農園(TEL 04994-2-0947) では生葉のほか、アシタバ粉末やお茶などの商品も通販で販売しているので、まずはウェブサイトをチェックしてみよう。農薬不使用栽培で苦みやクセのないマイルドなアシタバは、安心・安全で栄養価バツグン。コロナ禍で気分が沈みがちないま、その生命力を日々の生活に取り入れてみるのもいいかもしれない。

唯一無二のダイナミックな火山景観に想いを馳せつつ、ぜひこれら魅力的な特産品の数々を味わってみてほしい。

銘酒・雄山一
ホテル海楽が手がける「キンメダイ一夜干し」
栄養価タップリのアシタバ。三宅島は伊豆諸島最大の産地となっている

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