移住したい都道府県ランキングで常に上位の長野県の中で、松本市は市の支援を受けて移住する人たちの数が増加傾向です。国宝松本城や北アルプス、美ヶ原高原など、観光資源が多い松本市が移住者になぜ人気なのか?その理由を探ってみましょう。また、松本市への移住で受けられる支援についても紹介します。
長野県松本市の基本情報
長野県のほぼ中央にある松本市(まつもとし)は、江戸時代には城下町として栄え、現在もその名残をあちらこちらで見ることができます。
松本市は明治期より、製糸業をはじめとした近代産業が発展し、大正時代に入ると日本銀行松本支店が開業。長野県の経済金融の中心地となりました。
第二次世界大戦中の工場疎開がきっかけとなり近代工業化が始まり、松本市の産業は電気・機械などの製造業を中心に発展しており、近年はソフトフェア産業も盛んです。
また、教育を尊重する気風と、芸術文化が息づくまちづくりがすすめられているのも特徴です。
松本市は松本盆地の中央にあるため夏は35℃近くまで上がり、冬は零下まで下がります。降水量は少なく、湿度の低い晴れの日が多いです。
- 人口:235,620人
- 世帯数:109,295世帯
- 面積:978.47㎢
- 市の花:れんげつつじ
- 市の木:あかまつ
(2023年11月1日現在)
松本市への移住者が増加している理由
2022年の人口動態によると、松本市は県内市町村で最多の742人の社会増となりました。社会増とは、転入と転出の差がプラスの場合をいいます。
松本市の発表では、2022年に市の支援を受けて移住した人の数が過去最多になったそうです。行政のサポートを受けず、市外から移住した人はさらに多いようです。
松本市の社会増の理由には、移住者の増加も関わっていると言えるでしょう。では、松本市の移住者が増加しているのはなぜなのでしょうか。考えられる理由を見ていきましょう。
車がなくても生活できる
松本市の中心部は路線バスが充実しているため、中心部に近い場所で生活するなら、車を使う必要はありません。少し郊外へ足を伸ばそうと思えば、レンタカーを利用したり、公共交通機関を使ったりできます。
松本市内にあるJR松本駅は、特急「あずさ」の停車駅。平日は1日15本が松本駅に停車します。新宿から松本間は特急あずさで約3時間、1本で行くことができるため休日のレジャーや、通勤に利用する人も多いです。
文化や芸術に触れられる
松本市は「楽都(がくと)」とも呼ばれ、音楽教育の一つ「スズキ・メソード」は松本市に住んでいた鈴木鎮一氏が提唱したことから、スズキ・メソード発祥の地と言われています。
松本市民は合唱やオーケストラに親しむことが多く、世界的な音楽家の小澤征爾氏が1992年から松本市で開催する「セイジ・オザワ松本フェスティバル(旧サイトウ・キネン・フェスティバル松本)」は毎年全国ニュースでも放送される、人気の音楽祭です。
松本市中心部にある松本美術館には、芸術家の草間彌生氏のコレクション作品が通年で展示され、美術館の入り口にも草間氏のモニュメントが飾られています。
松本市は文化や芸術が街に自然に溶け込んでいるところも魅力のひとつです。
観光地や家族で楽しめる場所が多い
松本市といえば、国宝松本城があります。北アルプスの山々をバックに黒と白のハッキリとしたコントラストが美しい松本城には、県内外のみならず、外国からも多くの人が訪れています。
松本市中心部から足を伸ばせば、松本城と同じく有名な観光地の上高地、家族で遊べるアルプス公園など自然豊かなエリアがあります。
浅間温泉や安曇野なども人気で、さらにはテレビドラマや映画のロケ地としても使われる場所も多いです。
買い物の不便を感じない
松本市は江戸時代に城下町として栄えた名残があり、現在も大型ショッピングモールや、古民家をリフォームしたおしゃれなお店やカフェなどが並んでいます。特に松本駅周辺エリアは、徒歩や自転車などでのんびりと買い物を楽しむ場所が豊富です。
市街地から少し離れた南松本駅周辺にも大型ショッピングモールがあります。国道19号線も近く、大型の専門店やコーヒーショップなどもあり、買い物に不便を感じない環境です。
松本市の移住のデメリット
ここまでは松本市の移住の魅力を紹介してきましたが、デメリットも知っておくと良いでしょう。
市街地は交通渋滞に悩まされる
松本市中心部は路線バスが充実していますが車の量も多く、城下町としての歴史があり、道が狭いことがデメリットといえます。さらに一方通行の道も多く、朝夕の通勤ラッシュ時間帯は特に渋滞が発生しやすいです。
同じく松本市内の国道19号線も交通渋滞に悩まされます。車での通勤を考えている方は交通渋滞が発生しやすいことを頭に入れておくと良いでしょう。
電車の路線が発達していない
松本市を走る電車には、特急あずさの他にJRの在来線と私鉄の松本電鉄上高地線があります。しかし、どちらの路線も市内を広くカバーできていないのがデメリット。
電車の代わりに路線バスも利用する手もあるが、中心部から離れるとバスの本数も少なくなり、さらには渋滞で時間がかかることも考えられるため注意が必要です。
市内中心部は土地が高い
松本市は、中心部になるほど土地代が高い傾向にあります。松本駅周辺の坪単価は約37万円、松本駅からJR在来線を利用して約3分の場所にある南松本駅周辺は約21万円と、坪単価に16万円ほどの開きがあります。
松本市に移住した際に新築住宅を建てたいと考えている場合は、中心部から離れた場所に土地を買うことがおすすめですが、中心部から離れると交通の便が悪くなるため、家を買うと同時に車の購入も必要になるかもしれません。
松本市の移住支援制度
最後に、松本市の移住支援制度を4つ紹介します。
松本市結婚新生活支援事業補助金
結婚を機に松本市へ移住し新しい生活を始める場合、新婚世帯へ補助金が交付されます。
補助対象経費となるのは住宅の建物購入費、貸借費用、引っ越し費用、リフォーム費用などが挙げられます。補助金交付の条件や補助金額は夫婦の年齢によって異なるため、詳細は市のホームページを確認しましょう。
松本市UIJターン就業・創業移住支援事業補助金
東京圏内または愛知県・大阪府から松本市に移住し就業した人、または長野県の創業支援金の交付が決まって移住してきた人を対象にした補助金制度です。
補助金の交付を受けるためには、住民票を移す前の期間、該当の地域に在住し就労していたことの証明が必要になります。また、松本市内での就業にも要件があるため、申請前にはそれぞれの要件を満たしているかの確認が必要です。
空き家の利活用等補助
市内にある空き家や空き地を有効活用する際に補助を受けられます。例えば、空き家をリフォームする子育て世帯へは改修費用の補助が、空き家に残っていた花材を処分する際には処分費用の補助などがあります。
松本市奨学金返還支援事業補助金
松本市内に本社や本店がある中小企業へ就職し、奨学金を返還する場合は、予算の範囲内で補助金が交付されます。対象の奨学金は、日本学生支援機構が貸与するものです。
その他の奨学金も対象になる可能性もあるのでチェックしてみましょう。
松本市へ移住を検討するならまず現地を訪れてみよう
松本市は、城下町の名残が残る中心部や、足を伸ばせば上高地やアルプスの山々、高原など自然を感じられるエリアなどがあり、ファミリーで移住するのにおすすめです。
都心からのアクセスも良く、松本市で新しく仕事を始めるのはもちろん、現在の仕事を続ける選択もできるでしょう。
今回紹介したメリット・デメリットをよく把握しておき、移住前には現地を訪れてどのエリアが自分たちの理想とする暮らしができるかを確かめてみましょう。