ここ最近、住居に侵入されて金品を奪われたり住人が襲われたりする被害が増えていることが報じられています。特に一戸建てに住んでいて、隣家と距離が離れていたりする人は、不安になるのではないでしょうか。
落ち着いて安心した暮らしを送るために、今何に気を付けるべきなのか、一戸建てのどんなところが狙われやすいのか、どんな防犯対応が有効なのかといったことを、警察庁や警備会社が教えるポイントも含めてご紹介します。
一戸建ての防犯、気を付けるべきポイントは?
警察庁によれば、2023年の侵入窃盗の発生場所別認知件数は、一戸建てが30.5%と最多。犯罪者に狙われやすいポイントも集合住宅に比べて多いので、一戸建てに住んでいる人は自分の家の弱点を潰していくことが特に重要です。
侵入手口のトップ3は?
一戸建てへの侵入手口のトップ3は、無締まり(46.3%)、ガラス破り(35.8%)、合鍵(2.6%)。
意外かもしれませんが、1位は無締まり、つまり鍵が閉まっていない隙を突かれたもの。近所の人たちとの交流も盛んな地域の一戸建てに暮らしていると、日中に玄関や裏口の鍵をかけていなかったり、ゴミ出しをする時に短い時間だからと施錠しなかったり、換気のために窓を開けていたりといったこともあるかもしれませんが、そんなついついやってしまう行動を犯罪者に狙われる可能性があるのです。
2位のガラス破りは、扉のガラス部分や窓ガラスを破壊され、その隙間から解錠・侵入されるという方法。そして3位の合鍵は、留守中にドア付近に隠してある合鍵を発見され、それで解錠されるというパターンです。
侵入に5分かかると犯罪者の7割が、10分以上かかると9割が諦めるとされているため、家の防犯を高めるためには「侵入に時間をかけさせる」ことが重要。侵入者は「最も簡単に侵入できる方法」を考えているので、住人としては鍵を閉めなかったり、見つかりやすい場所に合鍵を置いておいたりといった、容易な侵入を許すような行動は避けなければなりません。
また、一戸建ての侵入口のトップ3は、窓(55.2%)、表出入口(20.2%)、表出入口以外の出入口(14.9%)です。
前述した侵入手口のトップ3も鑑みると、施錠されていない窓や扉を開けたり、窓のガラスを破ったりする形が大部分と言えるでしょう。
留守と見破られないためには?
防犯のためには、留守だと見破られないことも大事。侵入犯罪は事前に下見をしていることが多いですが、その主な下見方法は、インターホンを押して住人が留守か否かを調べるというもの。そのため、インターホンが押されたら外出先からでもスマートフォンで対応できるようにする、インターホンを録画機能付きにして、そもそも相手が押しにくくするといった対策も有効です。
旅行などで数日間にわたって不在にする場合、郵便受けに新聞や手紙が溜まったりするのも留守のサインとなってしまうので、新聞や牛乳といった定期配達されるものは事前に止めておきましょう。
また、別荘やセカンドハウスのように1ヶ月以上にわたって訪れないことがある場所なら、留守とバレやすいポイント(郵便物の回収や庭の手入れ)を警備会社が代行してくれるサービスを利用するのもひとつの方法です。
電気の点けっ放しは防犯に効果的?
防犯対策としてよく挙げられるのが、家の電気を点けっ放しにしておくこと。玄関をはじめとした戸口周辺やリビングなどを照明で明るくしておくと、犯罪者にとっては侵入時に顔や行動が目につきやすくなりますし、住人が家にいる、まだ起きているといった風に思わせることもできます。
とはいえ、効果がなければ、電気代がかかってしまうだけ。大事なのは、電気を点けておくことで、「家の中に人がいると思わせること」です。
そのために重要なポイントのひとつは、外から部屋の中が見えないよう、必ずカーテンを閉めておくこと。電気を点けて室内が見えた結果、住人が不在だと分かってしまっては逆効果です。さらに、室内が見えることで中の様子や住人の情報を与えてしまうと、空き巣や強盗に狙われる可能性が高まります。
室内以外で電気を点けるべき場所は、侵入口として気を付けなければならない玄関や裏口・勝手口。侵入者は基本的に暗い場所を狙うので、ほかには庭や駐車スペースに人感センサーライトを設置したり、ガーデニング用の装飾により明るいLEDを使ったりするのも効果的。ご近所迷惑にならない範囲で活用しましょう。
数日間にわたって留守にする場合は、ずっと電気を点けておくと不経済ですし、留守と見破られる確率が上がるかもしれません。そういう時は、時間ごとにオンオフが切り替わる照明器具のタイマー機能を使ったり、スマートフォンで遠隔操作できる照明を使ったりすることをおすすめします。
また、日中に留守にするなら、電気を点けておく代わりに換気扇を回すといった方法もあります。
一戸建ての防犯性能を高めるには?
侵入犯罪を防ぐには、侵入口となる扉や窓の防犯性能を高めることはもちろん、家周辺の外観を変えたり、守りを固めたりすることも大事。ポイントごとにその方法をご紹介しましょう。
ドア・鍵
玄関や裏口のドアは、ロックを二重にするのが効果的。これだけで侵入にかかる時間を延ばすことができ、前述した「10分以内に入れなければほとんどの犯罪者が諦める」という確率を上げることに繋がります。
そんなドアの鍵は、一昔前に多かった鍵山があるタイプでなく、鍵の表面に複数のくぼみがあるディンプルキーがおすすめ。構造が複雑なのでピッキングされにくい上、合鍵を作るのも難しいので、知らないうちに複製されていたといった事態も防げます。
そのほかには、バールなどを使ってこじ開けられないよう、ドア枠にガードプレートを取り付けるのも有効。
侵入手口の3位である合鍵に関しては、入口付近に置かず、家族が各自持ち歩く形を採ることが重要です。必要最低限の本数のみを複製し、確実に管理するようにしましょう。
窓
半分以上の手口で侵入口となっていた窓の防犯性能向上に最適なのは、防犯ガラスへ交換すること。しかし、お金も手間もかかるので、難しい場合は既存の窓ガラスに防犯フィルムを貼る方法もあります。玄関や裏口の一部が窓になっているタイプの場合も、同じような対応を採るといいでしょう。
なお、ガラスに菱型や格子型のワイヤーが入ったタイプもありますが、これは火災や台風などでガラスが割れた際に飛散するのを防ぐためで、防犯的な効果は期待できません。
また、窓に雨戸やシャッターがついていれば、それをしっかり閉め、ロックをきちんとかけるのも大事。面格子や補助錠を取り付けるのも強化に繋がります。
家の周り(塀、庭、ライト、カメラ)
一戸建ての場合、家の周りの防犯意識を高めることも欠かせません。塀や柵、庭木は外からの視線を遮ってプライバシーを保つ効果はあるものの、犯罪者から見れば侵入した後で人目につきにくいことから狙われる一因になるためです。
そんな犯罪者の思惑から逃れつつ一定のプライバシーも確保したい人は、格子やルーバータイプの見通しのよいフェンスを使いながら、お風呂場のような特に人目を避けたい部分には目隠しシートを組み合わせたり庭木を植えたりするのがいいでしょう。
庭の木々が伸びたままだったり、雑草が生い茂ったりしていると、犯罪者に住人はルーズな人柄で防犯意識も低いだろうと判断され、狙われやすくなります。そのため、庭木は定期的に手入れし、必要なら業者を呼びましょう。
犯罪者が侵入するコースの大半は、庭などの外構を通ってくるというもの。そこに音が鳴る砂利敷きがあれば、相手に侵入したくない理由を与えることができます。歩いた時に大きな音が鳴る「防犯砂利」を使うとより効果的ですが、種類によっては扱いが難しかったり音が大きくてご近所迷惑となる可能性もあるので注意が必要です。
侵入の動線という意味では、物置や室外機、給湯器、雨樋、車庫の屋根、塀、庭木や庭に置かれた脚立などが2階への足場になっていないかもチェックしておきましょう。
電気の項で触れたセンサーライトは、防犯対策にとりわけ効果的。侵入者が驚くだけでなく、点灯することによって家の中にいても不審者の存在が分かるので、110番通報をしたりといった対策を採る時間も得られます。
ちなみに、センサーライトをフットライトにすると、下から木々や庭を美しくライトアップする効果も。足元が明るく照らされると、住人が日暮れ以降に庭へ出た時に転倒を防ぐこともできます。
監視カメラは、第三者から見ても存在が分かりやすい位置に取り付けることが重要。さらには「防犯カメラ作動中」といったステッカーも貼って存在をアピールすることが抑止力になります。
100円ショップでも購入可能!防犯グッズ
防犯を強化するには業者に依頼するのもいいですが、時間やお金に余裕がない場合は100円ショップやホームセンターを活用するのもいいでしょう。
100円ショップで手に入るもののひとつは、窓の補助錠。窓のサッシの下、上の両方に設置すれば、さらに効果的! やや高額になりますが鍵部分を取り外せるタイプもあり、そちらを使えば窓を破壊されても鍵なしでは錠を外すことができないため、防犯性能はより高まります。
窓用の防犯フィルムも100円ショップで売っています。もちろん耐久性を考えれば、より分厚い保険付き防犯フィルムなどを使う手も。
そのほかには、太陽光で充電するため電池や電源が不要の人感・明暗センサー付きのソーラーセンサーライトも、100円ショップなら500円ほどで入手可能です。
一方のホームセンターではより多くの選択肢が。ディンプル式のドアの補助錠や、スマートフォンを通じてリアルタイムで室内の様子が確認できるカメラ、自動録画・センサー付きの防犯カメラ、屋内外で使用可能な人感センサーなどが数千円から10,000円以下で販売しています。いずれも設置が簡単で、大がかりな工事は必要ありません。
今すぐ実践可能!自主防犯行動とは?
いつ、どこで、誰が犯罪に遭うか分からない世の中、犯罪から家族の安全や財産を守るためには、家の守りを物理的に強化するのはもちろん、一人ひとりが高い防犯意識と正しい防犯知識を持つことも重要です。そのために警察庁が提唱する「自主防犯行動」は次の通り。
- 在宅時でも、出入口や無人の部屋の窓に鍵をかける習慣をつけること
- 訪問者に対しては、不用意にドアを開ける前に、まずドアスコープやインターホン越しなどで確認すること
- 外出先から帰宅した際は、背後や周囲に人がいないかよく確認すること
※宅配業者の訪問を偽装した手口には、荷物の受け取りに宅配ボックスを活用するなど、宅配の荷物を直接受け取らない方法を採ることが大切 - 日頃から建物周囲を整理整頓し、侵入されにくい環境を整えておくこと
- 玄関をツーロックにし、窓に補助錠を取り付け、防犯カメラ等を設置するなど、防犯設備を充実させること。建物部品を選ぶ時は、防犯性能の高いものを
- 設置した防犯設備機器を有効に役立てること
- 旅行など長期不在にする時は、隣近所へ声をかけ合ったり、郵便物・新聞などの配達を止めるなどの注意も必要
- 合鍵の不正作製を防止するため、鍵を家族等以外の必要のない人には「見せない」「渡さない」、写真や動画で「写さない」
- 自宅に必要以上の現金を置かないこと
- 電話等で在宅状況、家族の状況、資産状況を聞かれても答えないこと
- 不審を感じた場合には、ためらうことなく110番通報すること
安心して暮らすため、一度それぞれのポイントをチェックし、家の防犯性能と防犯意識を高めてみてください。