京都といえば日本屈指の観光地です。京都は、お寺や神社など歴史が身近に感じられる魅力がたっぷりのまちです。そんな京都へ移住を検討している方におすすめしたいのが、移住を成功させるカギとして注目されているのが空き家バンク。
今回は京都移住で活用したい空き家バンクについて、メリット・デメリットやおすすめの自治体について解説します。
空き家バンクとは?制度と利用するための条件
移住について調べていると「空き家バンク」制度について知ることになるでしょう。空き家バンクとはどんな制度なのでしょうか。
以下に、空き家バンクの制度や利用条件について解説します。
空き家バンクの制度を解説
空き家バンク制度とは、自治体が運営している空き家の情報提供システムのことです。2015年に施行された「空家等対策の推進に関する特別措置法」の一環として、各自治体による空き家バンクの運営が始まりました。
空き家バンクの目的は、少子高齢化や人口減少による空き家問題に対処し、使用されていない空き家の有効活用を図るものです。
空き家バンクには、空き家を売りたい・貸したい人が所有している空き家情報が掲載される仕組みになっています。空き家を探している人は、インターネットがあれば各自治体の空き家バンクにアクセスし、登録されている物件情報の閲覧が可能です。
自治体が主体となって、空き家を売りたい人と探している人をマッチングするのが空き家バンクですが、自治体は民間の不動産会社のように買い手を積極的に探すようなサポートは行いません。
自治体が行うのは、空き家の不動産情報の掲載までで、売買や契約に関してはユーザー同士または自治体と提携している民間の不動産会社が担当します。
空き家バンクの利用条件について
空き家バンクに登録できる物件には条件があります。各自治体によって多少の違いはありますが、所有権が明確であり使用可能な状態であることが大前提です。
空き家バンクに物件を登録したい場合、以下の条件を満たしている必要があります。
- 空き家バンクを運営する自治体内に所有物件がある
- 建築基準法に違反していない
- 売買・賃貸契約を不動産会社に個別で依頼していない
- 自治体の長が承認した空き家である
京都移住で空き家バンクを利用する3つのメリット
空き家バンクを利用するメリットは、以下の3点が挙げられます。
- 購入・賃貸の費用が抑えられる
- 地域活性化に貢献できる
- 自治体の補助金・助成金制度が利用できる可能性がある
これらのメリットが自分の目的に合っているか、以下の解説をもとに確認してみてください。
購入・賃貸の費用が抑えられる
空き家バンクに登録されている物件は、借り手や買い手の少ない地域の物件も多いため、一般の相場価格より安い物件が見つかりやすいメリットがあります。
地域によっては家賃が1万円の物件や、無料で譲ってもらえる物件などもあります。
田舎で古民家をリフォームしながら自分好みの家で暮らしたい人や、移住費用を抑えたい人たちには、格安で手に入る空き家バンクの物件は魅力的です。
地域活性化に貢献できる
自治体にとって、空き家問題は悩ましい課題となっています。
空き家バンクを利用して移住することは、地域の人口減少問題の解決に寄与でき、地域の活力向上に貢献できます。
また、空き家を改修して住居や店舗として利用すれば、地元の建築業やサービス業が活性化することも地域によってのメリットにもつながります。
このように、空き家バンクの利用は地域に貢献できる面もメリットのひとつです。
自治体の補助金・助成金制度が利用できる可能性がある
空き家バンクを利用するときは、自治体の補助金や助成金が使えないか確認してみてください。
多くの自治体は、空き家の改修やリフォーム工事費用の一部を援助する制度など、さまざまな制度を設けています。
また、利用者の改修資金を調達しやすくするため、自治体が低利率のリフォームローンを提供する金融機関と連携している場合もあります。
さらに、移住者向けに支援プログラムを提供して生活環境の整備や地域への適応をサポートしたり、移住者に対して一定期間定住することを条件に支援金を支給したりと、さまざまな方面から支援を行っています。
自治体によっては、空き家の利用や改修、移住に関する相談窓口を設置し、専門スタッフが対応しています。
このような制度やサービスを利用すれば、移住費用を抑えることができ、空き家の利用や移住に関する不安を解消することが可能です。
京都移住で空き家バンクを利用する3つのデメリット
空き家バンクにはメリットがある一方で、注意しておきたいデメリットもあります。
- 古い物件が多い
- 数が限られている
- 手数料がかかる
空き家バンクを利用する場合は、このデメリットをよく理解する必要があります。以下に詳しく解説していきます。
古い物件が多い
空き家バンクに登録されている物件の多くは、築50年などの古い物件で、なかには建物の中に家財道具や不用品が残ったままという場合もあります。
これは、制度の趣旨である放置されがちな空き家の有効活用をするためです。古い空き家になると、屋根や壁だけでなく水回りの改修工事が必要になるケースもあります。
これらの点を踏まえて、空き家バンクの利用を考えておかなければなりません。
数が限られている
空き家バンクの登録物件数は、各自治体によって異なります。
自分が希望している移住先に空き家物件が全くないケースや、物件数が限られていたり情報が古く更新されていなかったりする場合もあります。
さらに、空き家バンクはすべての自治体が参加しているわけではないため、参加していない自治体に空き家があるか簡単に知ることができません。空き家を探している場合は移住希望先の自治体に問い合わせてみましょう。
手数料がかかる
格安で利用できるのが空き家バンクのメリットですが、自治体が提携した不動産会社が仲介に入る場合は、賃貸借契約や売買契約の際に仲介手数料が必要です。
空き家バンクは、あくまでも空き家の持ち主と利用者が契約するサービスで、自治体との契約ではないことを頭に入れておきましょう。
京都移住で空き家バンクを利用するときの注意ポイント
空き家バンクを利用するメリット・デメリットについてご紹介しましたが、ここからは空き家バンクを利用するときの注意ポイントについて解説します。
住宅にかかる費用の予算を立てる
空き家バンクに登録されている物件は築年数が古いものが多いため、リフォームや修繕が必要になるケースが多く、予想以上に費用がかかる場合があります。
住宅を格安で確保できたとしても、そのあとのリフォーム代などが必要になるかもしれません。
また、古い物件は断熱材が入っていない場合が多いため、季節によっては暖房費や冷房費がかさむことも予想されます。
空き家バンクを利用する際は、物件の購入費以外の費用がかかることを踏まえ、住宅にかかる費用の予算を立てることが重要です。そのうえで、予算内でおさまるように物件探しを行いましょう。
必ず現地で確認する
空き家バンクに登録されている物件の詳細情報は、住所や間取り、坪数くらいです。
そのため、契約を結ぶ前に必ず現地を訪れて所有者と一緒に物件の確認が必要です。古い物件には、屋根が雨漏りする、床下のシロアリ被害がひどいなどのトラブルがあるかもしれません。
また、古い建物は現在のものと異なり断熱材が入っていなかったり、耐震補強工事が必要だったりするケースも多くあります。
お試し住宅で現地の暮らしを体験する
「暮らし」とは、インターネットの情報や写真だけでは分からない部分が多くあります。
景観に惹かれて暮らし始めたものの、「周辺に病院やスーパーがなかった」「学校が遠くて送迎が必要だった」など、不便さを感じてしまうことがないよう、実際に現地を確認することをおすすめします。
また、目で見ただけでは確認できない「暮らしやすさ」は、実際に住んでみなければ分かりません。自治体によっては、無料または格安で利用できる「お試し住宅」を提供している場合があります。
空き家バンクを利用する前に、本当にそこで暮らしていけるのかお試し住宅を利用してその土地での暮らしを体験してみましょう。
補助金・助成金の申請を早めに行う
空き家バンクを利用して京都へ移住を検討しているなら、自治体の補助金や助成金制度をぜひ確認してみてください。
自治体によって支援策の内容は異なりますが、国が行っている「移住支援金」や各自治体が行っているさまざまなサポートが利用できるかもしれません。
多くの自治体は、限られた予算内で支援策を行っているため、補助金の種類によっては限度額に達したら募集を締め切る場合があります。
また、申請するためには書類を用意しなければならないものもあるため、申請方法や必要書類などについて、自治体のホームページを確認して早めに準備しておきましょう。
京都で空き家バンク制度に力を入れている自治体
京都府は日本列島のほぼ中央に位置しているため、東京や名古屋、大阪、博多などの主要都市へのアクセスの良さが魅力です。
京都といえば神社・仏閣が多い伝統や歴史を感じられる観光地として有名ですが、嵐山をはじめとした自然も楽しめます。
さまざまな魅力を秘めた京都ですが、そんな京都へ空き家バンクを利用した移住を検討している方へ、おすすめの自治体をご紹介します。
京丹後市(きょうたんごし)
出典:空き家情報バンク|京都府京丹後市公式
京丹後市(きょうたんごし)は、京都府の日本海に面した丹後半島の中心に位置するまちです。府庁所在地がある京都市からは電車で約150分、車で約120分ほどの場所にあります。
海、山の自然が豊かで食べ物も美味しく、京都府から兵庫県、鳥取県をまたがるユネスコ世界ジオパークに認定された山陰海岸ジオパークの海岸線、府内一の数を誇る温泉も京丹後市の魅力です。
京丹後市では、京丹後市移住ポータルサイト「丹後暮らし探究便」や、京丹後市移住支援サイト「海の京都」でまちの魅力を発信しています。空き家バンクについては、京丹後公式の空き家情報バンクで市内の空き家が検索できます。
京丹後市では、空き家を居住スペースとして使いリフォーム工事をする市内に移住予定・移住後1年以内の方に最大230万円の補助がある京丹後市移住促進・空家改修支援事業補助金で移住者を支援しています。
補助要件に、移住者は京丹後市に10年以上定住する意思があることや、5年以内に転居や対象住宅の取り壊しまたは譲渡した場合、補助金の返還を求めることがある旨などが記載されているので、しっかり確認してください。
宮津市(みやづし)
出典:京都府北部 空き家データベース|京都府の移住 たんたんターン
宮津市(みやづし)は、京都府の北西部に位置し、日本三景と言われる天橋立をはじめとする海岸線など、美しい自然に恵まれているまちです。
宮津市は、天橋立を中心に北部と南部に分かれた特徴的な地形をしています。面積の約8割を山地が占め、日本海側に向かって流れる由良川など11の河川があります。
市の中心市街となる宮津地区をはじめ、10の地区に区分されていて、山々や棚田、海、里山が広がる地区は移住者に人気のエリアです。
宮津市は、移住定住情報サイト「宮津に暮らす」で移住に関するさまざまな情報を発信し、みやづ移住コンシェルジュサービスで、移住相談や空き家バンク物件の紹介などをおこなっています。
空き家情報に関しては、京都府北部の移住情報まとめ「たんたんターン」内で確認できます。空き家バンクを利用して移住を検討している方へは、移住・定住支援空き家改修補助制度の定住支援空き家等改修補助や、移住促進事業補助がおすすめです。
福知山市(ふくちやまし)
出典:空き家バンク|FUKUFUKU LIFE
福知山市(ふくちやまし)は、京都府の北西部に位置するまちで、都市基盤が整備されている中心部と自然豊かな田園地帯が広がる郊外の両方が備わっています。
子育て世代に人気のまちで、全国でもトップクラスの出生率の高さです。医療機関や保育園、放課後児童クラブの充実など、子育て環境が充実しています。
また、福知山市は京都・大阪・神戸の各都市に約1時間半で行くことができる交通アクセスの良さも魅力です。
福知山市への移住に関する情報は、「京都!丹波 Fuku Fuku Life 福知山移住」でチェックできます。空き家バンクに関する情報は、こちらから確認できるので気になる物件があったら利用登録しましょう。
農山村地域の空き家情報バンク制度を利用して、空き家を取得または賃借して改修工事を行う場合、改修工事に要する経費を補助する福知山市農山村地域空き家改修費補助金があるので、支給条件を確認してみてください。
また、福知山市では、お試し生活ができる入居施設を紹介しています。移住前にぜひ利用してみるのをおすすめします。
舞鶴市(まいづるし)
出典:空き家絞り込み検索|海の京都 舞鶴市 海近移住ポータルサイト|MY LIFE
舞鶴市(まいづるし)は、京都北部に位置する日本海に面したまちです。東舞鶴・西舞鶴・大浦・加佐の4つの地区で構成された舞鶴市は、深い歴史と豊かな自然にあふれています。
生活の基盤ともなる病院や幼稚園・保育所などが充実しており、京都府舞鶴市移住ポータルサイト「舞鶴MYLIFE」で、充実した情報を発信しています。
移住に関する相談は電話やメールで随時受け付けており、UIJターンした先輩移住者が「舞鶴市移住サポーター」として、移住を検討している方の相談やサポートを行っています。
空き家バンクの情報は、こちらのページから確認できます。探したい地域、価格帯や環境などに絞って検索できるので便利です。
舞鶴市では、農村移住促進事業補助金により、田舎暮らしが楽しめる農漁村地域「農漁村エリア」を「移住促進特別区域」に指定し、移住者に空き家改修工事費用の一部を補助しています。
また、JR西舞鶴・東舞鶴駅周辺のまちなかエリアで、市が運営する「まちなかエリア空き家情報バンク制度」を利用し、空き家を購入または賃借した人が空き家の改修工事をする場合、その一部を補助する舞鶴市まちなかエリア定住促進空き家再生事業も要チェックです。
綾部市(あやべし)
出典:定住サポート|移住立国あやべ
京都府の中央北寄りに位置する綾部市(あやべし)は、豊かな里山や田園に囲まれた農村の暮らしと、文化や歴史に彩られた市街地とが共存するまちです。
京都市からは電車(特急)で約1時間ほどで、舞鶴若狭自動車道と京都縦貫自動車道、JR山陰本線と舞鶴線が市域を交差するため、アクセスが良い面がある一方、車がないと不便な地域もあります。
綾部市では、2008年に「あやべ定住サポート総合窓口」を設置して定住希望者を支援しています。窓口では、住宅・就職・就農など定住に関するさまざまな相談に応じてくれます。空き家バンク情報は、市内の空き家物件を地域別・価格別に絞って検索できるので便利です。
移住を考える方を全面的にサポートするため、立ち上げた移住立国あやべでは、仕事・くらし・子育てなどの情報を日々発信しています。小学校を1日借り切って、空き家探しのポイントなどを学ぶ「田楽学校」などで、まちの魅力を伝えています。
綾部市では、空き家を取得した方が改修工事を行う場合、その一部を補助する綾部市空き家活用定住促進事業費補助金を支給し移住者をサポートしています。受給条件などの詳細はホームページをご確認ください。
京丹波町(きょうたんばちょう)
出典:空き家情報バンク制度|京丹波町
京丹波町(きょうたんばちょう)は京都府のほぼ中央部、丹波高原の由良川上流部に位置するまちです。京都市内からは京都縦貫道で約30分、大阪や神戸からも約1時間でアクセスできます。
京丹波町には、昼夜の寒暖差や豊かな土壌によって育まれた農産物がたくさんあります。丹波栗や黒大豆、丹波黒豆の枝豆など、「丹波ブランド」と呼ばれる食べ物が全国的にも人気です。
京丹波町では、移住・定住サイト「森と共に生きる京丹波町」を開設。町内で空き家を探している方には、空き家情報バンク制度で空き家情報を提供しています。
空き家バンクで木造住宅を購入した方は、京丹波町木造住宅耐震改修事業をご確認ください。これは、地震に強いまちづくり推進を目的に行われている事業で、町内にある木造住宅で耐震改修をする場合に補助金を交付するものです。
また、京丹波町質美地区には田舎暮らしが体験できる「おためしハウス」が利用できます。最長3ヶ月まで利用できるので、移住を決める前に町での暮らしを実際に体験してみてはいかがでしょうか。
南丹市(なんたんし)
出典:空き家バンク|nancla(なんくら)南丹市定住促進サイト
南丹市(なんたんし)は、京都府の中央にある自然豊かな広大なまちです。本格的な田舎暮らしができるエリアから利便性の高い分譲地まで、ニーズに合わせて選べる住環境があります。
「森の京都」エリアのひとつとして知られている南丹市には、昔ながらの景観を残す美山「かやぶきの里」など、多くの観光資源があります。日本の原風景を色濃く残すノスタルジックな風景は、国の重要伝統的建造物群保存地区にも選定されています。
南丹市は、南丹市定住促進サイト「nancla(なんくら)」を運営し、南丹市の魅力を発信しています。南丹市では地域の特性に合わせた定住施策を推進し、住み続けたいまちを目指して定住促進に取り組んでいます。
空き家バンクは、地域や物件の種類などに絞り込んで検索でき、物件の詳細ページでは、写真を多く掲載して建物内部や外観が分かるようになっているため便利です。
南丹市では、木造住宅の倒壊を防ぎ安全なまちをつくるため、一定の条件を満たす戸建木造住宅を対象に耐震診断士を派遣する木造住宅耐震診断士派遣事業や、診断の結果、倒壊する可能性が高いとされた住宅の改修のために改修費用の一部を補助する木造住宅耐震改修事業を行っています。
和束町(わづかちょう)
出典:空き家バンク|和束町
和束町(わづかちょう)は、京都府の南部に位置するまちで、800年前から続く京都府最大の茶産地で知られています。
別名「茶源郷」と呼ばれている和束町は、府内で3番目に人口が少ないまちですが、宇治茶の生産量は多く、町全体に茶畑が広がっています。
茶畑景観の美しさにより「日本で最も美しい村連合」に加盟している和束町は、2015年に「日本茶800年の歴史散歩」として日本遺産に登録されました。
そんな美しいまち、和束町は「和束町移住定住ナビ」で空き家バンクや移住・定住支援制度を紹介し、町への移住者をサポートしています。
和束町空家活用移住促進事業補助金は、空き家を有効活用した定住促進のための制度です。和束町空き家バンクに登録されている空き家を購入または賃借した場合、移住促進住宅整備事業をチェックしましょう。
これは、居住目的で改修工事を行う場合、その費用の一部を補助するものです。
和束町で空き家バンクを利用する場合は、町のホームページをご確認ください。
空き家バンクを活用して京都への移住を実現しよう
今回は、京都で空き家バンクを利用する際のメリットとデメリット、空き家バンクを利用する際の注意ポイントについて解説しました。
空き家バンクは自治体が空き家を売りたい人と買いたい人をつなぐマッチングサービスですが、自治体が運営しているため安全なサービスと言えます。
今回ご紹介した京都でおすすめの自治体のほかにも、気になるところがありましたら、自治体のホームページをチェックしてみてください。
そして、空き家バンクの改修費用を補助してくれる支援制度についても詳しく調べて京都への移住を実現しましょう。