移住や多拠点生活を身近に感じてもらうためのイベント「ツナゲナイト」。2023年12月8日(金)に開催された第3回のテーマは「ワーケーション」です。
今回はワーケーションにぴったりな2つの地域の紹介と、ワーケーションを実践&推進中のゲストのお話を中心に、盛りだくさんな1時間半となりました。
ワーケーションってどんなもの?
イベント冒頭、参加者の皆さんに「“ワーケーションやったことあるよ”っていう人は?」と聞いてみると、「ワーケーションという言葉は知っているけれど、始めるきっかけがわからない」「実践している人の話を聞いてみたい」という人が大半。そこで、まずは簡単にワーケーションについての説明から。
2000年代、アメリカから始まったとされるワーケーション。ノートパソコンの普及とともに、場所に縛られない新しいライフスタイルの一環として広まり、日本には2017年頃に導入されたといわれています。その後、コロナ禍でリモートワークが浸透するにつれ国内でも実践する人が増えてきました。
ワーケーションの定義は様々ありますが、ここでは一例として「休暇型」と「業務型」に分ける考え方を紹介。
休暇型は「福利厚生型」とも呼ばれ、有給休暇を活用して長期に渡ってリゾート地などでテレワークを行うスタイル。メインはあくまで“お休み”。日本ではまだあまりなじみがないかもしれません。
“仕事”がメインの業務型は、さらに「地域課題解決型」「合宿型」「サテライトオフィス型」に分類されます。
地域課題解決型は、文字通り、地域の方と交流しながら地域の課題を解決していくもの。自治体がプログラムを組むことが多く、農家さんと一緒に農業のDX化を図るなど、取り組みは色々。最近、注目度がUPしています!
合宿型は、場所を変えることで、職場やプロジェクトのメンバーとコミュニケーションを深めたり新しいアイディアを出したり……というのが目的。これもワーケーションの一つです。
3つめは一番イメージしやすいサテライトオフィス型。シェアオフィスやコワーキングスペースなど、環境を変えて働くスタイルです。
とはいえ、ワーケーションのカタチは千差万別。皆さんに自分らしい働き方を見つけていただきたい! ということで、どんな地域でどのようなワーケーションが可能なのか、2つの地域の担当者の方に具体的なお話をうかがいました。
あなたはどっち? 山or海 ワーケーション向きの2つの自治体を徹底紹介
今回、お話をうかがったのは、「山」代表として日本一の山・富士山を擁する静岡県富士市の松葉さんと、「海」代表として美しい海に囲まれた離島・長崎県五島市の谷さん。東京からの距離も土地の雰囲気も異なる2つの地域の魅力をフカボリしました。
〇〇市ってどんなとこ?
静岡県富士市の松葉さん:
「山側の代表ということなんですけど、実は富士市には海もありまして(笑)。海抜ゼロメートルから富士山までがあるのは静岡県内でも富士市だけ! これは、ぜひ覚えて帰ってほしいです。
土地柄としては、太平洋側の温暖な気候で晴れの日が多い。そして何より、1年の1/3は富士山がきれいに見える!(ちなみに去年は365日のうち141日も富士山が見えたとか!) これは富士市の自慢です」
長崎県五島市の谷さん:
「コバルトブルーの海に囲まれた五島市は心癒やされる風景の宝庫! “日本一美しい”ともいわれる高浜海水浴場や、恐ろしげな名前とは裏腹に丸みをおびた稜線がかわいらしい鬼岳など、自然豊かな場所です。
九州の離島というと気温が高いイメージがあるかもしれませんが、五島は“南の島”というより“西の島”なので冬は暖かく夏は涼しい。年間の平均気温は17度ほどなので、とても過ごしやすいです」
東京からアクセスは?
静岡県富士市の松葉さん:
「静岡県でも東部に位置していますから東京からは近いです。新幹線なら約1時間。車でも90分ほどあれば来ることができる。これは大きな強みです」
長崎県五島市の谷さん:
「東京からは正直、遠いですが(笑)、島に空港があるので、羽田からなら福岡空港か長崎空港を経由して約3時間で来られます。また、あえて長崎港からフェリーに乗ってのんびり船旅を楽しむというのも気分が変わっていいと思いますよ」
これは負けない! 地域の魅力
静岡県富士市の松葉さん:
「富士市は製紙業が盛んで、なかでもトイレットペーパーの生産量は日本一(国内生産量の1/3は富士市産だとか)。最近では、製紙工場の工場夜景も人気です。
加えて、静岡県は日本一のお茶どころ。茶畑の向こうに富士山を眺めながら仕事をして、リラックスタイムにはお茶を1杯というのもおすすめです」
長崎県五島市の谷さん:
「自然や文化はもちろんですが、グルメも大きな魅力です。手延べ製法を守る五島うどんは、五島名物の椿油が使われていて喉ごし抜群。五島牛は良質な肉質で高く評価されていますが、飼育数が少ないので島外ではなかなか味わえない逸品です。さらに、2年連続「さつまいも・オブ・ザ・イヤー」に輝いた“ごと芋”や、日本一の生産量を誇る長崎県産の内、3割以上を占める五島産養殖マグロなど、美味しいものがたくさんあります」
どんなワーケーションができるの?
静岡県富士市の松葉さん:
「富士市で特に力を入れているのは、先ほど説明があった業務型ワーケーションです。その理由としては、①東京から1時間というロケーション(日帰りにも2拠点生活にもちょうどよい)と、②製紙業が盛んなため企業数が多いという2点があげられます。市内の企業では工場での研修や新人研修を積極的に受け入れていますので、ぜひ活用してもらえればと思います。
また、地域課題解決型ワーケーションとして、東京で働く方々に力を貸していただきたい部分もあります。中小企業が多くDX化が遅れている富士市に、東京からの視点が加わることで、良い変化が起きると期待しています」
長崎県五島市の谷さん:
「来島するのにそれなりの時間とコストがかかるので、ワーケーションに来る方は、ある程度、長期に滞在する方が多いです。職種でいえばIT系、フリーランスの方、経営者の方などですね。
2022年度からは“大人の社会科見学”と題した地域課題解決型ワーケーションのイベントも開催し、実際に、島にはどういった課題があって、どのような可能性があるのかを知ってもらう試みも行ってきました。
島内はネット環境が十分に整備されていますし、コワーキングスペースも7箇所あるので、今日は海が見える場所、今日は美味しいコーヒーが飲める場所という感じで、気分に合わせてセレクトしてもらえればと思います」
トークの後半では、実際に仕事をする場所についても紹介。富士市からは、新幹線の「新富士」駅構内にあるコワーキングスペースや、大学だった施設をリノベートした「s_pl@tt FUJISPARK(エスプラット フジスパーク)」など、ガッツリ仕事がはかどりそうな施設。五島市からは「SERENDIP HOTEL GOTO(セレンディップホテル五島)」や「カラリト五島列島」など、仕事も遊びも楽しめる施設を教えていただきました。
さらに、バケーションのおすすめスポットについても、それぞれ半日&1日のモデルコースを紹介し、それぞれの地域を大いにアピール。ワーケーションへの意欲がムクムクと湧いてきたところで、次のゲストにバトンタッチとなりました。
ゲストのお話 大倉アキラさん
1981年生まれの大倉アキラさんは愛知県出身。広告会社やネットベンチャー企業に勤務した後、地域おこし協力隊として岐阜県白川村へ移住。さらに都市開発やメディア編集など、様々な業界を経て独立し、2020年に神奈川県逗子市にコワーキングスペース、宿泊施設、シェア農園などが一体となった「AMIGO HOUSE」をオープンさせました。
ほかにも「ずしワーケーションウィーク」など、ワーケーションイベントのプロデュースも行う大倉さん。この日は、まさに仕事と休暇を兼ねて2週間ほど東南アジアに滞在中。「ツナゲナイト」にはタイからのオンライン参加です!
「そもそもなんでワーケーションを始めたのかといえば、サラリーマン時代から“毎日、会社に行く必要ってある?”っていう疑問があって(笑)。テクノロジーがここまで進化しているのに、毎朝1時間も満員電車に揺られて疲弊する意味がわからない。そう思って2015年くらいからZoomを使った会議を始めるようになったんです。そうすると段々“動きながら働く”メリットが見えてきたというか。仕事のことを考えながら旅をすることで、新しいアイディアが浮かんだり、思いもよらない解決法がみつかったりするんです。それは多分、移動に伴う“余白”が充実感を生むからだと思います」
これからの時代「動きながら働くことがスタンダードになる」という大倉さん。ワーケーションを推進する意義については、「大谷翔平君に代表されるアスリートだけでなく、シェフやDJなど、現代は世界を飛び回って仕事ができる人にこそ様々な可能性が広がる時代です。これまでの日本人は生まれた場所で人生を全うできていて、それはそれで非常に豊かなことではあるけれど、この先はわからない。大震災や政変を考えた時、一つの場所に縛られるのが果たしてどうなのか。僕は“複数拠点・複数事業”というのを実践しようと思っていますが、それはリスクヘッジの部分も大きい。複数の拠点があることは一種のセイフティーネットになる」と話します。
最後に大倉さんは2023年秋に行われた「ずしワーケーションウィーク」の様子を紹介。高校生から50代まで、北は宮城県仙台市から南は福岡県まで、大勢の人が集まったというイベントからは、ワーケーションへの関心の高さがうかがえました。
日本と2時間の時差があるタイは、これからがサンセットタイム。現地で夕日の撮影を予定しているという大倉さんとは、ここでお別れ。今まさにワーケーションを満喫中の、充実した時間をお裾分けしてもらったような楽しいひとときでした♪
名物を味わいながらの相談会&交流会
ゲストのお話の後は、お待ちかねの相談会&交流会がスタート! 参加者は2グループに分かれ、富士市と五島市それぞれのブースへ。まずは冷たい飲み物で喉を潤しました。
富士市
富士市のブースで提供されたのはクラフトビール「rAven RED(レイブンレッド)」。先ほどワーケーション向け施設として紹介した「s_pl@tt FUJISPARK」内の醸造所から届きました。富士山の伏流水を使ったオリジナルビールはコクのある味わいで、仕事終わりにこの1杯が待っていると思うと、ワーケーションもよりはかどりそうな気がします。
相談会&交流会では、製紙業が盛んな富士市の「ふるさと納税返礼品」の紹介などもあり、参加者は興味津々。トイレットペーパーや、環境に優しい“紙でできたマグカップ”(パルプを細かくしたセルロースファイバーを51%配合)など、お土産もドッサリいただきました!
五島市
五島市のブースではスパークリングワイン「キャンベル・アーリー」から始まって、麦焼酎・芋焼酎がふるまわれ、ほろ酔い気分に。お酒のアテには五島で“天ぷら”と呼ばれる練り物が供され大好評を博していました。
市の担当者の方のお話で印象的だったのは「人脈の化学反応が起きやすい場所」としての五島の魅力。移住人口の多さとその後の定着率の高さについても語られ、参加者からも「島内の移動には車が必須か?」といった具体的な質問も投げかけられていました。
お土産は五島うどんやレジャーシートとしても使える「五島ワーケーションマップ」など。オリジナルのトートバッグ入りでいただきました!
最後に
今回の「ツナゲナイト」の参加者は20~30代が中心。イベント終盤では参加者同士の会話もはずみ、「今度、一緒にワーケーションに行きましょう!」と盛り上がるグループも。
このイベントをきっかけに、新たなライフスタイルの扉が開くことがあれば主催者としても嬉しいです。
「複住スタイル」では、今後も「家族で移住」や「移住のためのマネーセミナー」など様々なテーマでイベントを開催予定です!年明けご報告しますので、ぜひ、ご期待ください!