近年、理想のライフスタイルを実現するために、Iターン移住を考える若者が増えています。しかし、移住といっても具体的に何をすればいいのか分からず、踏みとどまる人も多いかもしれません。
今回は、20代前半で東京都から佐賀県嬉野市に移住された新原千英さんに、地方移住を決めた理由や移住するまでの流れ、受け取った移住支援金などのお話を伺いました。


都会での生活に疲れ「一つひとつの刺激を大切にできる環境に行きたい」


前職は東京・銀座で人材派遣の営業をしていた新原さん。地方への移住を決断した背景に、新原さんの大切にする人生観がありました。
移住を考えたきっかけは何ですか?
新原「前職での働き方が性格的に合わず、転職を決意したのがきっかけです。自己分析を通し、自分が感じた辛さは職業だけでなく、満員電車に毎朝揉まれ、終電で帰宅するような都会的な働き方も要因の一つだと気付きました。そこで、働く環境を変えたいと調べていく中で、Iターンの選択肢を知ったんです」
都会よりも地方での生活を求める理由は何ですか?
新原「都会は良くも悪くも、外部からの刺激がすごく多くて。受け取らなくてもいい刺激を受け取ってしまったり、受け取りたい刺激を見逃してしまったり。それがもったいないと感じていました。であれば、与えられる刺激が少ない分、一つひとつを大切にできる環境に行きたいと思うようになり、地方での生活に魅力を感じました」
移住成功の秘訣「不安点は専門家に聞くのが一番」


移住を決意し、すぐ行動に移した新原さん。その第一歩として、専門家に話を聞きに行きました。
移住を決意した後に、まず何から始めましたか?
新原「有楽町にあるふるさと回帰支援センターの予約をしました。移住するのは決めていたものの、どこに移住するかは決めかねていたんです。ここで聞いたお話がとても参考になり、すぐに移住先を決断することができました」
佐賀県を選んだ決め手はありますか?
新原「ふるさと回帰支援センターに訪れた際、一度に3都道府県まで、お話を伺うことができました。当初は、観光で訪れた長崎県に魅力を感じていたので、同地を含め、熊本県、佐賀県の3県を選んでみたんです。その中でも、実際に住む人達の暮らしや活動内容、県内の企業について、一番具体的に話してくださったのが佐賀県のブースでした。お話を通して、移住後の暮らしが鮮明に想像できたのは、私の中で大きな決め手になりました」
移住にあたって苦労したことは何ですか?
新原「仕事を探すのに一番困りました。友人と違うルートを進む不安や、やりたい仕事が移住先にないかもしれない悩みを抱えていて。『移住を優先して仕事は妥協するしかないかな』と思っていたところ、センターのスタッフが相談に乗ってくださいました。私がやりたい仕事を伝えると、いくつかの会社を紹介してくださり、ご縁があって転職先も決まりました」
仕事は転職活動を始めてからどれくらいで決まりましたか?
新原「移住を決意したのが2024年2月で、そこからふるさと回帰支援センターや佐賀県庁と約1カ月間やり取りしました。面接をしたのが3月から4月。その後内定をいただき、5月に入社しました。移住先での仕事探しはかなり苦労するイメージがあったので、とんとん拍子に転職先が決まったのは運が良かったと思います」
チャンスを最大限に!「自分が貰える移住支援金の制度をしっかり確認」


移住するにあたって気になる金銭事情。ふるさと回帰支援センターを活用し、移住先・転職先を見つけた新原さんに、実際に受け取った移住支援金や使用した制度も伺いました。
移住に向けた準備の手順を教えてください。
新原「私の場合、準備自体は引っ越しをするときと同じでした。移住ならではの手順としては、移住支援金の有無を確認したことでしょうか。移住先を決めてから、もう一度ふるさと回帰支援センターへ足を運び、移住支援金について相談しました。私の場合、嬉野市に住むのは決まっていたので、市内のどこに住むか、どんな移住支援金が受け取れるのかを調べました」
どんな移住支援金をもらえましたか?
新原「佐賀県が独自に行なっている『さが暮らしスタート支援事業』で60万円、嬉野市独自の支援事業『HappyWelcome女子ターン応援金』で、さらに10万円を受け取れました。東京都23区内に居住する人を対象とした移住支援事業が有名ですが、区外に住んでいたため、私は受け取れませんでした」
支援金を受け取るまで、どのような流れで進みましたか?
新原「まずは移住支援金について、センターのスタッフや佐賀県庁に相談。自分がどれをもらえて、もらうために何の書類が必要なのかを事前に確認しました。自分が移住支援金の支給対象なのか、移住前に確認しておくよう気を付ける必要があると思います。申請後、佐賀県独自の支援金は約2ヶ月後、嬉野市独自の支援金は約1ヶ月後に口座へ振り込まれました。実際に引っ越した際にかなりお金を使っていたので、早めに受け取れたのは良かったと思います」
新しい生活への第一歩「移住は自分にとって最善の選択肢」


支援金を受け取り、無事に移住を行った新原さん。2024年8月から嬉野市に住み始めて、6ヶ月が経過します。現在の心境や移住を成功させた先輩としてのアドバイスを伺いました。
実際に感じた移住のメリット・デメリットを教えてください。
新原「メリットは、自分のために使える時間が増えたことです。以前は通勤時間に片道1時間かかっていたのが、移住してからは片道10分くらいになりました。自由時間が増えた分、料理にこだわったり、1000ピースのパズルを買ってみたり。新しいことに挑戦できるようになりました。一方で、都会と比べると交通機関の運行数が少ないので、遠出した際に、早い時間から終電を気にしなければならないのは少し不便かもしれません。でも、それも理解していれば対策はできるので、私にとっては特に苦になりませんでした」
移住は自分にとって幸せな選択でしたか?
新原「幸せな選択だと思います。移住を通して、他人を気にすることが”いい意味で”なくなり、自分のペースで生活できるようになりました。それが、気持ちの安定や地方暮らしを楽しむことに繋がると思います」
最後に、移住を検討する人に向けたアドバイスをお願いします。
新原「移住は私にとって最善の選択肢でした。一方、移住して失敗したと感じる人も見かけるため、”自分が移住したい理由”を明確にして決断することが大事だと思います」
地方移住を成功させた新原さんに、移住を行うまでの流れや活用した支援制度を伺いました。初めての移住に、多少の不安を感じる方も多いかもしれません。しかし、全国には移住をサポートするサービスや支援金が数多くあります。新原さんのように、まずは移住の専門家へ相談に行ってみてはいかがでしょうか。